ゲームとしての犯罪 -3

前回指摘した、損害を被った人達の株式の総数、734,592千株について、更に詳しく調べてみることにいたします。



上場前も含めて、ライブドアがこの6年の間に発行した株式は、次の通りです(表1)。

***<表1>ライブドアが発行した株式の全て
^^t
^
^cc”^発行株式数
^cc”^備考
^^
^1.上場前
^rr”^12,000株
^
^^
^2.上場時公募
^rr”^1,000株
^平成12年4月6日
^^
^3.公募
^rr”^80,000株
^平成15年10月1日
^^
^4.公募
^rr”^6,000,000株
^平成16年4月23日
^^
^5.MSCB
^rr”^268,947,887株
^平成17年3月10日~同年4月15日
^^
^6.第三者割当
^rr”^133,740,000株
^平成17年5月23日
^^
^7.ストック・オプション
^rr”^681,330株
^
^^
^8.交換
^rr”^42,619,103株
^
^^/
これらの数字は、ライブドアの第10期(平成17年9月期)の有価証券報告書、『発行済株式総数、資本金等の推移』(P.34~P.41)から拾ったものです。<表1>には、平成12年1月から同17年12月までに発行された株式の全てが集約して網羅されています。(ただし、分割による発行は除いています)。
それにしても、このわずか6年間の資本金の推移だけで、有報のページ数にして8ページにも及んでいるのですから、今更ながら、株式市場を悪用して一般投資家を騙し、カネをかき集めたギャンブル・ファンドの実態を眼のあたりに見る思いです。

<表1>は、その時々において実際に発行された株式の一覧表です。ところがライブドアは、「ホリエモンの錬金術」で詳しく述べましたように、上場後において4回もの無法な株式分割を繰り返しています。それぞれの発行株式は、平成18年1月16日(以後、この日を基準日と呼ぶことにします)現在においては、発行後の分割に応じて増加していますので、修正する必要があります。
つまり、上場後の株式分割は、
+平成13年7月23日   3分割
+平成15年8月20日  10分割
+平成16年2月20日 100分割
+平成16年8月20日  10分割
となっていますので、1.より前に発行された株式については、30,000倍(3×10×100×10)に、1.と2.の間に発行された株式については、10,000倍(10×100×10)に、2.と3.の間に発行された株式については、1,000倍(100×10)に、3.と4.の間に発行された株式については、10倍に換算する必要があるのです。4.の時点以降は株式分割をしていません(というより、物理的にできなくなった、あるいは仮に無理をして分割してもウマミがなくなった、といったところでしょう)ので、それ以降に発行された株式については、もちろんこのような修正をする必要はありません。
また、表1にはこの事件の張本人である堀江貴文氏の持株が当初のままの状態で載っていますので、修正しなければいけませんし、フジテレビ分はもちろん全株はずして考えないといけません。

次に、<表1>をもとにして、基準日における、被害者である一般投資家の持株を計算いたします。<表2>

***<表2>基準日における被害者の持株数
^^t
^
^cc”^発行株式 (株)
^cc”^分割換算 (千株)
^cc”^除外 (千株)
^cc”^被害者持株 (千株)
^cc”^備考
^^
^1.上場前
^rr”^12,000
^rr”^360,000
^rr”^237,600
^rr”^122,400
^(注1)
^^
^2.上場時
^rr”^1,000
^rr”^30,000
^rr”^-
^rr”^30,000
^(注2)
^^
^3.公募
^rr”^80,000
^rr”^80,000
^rr”^-
^rr”^80,000
^(注3)
^^
^4.公募
^rr”^6,000,000
^rr”^60,000
^rr”^-
^rr”^60,000
^(注4)
^^
^5.MSCB
^rr”^268,947,887
^rr”^268,947
^rr”^-
^rr”^268,947
^
^^
^6.第三者割当
^rr”^133,740,000
^rr”^133,740
^rr”^133,740
^rr”^-
^
^^
^7.ストック・オプション
^rr”^681,330
^rr”^12,503
^rr” rowspan=”2″^10,000
^rr” rowspan=”2″^116,624
^ll” rowspan=”2″^(注5)
^^
^8.交換
^rr”^42,619,103
^rr”^114,061
^^
^9.堀江売却分
^rr”^-
^rr”^56,621
^rr”^-
^rr”^56,621
^(注6)
^^
^cc”^合計
^
^
^
^rr”^734,592
^
^^/
-(注1) 上場前の株式のうち堀江貴文氏分は7,920株、分割換算すると237,600千株(3万倍)となり、除外。
-(注2) 分割換算1万倍
-(注3) 分割換算1万倍
-(注4) 分割換算1千倍
-(注5) ストック・オプションの行使による株式の発行と、交換による株式の発行はともに数多くなされており、<表2>の分割換算は個別に計算したものを集約したもの。基準日までにほとんどが売却されているものと思われるが、ここでは仮に全体の概ね10%が売却されていないものとして除外。
-(注6) 堀江貴文氏は、平成17年6月27日に、市場外取引で持株のうち4千万株を一株357.2円で売り抜け、142億8千8百万円を手に。その他、それ以前に4回にわたって持株を手放している(“ホリエモンの錬金術-6(※資料)”の資料Aを参照のこと)。これらの売却分は市場に放出され、いずれかの被害者の手許にあるものと考え、分割換算した56,621千株を加算。

(※信用取引の買建玉に関する記述については誤りがありましたので訂正いたしました。指摘して下さったnaotokさん、ありがとうございました。 2006-06-01)

―― ―― ―― ―― ――

ここで一句。

“美醜(びしゅう)超え男の顔は五十から” -栗東、伊勢田恵子。

 

(毎日新聞:平成18年5月5日号より)

(長年にわたってゼロ金利で預金者を足蹴にし、手数料収入に血道をあげたり、怪しげな金融商品を売りつけたり、中小企業を容赦なく切り捨て、社会的弱者に対しては消費者金融という名の高利貸しの片棒をかついで搾取を繰り返している日本の銀行。かつて私達の学生時代、銀行といえば日本経済の中核に位置し、日本企業の代表格として輝いており、憧れの存在でした。
時代が変ったといえばそれまでですが、それにしても最近の銀行は存在理由が以前に比べて稀薄になり、怪しげなショウバイに奔走しているためでしょうか、銀行の頭取をはじめ銀行マンの顔が何となく悪くなってきたようです。)

 

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