悪徳会計屋の経済事件ノートvol.3

2004年12月9日 第3号 発行部数:356部

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 悪徳会計屋の経済事件ノート



  なぜ上場会社社長は国税局ロビーで壮絶なる自殺を選んだのか。

   国税局OB税理士が納税者を食いものにする手口とは。

    税務署とマスコミから悪徳会計士の烙印を押された

     会計のプロが税金法律金融事件の深層に迫る。



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 山根治(やまね・おさむ)  昭和17年(1942年)7月 生まれ

 株式会社フォレスト・コンサルタンツ 主任コンサルタント

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●ハニックス工業事件の真相



「ハニックス工業 事件の真相 3」より続く

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(3)倒産についての一般の見解



  会社が倒産し、社長が壮絶な自殺をしてから10年程が経過した。

 その後、連鎖倒産の数は63社に及んだ。

 

  脱税で告発された三日後に倒産したことについて、大方の見方は

 次のようなものであった。



 日本経済新聞の竹居芳照論説委員は、 ―  



『悪質な脱税に対する告発が引き金になって会社がすぐに倒産した例

 はまずない。だから倒産は国税当局にとっても衝撃的だったようだ。

 そして今度は国税局で自殺と抗議である。

  告発する以上、国税当局は十分に立証できるだけの準備ができて

 いたと思われる。だが、H社長は終始、個人の売買であり、会社の

 自社株売買ではないと脱税を否認し、死をもってまで抗議している。

 果して、真相はどうであったのか、ぜひ知りたいところである。



  ハニックス工業が店頭市場に株式公開したのは、1990年7月

 27日。店頭市場での初値は、1万6,600円(額面50円)だっ

 た。株式市場にバブルの余韻が残っていたとはいえ、優良・成長株

 としての人気を反映していた。

  それが三年もたたないうちに倒産した。会社更生法の適用申請も

 実質却下されてしまい、自己破産の道を歩むしかなかった。株主や

 取引先などにも、どうしてそんなことになったのかいまだによくわ

 からない。



  ハニックス工業本体の92年12月決算を見ると、需要回復の遅

 れで減収減益になったとはいえ、売上311億円、経常利益13億

 円で、自己資本比率は50%だった。そこからは倒産の危機など想

 像だにできない。』



  ― と真相がよく分からないと前置きしながらも、会社の実態は相

 当悪化しており、粉飾決算がなされていたのではないか、との論調

 に推移していく、 ―



 『もっとも、関係者の話を総合すると、すでに、92年においても

 経営実態は相当に悪化していた。

  店頭公開と前後して、得意とする超小旋回ミニ油圧ショベルの分

 野に、大手の建機メーカーが相次いで参入してきた。このため、同

 社は販売網の強化を図ろうと、各地のレンタル業者を系列化した。



  建設機械の販売にはレンタルが付きものだし、こげつきのリスク

 も大きい。大手メーカーといえども商社を介したりしてリスクを回

 避する。これに対し、同社は拡販のためグループ企業を使って自ら

 レンタルを手掛けた。



  しかし、大手メーカー製品との競合などで売れ行きが落ちてきた

 にもかかわらず、H社長はハニックスグループ各社の実績を落とさ

 ないように猛烈にはっぱをかけた。このため非連結関係会社への押

 し込み販売が行われたようだ。売り上げは計上しても、それに見合

 う費用を計上しないなど粉飾決算も行われていたという。

  そうした同社の経営実態の一端が表面化したのが昨年4月。同社

 が取引していたレンタル業者が4社、事実上倒産した。この時から、

 銀行、商社、ノンバンクが信用供与に慎重になり、同社の経営実態

 について説明を求めたが、H社長は納得できる説明をしなかった。

 多分できなかったのだろう。



  H社長は告発報道を問題にしていたが、無理な経営を続ければ会

 社が行き詰まるのは時間の問題だった。もっと早く、実態を金融機

 関に率直に伝えて経営支援を求めていたら、再建の道もあったろう

 が、ワンマン社長にはそれができなかった。会社と社長のあまりに

 も突然の、壮絶な死だった。』



(日本経済新聞、平成6年1月23日付、「開示されない破滅の軌跡

 ― ハニックス工業の真相は」と題する竹居照芳論説委員の記事より)

 

  その後現在に至るまで、会社の業績悪化とそれを糊塗した粉飾決

 算が倒産の主たる原因であるとする見方が、一般に信じられてきた。

 突然職を失ない路頭に迷うことになった会社の役員従業員をはじめ、

 優良株と信じて投資し巨額の損失をこうむった株主、連鎖倒産に追

 い込まれた63社もの関連会社の人達は、もっていきようのない怒

 りを不完全燃焼させていたに相違ない。





(次号へ続く)





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