冤罪を創る人々vol.104

2006年03月14日 第104号 発行部数:598部

◆◇――――――――――――――――――――――――――――◆
「冤罪を創る人々」-国家暴力の現場から-
http://consul.mz-style.com/catid/11

日本一の脱税事件で逮捕起訴された公認会計士の闘いの実録。
マルサと検察が行なった捏造の実態を明らかにする。
◇◆――――――――――――――――――――――――――――◇

山根治(やまね・おさむ)  昭和17年(1942年)7月 生まれ
株式会社フォレスト・コンサルタンツ 主任コンサルタント
http://consul.mz-style.com/

―――――――――――――――◇―――――――――――――――
●「引かれ者の小唄」 ― 勾留の日々とその後
http://consul.mz-style.com/catid/41

「松尾芭蕉と夢紀行 -その1」より続く
http://consul.mz-style.com/item/492

11.松尾芭蕉と夢紀行 -その2

奥の細道の芭蕉自筆本は、かねてからその存在が伝えられていた。
野坡(やば)本と言われていたものである。その野坡本がひょっこ
り出てきた。
長い間、杳(よう)として行方の知れなかったものが出現したの
である。しかも時を移さず、解説付きで影印本が刊行され、誰でも
容易に手にすることができるようになった。書写には格好のものだ。

思い立ったが吉日とばかりに、拘置所で使っていたコクヨの
Campusノートを用いて書写を始めた。書き始めた11月25
日は、全く偶然にも、9年前に発見のニュースが各新聞で公表され
た前の日、つまりテレビ各局が夜のニュースで自筆本発見の第一報
を流した日であった。書写を始めてからしばらくして、この符合に
気付き、何か見えないものが私を衝き動かしている錯覚に陥ったほ
どである。

ノートの表紙に、「松尾芭蕉と夢紀行」と記し、ノートを縦書き
に使い、筆ならぬペンを用いて書写を進めた。

“月日は百代(はくたい)の過客(くゎかく)にして、行かふ年も又
旅人也”

高校時代からなじんできた冒頭の一節だ。ところが「月日」と書
き出して、三字目の「は」が何と書いてあるのか分らない。はじめ
のところで行き詰ってしまったのである。
考えてみたら、一年間若い学生諸君と一緒に机を並べて教わって
きたのは、主に「御家流(おいえりゅう)」と称する流麗な書体で
あった。青蓮院流に端を発する書法の一つで、江戸時代に大衆化し、
実用書体となったものだ。江戸時代の公文書に主に用いられたもの
である。
授業では、漢字独特の崩し方を習得することに主眼が置かれてお
り、仮名については標準的なものに限られ、多くを学ばなかった。
仮名の習得は後回しにされており、書写を思いついたときに、易し
いはずの仮名が読める状態にはなっていなかったのである。

そこで、「は」の文字の解読である。こうなったら外国語を読ん
でいくのと同じだ。古文書辞典とか参考書を、あれこれひっくり返
してやっと判明した。
「は」は、盤の崩し字であった。変体仮名に習熟している人から
みれば、何を馬鹿なことをやっているんだ、と呆れ顔されるかもし
れない。しかしこれが私のやり方だから仕方がない。効率的でない
ことは明らかであるが、このような泥くさい作業を経ないと、それ
ほどできのよくない私の頭にストンと入ってこないのだ。泥縄式で
ある。

このようにして、「の」、「む」、「空」、など判読しがたい字
を辞書で調べまくっているうちに、書写の一日が終った。影印本の
2ページを書き写すのがやっとであった。
次の日からはやり方を変えて、たとえどのような字であるのか分
らなくとも、ともかく芭蕉の筆のままに忠実にたどっていくことに
した。もちろん、芭蕉の書き癖も含めてである。
すると不思議なことに、それほど辞書で調べなくとも分るように
なってきた。当然、書写のスピードは速まった。

書写を終えたのは、11月30日のことであった。書き写すのに
6日かかったことになる。この6日の間、まるで生きているかのよ
うな芭蕉本人に出会い、彼と共に素適な夢紀行をすることができた。
それは、この上なく豊かで、贅沢な旅であった。

―――――――――――――――◇―――――――――――――――
●山根治blog (※山根治が日々考えること)
http://consul.mz-style.com/catid/21

