ゲームとしての犯罪 -23

私は、医学界のフィクサーと名指しされたB氏がエフェクター研の上場に深く絡んでいるものとすれば、前号で示した10の投資事業組合のいずれかに、ひそかにもぐり込んでいるに違いないと考えました。

中でも上場直後に、とりわけ怪しげな動きをした筆頭株主である投資事業組合NIFニューテクノロジーファンド2000/2号(以下、NIFファンド)こそ、B氏の隠れミノではないかと目星をつけるに至ったのです。

NIFファンドの管理運用は、エヌ・アイ・エフベンチャーズ株式会社(現、エヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズ株式会社。ジャスダック上場会社。以下、NIF社といいます)が行っています。ちなみに、NIF社も、エフェクター研の上場時点で4,100株(4.6%)所有する大株主です。

さて、このNIFファンド、上場の2ヶ月後である平成17年5月期末には、その持株が9,900株から2,172株へと急減し、次の平成18年5月期末時点では、上位10位までの大株主から姿を消しています。

NIFファンドの持株、9,900株の足取りを追ってみますと、次の通りです。

***<表20>NIFファンドの持株の推移
^^t
^cc”^NO.
^cc”^日付
^cc”^移動株数
^cc”^持株残高
^cc”^備考
^^
^1.
^平成17年3月28日
^rr”^―
^rr”^9,900株
^上場前
^^
^2.
^平成17年3月29日
^rr”^△2,800株
^rr”^7,100株
^上場時売出し
^^
^3.
^平成17年3月30日
^rr”^△1,346株
^rr”^5,754株
^市場で売却
^^
^4.
^平成17年3月31日
^rr”^△95株
^rr”^5,659株
^市場で売却
^^
^5.
^平成17年4月1日
^rr”^△330株
^rr”^5,329株
^市場で売却
^^
^6.
^平成17年4月4日
^rr”^△451株
^rr”^4,878株
^市場で売却
^^
^7.
^平成17年4月5日
^rr”^△231株
^rr”^4,647株
^市場で売却
^^
^8.
^平成17年4月6日~
平成17年5月31日
^rr”^△2,475株
^rr”^2,172株
^市場で売却(推定)
^^
^9.
^平成17年6月1日~
平成18年5月31日
^rr”^△2,172株
(推定)
^rr”^0株
(推定)
^市場で売却(推定)
^^/
-(注1)1.と2.はエフェクター研作成の「新株発行並びに株式売出届出目論見書」(平成17年2月)、及びNIF社が提出した大量保有報告書(平成17年4月5日付)による。
-(注2)3.は、NIF社が提出した変更報告書No.1(平成17年4月5日付)による。
-(注3)4.は、NIF社が提出した変更報告書No.2(平成17年4月5日付)による。
-(注4)5.~7.は、NIF社が提出した変更報告書No.3(平成17年4月8日付)による。
-(注5)8.は、第6期有価証券報告書のP.45に記載されたNIFファンドの持株数2,172株より逆算。
-(注6)9.と10.は、第7期有価証券報告書のP.30に記載された上位10位までの大株主にNIFファンドが見当たらないこと、上場直後からの売り状況に鑑み、第7期の期末までには全ての持株を手放したものと推測。しかも、第7期の期初の短期間で売却が完了したものと思われる。

<表20>は、筆頭株主であるNIFファンドが、上場を待ちかねたようにして一日も早く売り抜けたことを如実に示すものです。6年前、ライブドアの前身である、オン・ザ・エッヂが上場したときに、堀江貴文氏の所有と考えられる有馬純一郎名義の株式960株(借名株)が慌しく売り捌かれたことを想い出します(「ホリエモンの錬金術-13」)。株価がどうなろうとお構いなしで、なりふり構わず売り抜けたところなどソックリですね。片や他人の名前の後ろに隠れ、片や投資事業組合に身を隠しているのです。

公募価格38万円で上場したところ、上場初日の3月28日はストップ安で値がつかず、翌30日は初値がついたものの、公募価格を大幅に下回る24万円。その後、一度も初値を上回ることなくじりじりと値を下げ、平成18年7月28日に39,500円の最安値をつけるに至っています。現在は、エフェクター研自身が自己株式を拾っているからでしょうか、株価は50,000円を行ったりきたり。なお、現時点でのエフェクター研の清算価格は、一株あたり30,000円といったところです。

筆頭株主であろうと、株式が公開された以上、市場で自由に売買することは自由ですし、もちろん違法ではありません。しかし、順法精神だけでなく企業倫理をも含むコンプライアンスの視点からすれば、大きな問題点をはらんでいるようです。ましてや、エフェクター研のように、上場直前期の決算書に何やら怪しげな細工が施されているようでは尚更です。
筆頭株主といえば、上場の利益を最も多く受けますし、ズバリ上場仕掛人の中心と言ってもいいでしょう。上場企業の中核的存在とも言える筆頭株主が、上場後の株価の推移がどうなろうと一切お構いなしに、一日も早く売り抜ける行為自体どうかと思うのですが、それ以上に問題なのは、市場に大量の株式を放出して株価がどんどん下がっていっても、売却する側には法外とも言うべき十二分な利益が残ることです。正当な創業者利益とは考えられない、汚れた利益と言ってもいいでしょう。いったい何のための株式上場だったのでしょうか。
ちなみに、エフェクター研の株価は、公募価格38万円、初値24万円をつけたわけですが、筆頭株主であるNIFファンドの買いコストは、一株当り13,232円です。

―― ―― ―― ―― ――

ここで一句。

“利子100倍笑わせるなよコンマ1” -白石、よねづ徹夜。

 

(毎日新聞、平成18年9月27日号より)

(ゼロ金利解除。一般大衆と、次から次へとインチキをほどこして上場企業を量産してはアブク金を大衆からかすめ盗る“上場請負人”とそれに群がる人々。)

 

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