「スケコマシ」考 -その1
- 2004.09.14
- 山根治blog
中江滋樹氏のまわりには、ユニークとしか言いようのない人物がかなり集まっていました。その中でも、ピカ一であったのがS.Sなる人物でした。
年は中江氏よりは上で、私よりは下、といったところですから、私が出会った頃のS.S氏は30歳の前半でした。
背はそれほど高くなく、痩せ型の貧相な男で、定職もなければ資産もない、いわばプータローでした。私は、S.S氏に会うたびに、「ゲゲゲの鬼太郎」に出てくる“ねずみ男”を連想したものです。
ところがこの人物、女性に不自由したことがなく、やたらともてる。男性の私としては不思議としかいいようのない人物でした。
しかも、彼が相手にする女性は、資産家でハイソサイエティのインテリ女性に限られていました。プータローのような女性は一人もいませんでしたね。
同時に何人の女性とつきあっていたのか分かりませんが、少なくとも3人以上はいたようです。
彼の生活費はすべて女性達が負担しており、外見的には実に優雅な生活を送っていました。
現在と違って、20年前といえば国産車と比べて外車の価格が飛び抜けて高く、一般には高嶺の花でした。ステイタスシンボルの一つとされていたものです。
そのような外車を彼は、4台も所持し、乗り回していました。当然、全て女性たちからの貢ぎ物です。
必ずしも口先三寸で貢がせていたわけでもなければ、脅しあげていたわけでもなく、むしろ女性達が喜んで貢いでいたフシもありました。
およそ二枚目にはほど遠い人物でしたので、何か特殊なフェロモンでも発散させていたのでしょうか。あるいは特別なマインドコントロールの技法でも持っていたのでしょうか。私は彼がつきあっている女性を交えて何回か会っているのですが、女性が心底惚れ込んでいるのが明らかでした。
片やショボクれた貧相なプータロー、片やさりげなくオーダーメイドの高級服を着こなし、ハンパではないアクセサリーを身につけたハイソサイエティの女性。どうみても釣り合いそうにないカップルでしたが、女性の方が眼を潤ませてウットリとしているのには感心しましたね。
彼のような男のことを何と呼んだらいいでしょうか。このたび久しぶりに彼のことを想い出し、適当な肩書を考えようとしたのですが、すぐにはピッタリしたものが見当たりません。
プレイボーイ、女たらし、ジゴロ、ヒモ、-どれも彼にはしっくりしません。
プレイボーイには、金持ちのドラ息子のイメージがありますし、女たらしには、とびっきりいい男のイメージがつきまといます。いずれにも彼はあてはまらない。
ちなみに“女たらし”を辞典で引いてみると、「美貌と巧言とで次つぎに女性を誘惑し、遍歴することに生きがいを感じる反社会的な男。」(新明解国語辞典、三省堂)とあります。
私は普段は岩波の広辞苑を使っているのですが、時には三省堂の「新明解国語辞典」をめくってみます。この辞典は一風変った辞典で、この辞典をめぐって何冊かの本が書かれているほどです。
この「女たらし」の説明などいい例で、「反社会的な男」と言い切っている点が面白い。明快な倫理観を持って、自己主張しているのです。受験勉強などに役に立つかどうかは保証の限りではありませんが、ユカイな辞書であることは間違いありません。
肩書きについてあれこれと考えた末に頭に浮かんできたのが、「スケコマシ」という、いささか時代遅れになったような言葉でした。
早速、広辞苑にあたってみました、-“スケコマシ”-「(隠語)女性の体をもてあそぶこと。また、その者。」とあります。
しかし、どうもスッキリしません。私が漠然と抱いている“スケコマシ”とはどこか違っているのです。
(この項つづく)
―― ―― ―― ―― ――
ここで一句。
“愛想いいときの猫には打算あり” -堺、山本英毅(毎日新聞:平成16年8月12日号より)
(猫という生き物は、飼主がいくら可愛がって尽しても、当然というような顔をしています。めったに見せない媚態を示されたら、それだけで猫好きは感動のあまり何でもいうことを聞いてしまうんでしょうね。猫がスケコマシで、猫好きの女性がスケに思えてきました。)
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