「疑惑のフジテレビ -7」より続く
http://consul.mz-style.com/item/493

・ 疑惑のフジテレビ -8

フジテレビの問題に立ちかえることにいたします。

これまでのところで確認したのは、ライブドアとフジテレビが基
本合意をした、昨年の4月時点でのライブドアが、どのような会社
であったのか、ということでした。コンプライアンス(法令の遵守)
という観点からは、はっきり違法とは言えないようなグレーゾーン
の脱法行為を平然と敢行し、しかも堀江貴文社長自らその事実を堂々
と公言していること、コーポレートガバナンス(企業統治)の観点
からは、堀江氏の一存で会社の全てのことが決定できる体制になっ
ていたこと、この2点は公知の事実でした。
当然のことながら、フジテレビの経営陣は、これらのことを十二
分に知っていたということです。つまり、基本合意を締結し、デュー
デリに着手する時点で、調査対象のライブドアという会社が、一人
の拝金主義に凝り固まった人物によって支配されている会社で、金
儲けのためならば何をやるか分ったものではない危うい会社である
ことが判っていたのです。
これは、ライブドアと堀江貴文氏が、刑事罰の対象となるような
違法行為をしていたかどうかとは、全く別の問題です。

このような会社に対して、デューデリ(予備調査)をかけようと
いうのです。当然のことながら、通常一般の会社とは異なる対応が
求められるでしょう。会社の現状だけでなく、過去の決算内容の
チェックがデューデリの主な仕事になるのですが、このような会社
のことですから、一般の常識では考えられないような細工が決算書
に施されている可能性があるとみなければなりません。

デューデリは外部の専門機関である大手監査法人と法律事務所に
依頼されたと言われています。
デューデリ契約の際に、ライブドアがいわば”無頼者”に類する
存在であることは、交渉の場で煮え湯を飲まされているフジテレビ
側から、より具体的に伝えられたことでしょうし、仮に伝えられて
いなくとも調査する側としては、知っていなければなりませんし、
知っていたはずです。

監査法人と法律事務所のそれぞれのデューデリに関する役割につ
いていえば、主たる調査は監査法人が行ない、その結果浮び上った
問題点についての法律的評価を法律事務所が行ったのでしょう。つ
まり、監査法人による問題点の洗い出しが、デューデリの中心的な
仕事であったということです。

大手監査法人によるデューデリの実施。

まず、調査期間ですが、基本合意が4月18日で、増資の払込期
日が5月23日ですので、デューデリ契約の詳細が分らないものの、
おおむね一ト月はあったことになります。
一ト月の調査期間について、ライブドアのデューデリに即して考
えてみますと、法律事務所による法的評価の日数を含めて、調査に
は一ト月も必要ではなく、半分の15日もあれば十分であったと考
えられます。

何故か。

ライブドアは、たしかに株式を上場し、単体では、資本金239
億円、売上高108億円、総資産額585億円、従業員数464人
ですし、連結に至っては、売上高308億円、総資産額1,002
億円、従業員数1,019人です(平成16年9月末日現在)ので、
外形的には立派な大企業です。
ところが、その実態はといえば、高成長のIT企業という幻想を
ふりまいて株価をつり上げ、株式市場から莫大な資金をかき集め、
その資金で投資事業組合へ出資したり、赤字企業とおぼしき会社を
次から次へと買収して膨れ上がった会社であり、企業グループであっ
たのです。
つまり、大企業の形はしているものの、会社の実態としては単な
る投資会社であり、零細企業ともいえる中小企業であったというこ
とです。
このことは、上場以来の有価証券報告書(第5期~第9期)を、
ザッとのぞいてみるだけで判明します。
増資と、それによって得られた資金の運用が会社の仕事の大半を
占めており、毎期、利益が出たようにはしてありますが、四苦八苦
しているようですし、何よりもキャッシュフローがボロボロです。
デューデリでいいますと、予備調査の初期の段階で判明するはず
で、上場以来の5期分の有報を大雑把に見るだけですから、2時間
もあれば十分でしょう。

零細企業に近い中小企業であると見極めれば、ことは簡単です。
中小企業の中には、決算書さえまともに作っていないところが多
いものです。それでも、企業の実態を掴むのにさほどの時間を要し
ません。
ところがライブドアは、一応上場企業なのですから、それなりの
決算書を作成し、有価証券報告書という形で、詳しい企業情報を開
示しているのです。調査をする監査法人にとって、これほど楽な仕
事はないと言ってもいいでしょう。

―― ―― ―― ―― ――

ここで一句。

“第三者機関に調査させぬワケ” -福岡、只乃愚痴。
(毎日新聞:平成18年1月5日号より)

(フジテレビがデューデリを委託した監査法人は、果して第三者機関?)

(「疑惑のフジテレビ -号外3」はWebサイトにて)
http://consul.mz-style.com/item/497

 

Loading