B04 マッチポンプ 4

***(4)密談

社長と税理士の密談が始まった。

「社長さん、私は今、税務署の資料を全部見せてもらいましたが、実に克明に調べていますよ。反面調査(はんめんちょうさ。取引の相手先を調べること)によって集めたものでしょうね。いつか社長から打ち明けられた人件費の水増し、つまり架空人件費については幸いにもまだ気がついていないようです。この人件費関連をいれると、申告漏れは3年間で軽く5000万円は超えます。
いずれにせよ、税務署がつかんでいるだけでも3000万円、本税の外に35%の重加算税に延滞税やら地方税を加えると2000万円前後税金で持っていかれてしまいます。最悪の場合は、この上に使途不明金扱いにされて、更に40%上乗せされるおそれもあります。
どうでしょう、やってみなければどうなるかはわかりませんが、一度交渉してみましょうか。重加算税の対象となるものですので、裏交渉の形でするしかありません。幸い、さっきの調査官は私の税務署時代の部下ですので、何とかなると思いますよ。」

B税理士からなんとかなると聞いて、D社長は藁(わら)をもつかむ思いで飛びついてきた。
「ただし」とB税理士が切り出した、-
「このままであったら、明らかに最低でも2000万円ほど税金でもっていかれてしまいます。その上、このケースでは内容的にも重加算税の対象となるくらいのものですから、マスコミにリークされる可能性があります。
そうしますと、使い道のわからないお金が3000万円あるわけですから、この使途について追求がなされるでしょう。そうなった場合、工事をとるためにばら撒いたお金の中で、政治家に渡したものだとか、役人に渡したものについては、贈賄罪にひっかかる怖れもでてきます。
追求がそこまでなされないとしても、脱税がリークされただけでも、官公庁の指名業者から外される可能性があるとみなければなりません。
あるいは汚職の摘発がなされないとしても、ひとたび、裏面工作が白日の下にさらけ出されそうになれば、政治家とか役人は今後おそれをなして会社に近づかなくなるかもしれません。
いずれにせよ、表面化すれば会社にとってまずいことは明らかで、穏便に事が収まればそれにこしたことはありません。

ものは相談なんですが、このままだと確実に2000万円ほど税金でもっていかれます。そこで、もしうまく事態を収めて、税金を払わなくていいようにした場合、その2分の1の1000万円を私に預けていただけませんか。あの調査官については、近いうちに税務署を退職して独立しますので、会社の顧問として迎えてやって下されば結構です。私同様、なにかと役に立つと思いますよ。」

D社長は商売人として頭の中ですばやく算盤(ソロバン)をはじき即答した。「顧問の件と1000万円の件は了解しました。」

 

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