100年に1度のチャンス -12

 日本銀行は12月16日、平成20年9月末の資金循環統計を発表しました。マスコミ各紙は、この中の家計が保有する金融資産残高だけを取り上げて、
「家計の金融資産残高、1500兆円割れ 9月末、過去最大の減少率」(日本経済新聞、平成20年12月17日付)
とか、「家計の金融資産5.2%減 過去最悪」(朝日新聞、平成20年12月17日付)
とか称して、ことさらセンセーショナルに取り上げています。

朝日新聞にいたっては発表された統計数字について

「過去最悪」

という見出しを付けたり、あるいは、

「ただ、統計が対象とした9月末の日経平均株価は1万1259円。米大手証券リーマン・ブラザーズの経営破綻(はたん)以降の株価下落は統計に十分織り込まれておらず、今後さらに目減りする可能性が高い。」(同上)

とコメントしています。同紙は更に踏み込んで、

「ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次主任研究員は「所得を生活費にあて資産形成が難しくなっている家庭の苦しさが浮き彫りになった」と話す。」(同上)

と、エコノミストらしき人の意見まで紹介しています。
 これらのコメントなり意見は正しいのでしょうか。私は2つとも間違っていると考えます。

 たしかに、この9月末に家計の金融資産が1,500兆円を割ったことは事実でしょうし(もっとも、日銀の計算が正しいものと仮定した上でのことですが)、5.2%の減少幅は過去最大のものであったことも事実でしょう。
 しかし、それらの事実が「過去最悪」のものであるとか、残高が「今後さらに目減りする可能性が高い」とか、あるいは「家計の資産形成が難しくなった」、「家庭の苦しさが浮き彫りになった」とか、これらのことは、このたびの日銀が発表した数値から直ちに言えることではないのです。何故か?

 一年前の家計の金融資産は、
-1,548兆円、でした。
それが、一年後に1,467兆円となり81兆円の減少、つまり、5.2%(=81兆円÷1,548兆円×100)の減少となった。ここまでは事実です。間違っているわけではありません。
 しかし、この数字はあくまでも名目のものです。過去最悪だとか、家計が苦しくなったとか言うためには実質的な評価をする必要があり、名目で比べてみても意味がありません。そこで、前回と同様に対外的に見て実質的な数値に換算してみることにいたします。
 実効レートは、
-一年前の9月が、96.7であるのに対して、
-今年の9月は、100.4ですので、
今年の9月の1,467兆円は昨年9月のベースで考えた場合には、
-1,523兆円(=1,467兆円×100.4÷96.7)
となり、減少幅は25兆円(=1,548兆円-1,523兆円)にとどまり、減少率も1.6%となり、過去最大の減少率とは言えなくなるのです。しかも、この減少は、株式とか投資信託の評価額が目減りしたことによるもので、個人が保有する現金・預金は名目でも逆に9兆円も増加しているのです。ちなみに、昨年の9月には、金融資産のうちで現金・預金の占める割合が、49.7%と50%を切っていたのですが、この割合は四半期(3ヶ月)毎に着実に増加し、今年の9月末では53.1%に達しています。これは安全を重視する日本人の堅実な生活姿勢を如実に示すもので、この点アメリカ人とは大違いです(アメリカの場合は、現金・預金の保有割合は13.5%(平成20年9月末)と、日本人の4分の1です。)。

 更に、リーマン・ブラザーズの経営破綻以降の株価下落が統計に十分織り込まれていない、というのであれば、それが織り込まれたと考えられる今年の12月末の時点で考えてみることにいたします。
 平成20年12月末時点(大納会のとき)の株価は8,859円ですから、実効レートは前回同様に117として(つまり、117を切ることはないとして)計算してみますと、様相が一変し、個人の金融資産は過去最大の減少どころか、大幅な増加に転じてしまいます。

(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。

“議員にも みんな初心が あったはず” -東京、もっこママ。

 

(毎日新聞、平成20年12月19日号より)

(ホントかな?)

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