トヨタの蹉跌

 トヨタと日産の企業分析をしたのは一年ほど前のことである。それぞれ10年分の有価証券報告書をベースにした分析であった。

 その結論は、両社共に10年前より格段に見劣りする会社になっていることであった。ちなみに、この時点では、平成20年3月期までの有報しかなかったため、同年9月に起ったいわゆるリーマン・ショックは折り込まれていない。つまり、リーマン・ショック前までの両社が10年前の状態より悪くなっていたということである。

 トヨタは世間一般に言われているように、自己資金が豊かな優良会社ではなかったし、日産に至っては、カルロス・ゴーンが乗り込んできて日産を立て直すどころか、食い散らかすようにして更に悪い状態の会社にしてしまった。
 その後に起ったリーマン・ショックは、両社の経営者に責任の免罪符を与え、格好の逃げ口上を提供することになったようである。10年来の経営の失敗をリーマン・ショックのせいにすればいいからだ。

 とりわけトヨタの分析結果は、世間一般の評価とは全く異なるものであり、かつて2年続けて2兆円もの利益を稼ぎ出して我が世の春を謳歌したのは、トヨタの世界戦略の蹉跌と財務戦略の失敗を象徴する線香花火であり、アダ花であったことを示していた。それは車づくりの原点と財務戦略の基本を忘れ、ひたすら金儲けに邁進した結果であり、グローバリゼーションの浮かれた波に乗って、堅実を旨とする名古屋企業のワクを大きく踏み外した結果である。

 分析結果を前にして、私の脳裡には駄目になる5年前から釣瓶落しのように破綻の道を突き進んでいったGM社の姿が浮んでいた。トヨタも他人ごとではない。対応を誤るとGMの二の舞になりかねない。このように考えた私は、ブログ(100年に1度のチャンス -23)で分析結果を簡略に紹介した。
 あれから一年、社長の座は創業家に移った。そしてこの度のリコール問題であり、それに端を発したトヨタ・バッシングである。
 格付け会社がさっそくトヨタの格下げを検討しているようであるし、使うことのできる自己資金に限界のあるトヨタとしては外部からの資金調達が生き延びるための命綱であるだけに、経営陣としてはまさに正念場を迎えていると言っていい。長年トヨタ車を愛好してきた一人として、トヨタが今一度車づくりの原点と財務戦略の基本に立ち帰り、健全な姿に復帰することを願っている。

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 ここで一句。

“鍋奉行 灰汁(あく)代官に 待ち娘” -碧南、能瀬リン。

 

(毎日新聞、平成22年2月14日付、仲畑流万能川柳より)

(~お銚子商人 出汁(だし)捕手。)

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