Uチャート分析 -8

2.キャッシュフロー計算書(以下、C/Fといいます)

 C/Fは、お金の流れを説明したもので、Uチャート分析においては、B/Sに次いで重要なものです。B/Sの主人公である『キャッシュ=現金預金』の実際の動きを示したもので、キャッシュの増減明細とでも言えるものです。この意味から、C/FはB/Sの補助簿ならぬ補助計算書と位置付けることができます。



B/Sが、キャッシュの流れ動いた後の状態を示しているのに対して、C/Fはキャッシュの生の動きを示しています。その年において、キャッシュがどのように動き回って、どのような状態に落ち着いたのか、この2つの計算書によって、いわばキャッシュの立体的なイメージを把むことができるのです。会計においては、キャッシュこそ唯一確実なもので、その現実の動きを把握し、その性格を明らかにすることによって、企業の実体に迫っていく、-これがUチャート分析の基本的な立場といえるものです。

キャッシュ・フロー計算書には財務諸表規則の中では2つの方式が定められています。

1.直接法、と
2.間接法

の2つです。直接法は総額法とも呼ばれ、間接法は純額法とも呼ばれています。
この2つの方式の違いは、営業キャッシュ・フローの計算方法の違いにあります。計算結果である営業キャッシュ・フローの金額はもちろん同じなのですが、算定のプロセスが異なるのです。
直接法は営業収入から計算をスタートしますので、見る側としては理解しやすいものです。これに対して、間接法は税引前利益から始め、減価償却費を足したり、資産・負債の増減額を足したり引いたりしますので、極めて分かりづらいものです。それなりに意味があるものですが、説明するのに一苦労するシロモノです。
私の見るところほとんどの上場会社は、分かりづらい間接法を採用しているようです。Uチャート分析においては営業キャッシュ・フローの金額だけで概ねこと足りるのですが、必要に応じてより分かり易い直接法に組み替えて営業キャッシュ・フローの内容を吟味することもあります。

直接法又は間接法によって作成されたキャッシュ・フロー計算書は、期首のキャッシュがどのような経緯によって期末のキャッシュに至ったのか、そのプロセスを次の3つに区分けして表示したものです。
+営業活動によるキャッシュ・フロー(営業C/F)
+投資活動によるキャッシュ・フロー(投資C/F)
+財務活動によるキャッシュ・フロー(財務C/F)

****1.営業活動によるキャッシュ・フロー(営業C/Fと略称します)
営業C/Fは、企業が営業活動によって手に入れたキャッシュの額を表わしています。本来の業務によって稼いだお金ですので、3つのキャッシュ・フローの中でも最も重要なものです。
営業C/Fがプラスの場合は、一応本業が順調に推移していると判断してもいいのですが、最近ではM&A(企業買収)が頻繁に行われるようになっており、異業種が連結子会社の中に多くもぐり込んでいますので、プラスであることを過信することはできません。本来は投資C/Fに入れるべきものが、営業C/Fに入っているケースが見られるからです。
ライブドアの場合は、毎期のようにこのようなケースが見受けられました。私が「ホリエモンの錬金術-4」において、上場以来5年間の営業C/Fと投資C/Fとを合算して事業活動収支として考え、それがマイナスであることを示しているのは、キチンとしたキャッシュ・フロー計算書が作成されていないと判断したからです。
このようなケースもありますので、営業C/Fを見ると同時に、営業C/F+投資C/Fの金額にも注目する必要があります。

『営業C/F+投資C/F』の数字は、簡便法による“フリー・キャッシュフロー”(自由に使うことのできるお金)でもあります。Uチャート分析では、これを単にフリー・キャッシュ、「自由なお金」と呼ぶことにします。
一般的に言えば、「自由なお金」がプラスであることはいいことなのですが、必ずしもよくない場合もあり、逆にマイナスであっても悪くない場合もあります。「自由なお金」がプラスになるのか、マイナスになるのかの組合せは、次の6つのケースですので、それぞれに応じて更に分析を深めていくことになります。

****【図2】
「自由なお金」がプラスまたはマイナスになる6つのケース

^^t
^
^営業C/F
^投資C/F
^「自由なお金」
^備考
^^
^1.
^cc”^+
^cc”^+
^cc”^+
^
^^
^2.
^cc”^-
^cc”^-
^cc”^-
^
^^
^3.
^cc”^+
^cc”^-
^cc”^+ or -
^*注
^^
^4.
^cc”^-
^cc”^+
^cc”^+ or -
^*注
^^/
*注) 3.のケースは、営業C/Fのプラスが投資C/Fのマイナスを上回るケース(「自由なお金」はプラス)と下回るケース(「自由なお金」はマイナス)の2つに分かれ、4.のケースは、営業C/Fのマイナスが投資C/Fのプラスを上回るケース(「自由なお金」はマイナス)と下回るケース(「自由なお金」はプラス)の2つに分かれます。

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ここで一句。

“だんな外たばこ吸ってる妻が内” -岡崎、大塚俊晴。

 

(毎日新聞、平成18年11月23日号より)

(鬼は外。)

 

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