095 房内の所持品

***2.房内の所持品

一、 私は折にふれて、身の回りの物品を点検し、5平米余りの房内にある全てのものを具体的に書き出した。

二、 平成8年4月8日現在の房内棚卸しは次のとおりであった。

****A.自弁購入品
*****1.食品(購入金額は1日1000円に制限)
リンゴ3個半、ミカン5個、キウイ3個、バナナ5本、森永キャラメル1箱半、コーヒー牛乳2、カフェ・オーレ1、ミニ羊かん8個、甘納豆半袋、黒あめ、カンロあめ少々、ポテトチップス1袋、かっぱえびせん1袋、ミニチーズ5、昆ベー1袋、梅干2、ノリ佃煮2、七味唐がらし11コ、仁丹(百八十粒入1パック)。
*****2.食品以外
マンダムのヘヤトニック、ヘヤリキッド、クシ、ハブラシ、デンターTライオン、牛乳石鹸、石鹸箱、ボールペン(青、黒、赤各一本)、下敷、ノート3冊(雑2、訴訟用1)、赤青鉛筆1本、HB鉛筆1本、鉛筆キャップ3つ、鉛筆入れ、消しゴム、耳かき、ハシ、ハシ箱、プラスチック食品容器3、電気カミソリ(アルカリ乾電池2本入り)、チリ紙(大)1、タオル(ピンク)2本、コップ1、封筒少々、便箋1、罫線用紙1。
*****3.自弁持込もしくは差入品
本三冊(万葉集、酔って候、オール読物3月号)、メガネ(老眼、近眼)、メガネふき2、メガネケース2、古語辞典、コンサイス国語辞典、法人税申告の手引、ザブトン、シャツ3、モモヒキ3、パンツ(厚3、薄1)、セーター2、くつ下(厚2)、トレーナー上下、皮オーバー1、ジャケット1、ズボン1、ワイシャツ。

****B.官から貸与されているもの
*****1.官本
「とかげ」吉本ばなな、「つぶての歌吉」安部譲二、「ばれてもともと」色川武大。
*****2.備品等
掛けふとん2、敷ふとん1、毛布2、シーツ1、マクラ、マクラカバー、襟布、机、衣類入(カゴ)、洗面器、雑用水容器、ほうき、はたき、ちりとり、やかん、くず入れ、柄付きたわし、ナイロンたわし、ふきん、雑巾2、柄付きたわし入れ、荒石鹸、磨き粉、磨き粉入れ、衝立、スリッパ、エモンかけ、カレンダー、トイレ、流し台。

三、 同年5月14日現在の房内棚卸しは次のとおりであった。

****A.自弁購入品
*****1.食品
リンゴ(白1、赤2個)、キウイ5個、バナナ5本、キャラメル2箱と5個、森永コーヒー牛乳1箱、ミニ羊かん11個、あんぱん1個、甘納豆半袋、ミニチーズ2個、かっぱえびせん1袋、カンロあめ1袋半、黒あめ1袋と1/3、のり佃煮1袋半、梅干1、七味唐がらし12コ、仁丹(百八十粒入4パック)。
*****2.食品以外
タオル(ピンク)2本、ノート3冊(雑記、万葉集、訴訟用)、便箋、封筒、下敷、ボールペン(赤、青、黒)3本、消しゴム1、シャープペン1、同替芯1、色鉛筆(赤青)1本、鉛筆(黒)1本、鉛筆キャップ3、筆入れ1、耳かき1、石鹸1、石鹸箱1、歯ブラシ1、デンターTライオン1、マンダムヘヤトニック1、マンダムヘヤリキッド1、チリ紙、電気カミソリ1、アルカリ電池2、ハシ、ハシ箱、アクルリ直線定規1、プラスチック食品容器3、クシ1。
*****3.自弁持込もしくは差入品
岩波古語辞典、広辞苑、学研漢和大字典、中西万葉集(二、三巻)、小説「われもまた剣法者」、手紙7、はがき8、座布団1、メガネ(老眼、近眼)、メガネふき2、メガネケース2、スーツ1、ズボン2、パジャマ上下、トレーナー上下、ワイシャツ2、シャツ3、ズボン下3、パンツ4、くつ下2、ハンカチ2、裁判関係資料47冊。

****B.官から貸与されているもの
*****1.官本
高橋治「夜光貝岬」講談社、黒岩重吾「剣は湖都にも燃ゆ」文芸春秋、小川環樹「談往閑語」筑摩書房。
*****2.備品等
同年4月8日現在の棚卸しと同じ。

四、 以上の棚卸し物品は、それぞれの時点において私が自由に費消もしくは使用することができる物品の全てであった。
限られた空間の中で、限られた物品しかなかったものの、私には十分であった。衣食住は完全に足りていたのである。
その上、万葉集を夢中になって書き写していたので、一日があっという間に過ぎてしまい、全く退屈することがなかった。精神的にも十分満たされていたのである。
独房は、麻原ショーコーの言うように「動物園」でもなければ、当初私が感じた「物品置場」でもなかった。天国とまでは言えないまでも、私にそれなりの豊かさを与えてくれる空間であった。
テレビもなければ電話もない。好きなクラシックを聴くこともできなければ、コーヒーも酒も飲むことができない。まさに、ないない尽くしの毎日であった。
文明の利器に溢れた生活から隔絶され、独居房という限られた閉鎖空間の中で過ごした291日間は、人としての原点をふり返るための貴重な期間であった。

 

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