100年に1度のチャンス -14

 このほどアメリカで、ヘッジファンドによる巨額詐欺事件が発覚しました。ポンジ・スキームというねずみ講まがいの手口で、投資家に総額約500億ドル(約4兆5千億円)に達する損害を与えたとされています(日本経済新聞、平成20年12月16日付)。これは、サブプライムローンなどをダシにしたこのたびの金融詐欺と同工異曲のものですし、私が3年前にインチキ・スキームの実態を明らかにしたライブドアによる詐欺と基本的に変るところはありません。いずれも、無から有を生じさせようとした、イカサマの錬金術であるということです。

 ただ、金額的に言えば、1兆円に満たなかったライブドアの詐欺に較べて、インチキ金融商品の方は500兆円ですから3桁、ヘッジファンドの方は4兆円ですから1桁、大きいだけのことです。

日本では野村ホールディングスが270億円余りの投資残高を抱えているようですが、このヘッジファンドに限らず、もともと怪しげな存在であったヘッジファンドに多額のお金を託すこと自体が、バクチのようなものですので、このようなリスクは当然予想されたことです。それにしても、野村ホールディングスは、世界をマタにかけて詐欺行為を行った挙句に倒産したリーマンブラザーズの一部を引き受けたり、怪しげなヘッジファンドとつるんで儲けようとしたり、いやはやどうもコメントのしようがありません。山師(やまし。他人をあざむいて利得をはかる人、詐欺師-広辞苑)としての株屋そのものですね。何億円とか何兆円のインチキ行為を堂々と押し進める訳ですから、オレオレ詐欺とか振り込め詐欺の連中など真っ青といったところです。近年声高に提唱されてきた金融立国の実態がこのようなものであったとは困ったことですね。

 以上、金融危機とイラク戦争による日本の損害100兆円は、詐欺と戦争という不法行為によって生じたものであること、100兆円という金額自体は、現在の日本にとっては比較的軽微なものであること、日本の国としての財務状況と個人のフトコロ(金融資産)は決して悪化していないことを記しました。麻生政権が何をしようとも、あるいは、何もしなくとも、あまり関係がないようです。

 次に、実体経済について考えてみましょう。このところ、毎日のようにリストラの報道がなされ、日本中が大騒ぎです。日本を代表する会社とされたトヨタ自動車までが、決算見通しを大幅に下方修正し、派遣社員のカットを発表したり、設備投資を控えたり、操業短縮を打ち出したりしています。たしかに、前期に2兆円を上回る税引前利益を出していた会社が、一転して500億円の赤字見通しに転落するなど、尋常なことではありません(連結ベース。平成20年12月22日、プレスリリース)。
 先ごろ発表された日本銀行のDI(Diffusion Index、業況判断指数)は、昭和50年のオイルショック以来の下げ幅を示しており、政府自ら不況に突入したと称して不安感をあおり立てている始末です。マスメディアもこぞって、連日のように首を切られた派遣社員とかホームレスの映像をタレ流しては不景気と雇用不安をあおり立てることに余念がありません。

 本当にそうでしょうか。私達の日本経済は、アメリカのインチキのあおりを受けて国全体が右往左往するほどヤワなものなのでしょうか。客観的な数字をもとに検討してみることにいたします。

(この項つづく)

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 ここで一句。

“またぞろの 利殖話へ 懲りぬ耳” -八千代、高橋俊夫。

(毎日新聞、平成21年1月3日号より)

(石川や浜の真砂(まさご)は尽きぬとも、世に盗人(ぬすびと)の種は尽きまじ。)

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