中江滋樹氏からのダイイング・メッセ-ジ-④

 加藤嵩氏は、リョウチョウや査察、あるいは検察にいかに脅されようとも頑として金主(きんしゅ)の名前を明らかにしなかった。前回述べた通りである。

 今回は、仕手相場に飛び交(か)う多額のお金について考えてみる。

 このお金(かね)なるシロモノ、考えれば考えるほど訳が分からなくなる。摩訶不思議(まかふしぎ。どう考えても不思議に思われる様子。-明解国語辞典)なシロモノとしか言いようがない。
 

 「お金は幻である」



というのが、認知会計(Cognitive Accounting)からの結論であるが、詳細は別稿に譲る。

 幻(まぼろし)であるお金が、仕手相場という投機の世界で乱舞している。仕手相場-株式市場で仕手仲間が丁々発止のやり取りをし、文字通り株式の価額を創り上げていく鉄火場である。もともと素人衆(しろうとしゅう)が出入りするところではない。勝負に一切の弁明が通用しない、いわばプロの世界だ。

 金主(きんしゅ)、仕手本尊、仕手、チョウチン、-彼らは仕手相場という鉄火場で、いかに他を出し抜くのかにシノギを削る連中だ。何をしでかすか分からない、いわば虚業集団だ。

 加藤嵩氏は、仕手本尊として祭り上げられていたものの、実体は大口の金主(きんしゅ)からの預り金を運用する采振り(さいふり。博奕で采を振る役)だ。中江滋樹氏も同種の采振りの一人であった。

 サイフリの役割は、多くのチョウチンをかき集めて、仕手相場という鉄火場で檀那衆を適当に遊ばせていかに多くの金を捲き上げるかに尽きる。加藤嵩氏とは投機が虚業であることについて話し合ったことはないが、中江氏とはかなり早い時期に話し合っている。私は、中江氏に対して、虚業から早く脱して実業に向かうようアドバイスした。私の忠告は、私・山根治に宛てられた中江滋樹氏からの直筆の遺書の中に記されている。



 本稿の冒頭(「中江滋樹氏からのダイイング・メッセ-ジ-①」参照)で、『中江滋樹氏が亡くなった。享年66歳。自らの死を覚悟していたと思われるメッセ-ジが「日刊ゲンダイ」に連載中であった。浅からぬ関係にあった私にとって、中江氏から、いわばダイイング・メッセ-ジ(Dying Message)が発せられた思いである。』と記しているが、この「日刊ゲンダイ」の記事と私宛の遺書、この2つが、中江氏が私・山根治に発したダイイング・メッセ-ジであると判明した。この時点で、投資ジャ-ナル・グル-プと中江氏に対して長い間わだかまっていた数々の疑問が一挙に解消したのである。

 疑問の解消は、フェイク(偽)ニュ-スの世界的な拡散とコロナ・ウィルスによるパンデミックとが複雑に絡み合って、情報戦の様相を呈してきたことと軌を一(いつ)にする。AI時代における、核兵器に匹敵するかあるいは核兵器よりも恐ろしい第三次世界大戦の勃発である。

 中江氏から私に宛てられた遺書については本稿の後半で、その全文を明らかにする予定である。(この項つづく)

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 ここで一句。

”人材は足りず 人手は余ってる” -八尾、立地乙骨炎(毎日新聞、令和2年4月3日付、仲畑流万能川柳より)


(生命体としての人間を維持する仕事に従事する人びとと、彼らに寄生する人びと。寄生虫のような人びとの代表が政治家と役人。法曹界(裁判官、検察官、弁護士、法学者)の連中も寄生虫の仲間だ。かく言う私のような会計士・税理士も同類。

“政治家は悪魔の仕事じゃないかいな”-マックス・ウェ-バ-)

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