100年に1度のチャンス -11

 このたびの金融危機とイラク戦争によって日本が被(こうむ)った損害を、仮に100兆円とした場合(私は最大限で100兆円と考えています)について、それが何を意味するのか考えてみましょう。

 まず言えることは、この金額は、日本の純資産(富)2,716兆円の4%に相当することです。仮に100兆円が消えてなくなったとしても、残りの96%である2,616兆円は依然として残っているのです。

 更には、2年前の純資産2,716兆円を、今の時点で考えた場合にはどうなるでしょうか。
 この2,716兆円という金額は、あくまでも日本単独で考えた場合のもので、対外的な関わりを度外視したものです。経済社会がグローバル規模で動き、とくに金融経済においては瞬時に反応する時代ですから、対外的に見てどうなのか、対外的価値に引き直して考えてみる必要があります。
 ここで登場するのが、前回触れた「実質実効為替レート」(以下、実効レートといいます)です。
 実効レートは、1973年3月を100として計算された、対外競争力を示す一つの指標で、毎月、日本銀行が公表しています
 それによりますと、2年前(平成18年12月)の実効レートは、99.0、今年12月はまだ示されていませんので、直近の11月の実効レートを見てみますと117.2となっています。12月については、12月16日にアメリカが事実上のゼロ金利政策に踏み切っていることから、さらに円高圧力が強まることが考えられますので、実効レートが前月の117.2を下回ることはないでしょう。仮に、今年の12月の実効レートを117としますと、2年前と比べて、実に18ポイントの差、率にして18%(=18÷99×100)も実効レートがアップしていることが分かります。この2年間でそれだけ日本経済の国際競争力が強くなったということです。
 2年前の日本国の純資産2,716兆円は、現時点で実質的に評価すれば、
-3,204兆円(=2,716兆円×1.18)
となり、
-488兆円(=3,204兆円-2,716兆円)
も大きくなります。
 このことは、名目で100兆円の損害を受けたとしても、いまだ300兆円以上のゆとりがあることを示しています。つまり、100兆円位の損失は、現在の日本にとっては大騒ぎするほどのことではないということです。

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 ここで一句。

“英語より まずは国語と 思います” -西海、うかい。

 

(毎日新聞、平成20年12月17日号より)

(かつて、竹下登首相が英語でスピーチしたときのこと。ある国の首脳が真顔でつぶやいたといいます。「日本語は英語とよく似た言葉なんだね。」ちなみに、竹下さん、出雲弁の名手でした。)

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