疑惑のフジテレビ -10
- 2006.03.28
- 山根治blog
次に、監査法人のデューデリの手順を勝手に想定してみることにいたします。
従来の監査法人が作成している監査報告書の信頼性に疑問がある以上、新たに調査を委託された監査法人の主な仕事は、会社が提出している上場以来の決算書が、果して正当なものであるかどうかを確認することになります。言い換えますと、ライブドアの決算書に、証取法で禁止されている粉飾がなされていたかどうか、これをプロである監査法人の立場から検討することです。
***1.予備調査
(1)調査開始と同時に、ライブドア側に次の資料の提出を求めておきます。
+会社組織図(とくに財務経理部門)
+直近の月次決算書(もしくは試算表)と主要科目の勘定明細
+現金預金、借入金等の残高証明書。関係会社一覧表(出資額、ライブドア・関係会社間の主要取引明細)。ともに、平成16年9月末日現在のものと、直近のもの。
+リーマン・ブラザーズとのMSCB契約の詳細(契約書の写し、貸し株の経緯、MSCBの現在状況)
(2)すでに述べましたように、平成12年3月8日に、上場のために提出された有価証券届出書、新株式発行届出目論見書をはじめとして、上場後の全ての有報にザッと目を通して、ライブドアの概要を把握するのに2時間、大雑把な問題点を把握するのに5時間、つまり、一日もかければ主な問題点は浮かび上がってきます。ライブドアの場合、5つ位のものがこの段階で把握できるはずです。
(3)更に、上場時と各期毎の問題点を把握するために、届出書とか有報あるいは目論見書を丹念に読み込んでいきます。3日もあれば十分でしょう。
この段階で5つ位の問題点は枝分かれをして、30位の問題点に集約されることになるはずです。
(4)浮かび上がってきた30位の問題点を、ライブドアの責任者に直接質問するための問題事項一覧表の作成に一日。
(5)つまり、予備調査に要する日数は5日。尚、これは監査実務に精通した会計士(大手の監査法人にはいくらでもいます)が一人で行った場合を想定していますので、複数になれば日数は短縮できますし、調査の内容も、より精緻なものとなります。
***2.実地調査
ライブドアの場合は、何回も増資を行って株式市場から金を集め、そのお金を運用するのが主な事業のようですから、実地調査といってもさほどのことをする必要はありません。問題点の一覧表を会社側に渡して、疑問点を問い質し(質問)、必要に応じて関係資料の提示を求めれば十分でしょう。
質問事項の説明に半日、質問事項の大半が大きな資金の流れと決算書の表示に関するものですから、ライブドアの責任者としてはほとんどのものについて即答できるはずです。また、必要とされる関係資料も仕事の各現場にあるものではなく、経営の中枢部が管理保管しているものがほとんどでしょうから、揃えるのにさほど時間はかからないはずです。
従って、質問を主な内容とする実地調査は、2日もあれば十分でしょう。会社側の回答の吟味に一日、回答の内容によっては質問事項が広がっていく可能性がありますので、問題点を補充し、不十分な回答については再度の釈明を求めるために、質問事項一覧表を作り直すのに1日。あとは、これを会社側に提示して回答を求め、必要な資料を提示してもらうことになります。
つまり、実地調査には5日もかければ十分でしょう。しかも、予備調査のときと同様に、複数の会計士が担当するならば、日数は短縮できますし、よりきめ細かな調査ができるはずです。
***3.調査結果の検討と調査報告書の作成
監査法人の役割の主なものは、ライブドアが粉飾決算をしていたかどうかの確認ですから、予備調査の第一日目で、粉飾の痕跡がいくつも見つかるはずです。
「ホリエモンの錬金術-4」で、
と記したように、必ずしも監査実務に精通していなくとも、日頃決算書に接している人なら誰でも判るほどオソマツなものですから、多くの優秀な会計士を抱えている大手の監査法人に判らないはずがありません。
あとの予備調査の4日間、実地調査の5日間は、見つけだした粉飾の事実を、念のために確認するだけの作業であると言ってもいいでしょう。調査結果の検討と調査報告書の作成に2日。
尚、粉飾に関しては、専ら職業会計人の領域ですので、法律の専門家である弁護士に対しては、参考意見を聴取することはあっても、それ以上のものではありません。
***4.報告書の提出
以上のように、
+予備調査に5日間
+実地調査に5日間
+調査結果の検討と調査報告書の作成に2日間
と、都合12日かけた調査の結果を会社側に報告するのに半日、締めて12日半。
ライブドアのデューデリには半月もあれば十分である、と述べたのは、このようなスケジュールを念頭に置いていたからです。監査法人が行なう調査の中では、最も簡単な調査であると言えるでしょう。
―― ―― ―― ―― ――
ここで一句。
(ライブドアの上場以来の決算書は全て、ヤブ医者が行った整形手術のようなもので、整形の痕跡が歴然としています。“パッチリと二重にしたらアッカンベー”)
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