ゲームとしての犯罪 -10

私は、ライブドア事件において被害を受けた投資家の損害金は、概ね2000億円に達するものと推計した(「疑惑のフジテレビ-2」、「ゲームとしての犯罪-2」)のですが、現時点では全ての損害金が確定している訳ではありません。尚、事件発覚後に、つまり基準日より後にライブドア株に手を出して損をした人とか、あるいは売らずに現在も持っている人は、私の言う被害者ではありません。大きなところでは、フジテレビから133,740千株を買い受けたUSENの宇野康秀氏とか、ライブドア株をチャンスとばかりに買い漁ったファンドなどは、ライブドアが多額の損害賠償債務をかかえたインチキ会社であることを百も承知の上で購入している訳ですから、ライブドアに騙されてはいないからです。

全ての被害額が確定していませんので、被害額の推計は、被害見込額の推計ということになります。
私は、この被害見込額の推計をするにあたって、法律上の視点から検討するのではないことを予め断っておきます。ライブドア被害者弁護団が結成され、個別の被害額が算定されているようですが、私の場合は全体としてどうなのかに視点をおき、法律的に損害賠償請求が可能かどうかには関係なく、全体像がどのようなものなのかを実態に即して考えてみようと思っています。

推計の第一ステップは、「ゲームとしての犯罪-2」「ゲームとしての犯罪-3」で明らかにした、損害を被った(あるいは、被る見込の)人達が持っている株式、合わせて734,592千株の購入原価(買いコスト)を計算することです。
株主の数が22万人にも及んでいますので、個別的に集計して計算することは、現実問題としてできないでしょう。そこで、いくつかの仮定を置いて推計することになります。

推計の第二ステップは、ライブドアあるいはその関係者が騙しとったお金が、現在どこに、どのような形で存在しているのか解明することです。法律的あるいは物理的にどの程度回収できるかはともかくとして、被害者のお金が一体どこにあるのか明らかにいたします。
これは、いわば脱税事件における“タマリ”と同じようなものだと考えてもいいでしょう。脱税によってゴマかしたお金は様々な形で隠されているものですが、隠されている資産のことを、国税当局は“タマリ”と呼び慣わしており、ゴマかした所得を裏付ける重要なものとされています。タマリは、会社の内部に隠されていることもあれば、経営者個人が隠していることもあります。
ライブドアの場合、不正なものであるかどうかはともかくとして、多くの株主から6年間にわたってかすめとってきたお金は莫大なものです。形の上では合法を装っているとしても、インチキゲームに大衆投資家を誘い込んで、騙しとったことは、刑事罰の対象になるかどうかには関係なく、歴然とした事実です。脱税の“タマリ”と同様に、ライブドア本体、あるいはグループ会社内部にとどまっているものもあれば、特定の個人か外部の会社に流れているものあるのです。

第一ステップによって推計した買いコストと、第二ステップによって推計した“タマリ”とを比較検討して、損害額の実態に迫ってみようと思います。

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ここで一句。

“ヒルズ族もうけ話で輪をつくり” -鎌ケ谷、ありの実。

 

(毎日新聞:平成18年6月25日号より)

(一年前、ライブドアが発行した怪しげな転換社債を引き受け、堀江氏から借り受けた4,672万株の株式を空売りして、ドサクサ紛れに100億円以上の荒稼ぎをしたハゲタカファンドもヒルズ族。このツケは、一般投資家に。)

 

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