前代未聞の猿芝居-⑨

  1.  A社の社長は、自分の妻が専務夫人を抱き込んで、6億7千万円もの会社の現金売上などを抜き取り、個人的に費消していたことを本当に知らなかったのである。通常の査察調査では、まずあり得ないことであった。
    査察の連中は困ってしまった。唯一、会社の代表権を有するオーナー社長が、会社経営のツンボ桟敷に置かれていたからだ。

    「これではA社を脱税で立件することはできないのではないか。」

    査察調査の3人の現場責任者がヒソヒソ話をしているのを会社関係者が耳にしている。
    仲間内でヒソヒソ話をしていたのは次の三名である。

    1. 青木 利幸 (局査察第4部門総括主査)
    2. 山持 昌之 (局査察第4部門主査)
    3. 花井 茂 (局第1部門総括主査)

    上記3名のうち、

    「これではA社を脱税で立件することはできないのではないか。」

    と言い出したのは、3.の花井茂総括主査であった。

  1.  平成29年11月15日、筆者の事務所にA社の関係者から、
    「査察に入られた。脱税所得6億7千万円を突きつけられて困っている。相談に乗ってもらえないか。」

    との架電があった。ガサ入れ(臨検捜索差押当日)の翌日のことである。
    筆者はそれまでA社と同じ松江市に住んでいてもA社の名前すら知らなかった。A社関係者(現時点で判明しているのはオーナー社長の妹)が、インターネットまたはその他の情報から、筆者が日本で唯一人、査察の不正を真正面から糾弾している税理士であることを知った上で架電してきたものと思われる。

  2.  平成29年11月16日、A社社長夫人、専務、総務部長(専務の息子)の3人が筆者の事務所にやってきた。
    3人から詳しく事情を聴取したところ、以下の事実が明らかになった。

    1.  平成29年9月26日、広島国税局課税第2部資料調査課(リョウチョウ)による調査が開始された。
    2.  平成29年10月26日、リョウチョウはA社の森山文夫顧問税理士に対して、調査結果として
      「増差額7年分の集計表(合計金額7億円強)」

      を提示し、集計表のコピーを渡すことなく、森山文夫税理士に増差額7年分の集計表を写させた。前回述べた集計表である。
      森山文夫税理士は、自ら書き写した7億円強の増差額の集計表をA社の社長夫人、専務、総務部長に提示して、内容の説明を行った。
      その際森山文夫税理士は、5%ほど減額された脱漏所得6億7千万円に対する税金の額について、A社関係者に5億円は下らない金額になることを説明している。法人税本税の他に、重加算税、地方税、所得税などを合算した金額である。
      所得税の課税については、脱漏所得6億7千万円の大半が、社長夫人と専務夫人による、

      “現金売上の除外と架空仕入の計上によるA社資金の横領と横領資金の使途が社長夫人と専務夫人の個人的費消”

      であったことから、A社の脱漏所得6億7千万円に対して、

      役員賞与認定

      されることを、森山税理士はリョウチョウから聴いていたからである。

    3.  リョウチョウは、平成29年11月14日に日を定めて、A社に対して調査結果の説明と修正申告の勧奨をする旨を、森山文夫税理士を通じてA社に対して行った。
      しかし、リョウチョウが約束した当日に、A社に対する調査結果の説明と修正申告の勧奨の手続がなされることはなかった。
      その代わりになされたのが、査察調査のガサ入れであった。騙(だま)し打ちである。A社の専務は、筆者に対して顔を歪(ゆが)めて、

      「国税に騙された!!」

      と怒りを顕(あら)わにした。

    4.  A社側からの説明によって、ガサ入れしたときの査察部門・現場責任者3人の名前、
      1. 青木 利幸
      2. 山持 昌之
      3. 花井 茂

      が明らかになった。このうち、
      1.の青木 利幸   と
      2.の山持 昌之
      の二人が、筆者が出会った不良査察官の中でも、極め付きのワルであったことから関心を抱き、A社の事件を引き受けることにした(「前代未聞の猿芝居-⑤」参照のこと)。

    5.  A社側からの説明は3時間に及んだ。その間、筆者の事務所の駐車場で待っていた人物がいた。百貨店に出店している会社の販売員(女性)である。この女性販売員についてはすでに(「飛んで火にいる夏の虫-③」 ※女性販売員はこの記事の中の「Cさん」のこと。)で述べたところだ。
      A社側の3時間に及ぶ説明が終り、A社側関係者が筆者の事務所を出ようとした矢先、この販売員がかけ込むようにして筆者の事務所に飛び込んできて、

      「私の話も聞いて下さい。私は一体どうなるんでしょうか。」

      と尋常ではない様子で猛然と私に話しかけてきた。オドオドと脅え切っていたのである。
      この女性販売員こそ、社長夫人の現金取引を手助けして、百貨店に押し込み販売をしたり、二重請求書を切らしたり、マネー・ローンダリング(資金洗浄)したりした張本人であることが、後日判明している(「前代未聞の猿芝居-⑬」で詳述)。

  3.  平成29年11月20日、筆者の事務所でA社のオーナー社長、社長夫人、専務、総務部長(専務の息子)に対して、
    “本件は冤罪事件であること、リョウチョウと松江税務署長が法定の調査手続を踏んでいないことから課税処分もできないこと”

    を説明した上で、筆者とA社との間で契約を締結した。
    この契約は、本件第5回公判廷で、主任弁護人が指摘したような

    “平成29年11月20日に山根治税理士とA社との間で締結した委任契約”(「前代未聞の猿芝居-⑦」の中の「A社法人税法違反裁判第5回」

    ではないし、同時に、弁護人が、

    “今回、修正申告にあたっては、A社は山根税理士を解任した”(「前代未聞の猿芝居-⑦」の中の「A社法人税法違反裁判第5回」

    と指摘しているように、A社がA社税務代理人を解任したからといって、この契約が解除できるものでもない。
    弁護人は、筆者とA社とが締結した契約を委任契約であると誤解しているだけではない。税務代理人がいかなるものであるかについての税理士法の規定を知らない。
    筆者の業務は、国家公務員による犯罪のデッチ上げ(冤罪の捏造)を指摘し、冤罪の捏造を阻止することを目的とする「冤罪捏造調査」(「前代未聞の猿芝居-①」)であるから、税理士法で定められた無償独占性を有する「税理士業務」(税理士法第2条第1項)でもなければ、独占性を有しない誰でもできる「税理士の業務」(税理士法第2条第2項)でもない。また、有償独占性が与えられている弁護士の法律事務(弁護士法第72条)でもない。
    もちろん、告発を前提として裏取引する国税ОB税理士やヤメ検(検事上がりの弁護士)のような闇ブローカーの汚れ仕事でもない。
    筆者とA社との間で締結した契約は、税理士法の規定による税務代理契約ではなく、税理士法とは関係のない全く異なった別箇の契約だ。従って、税務代理人が解任されたからといって、A社との契約が一方的に解除されるものではない。

    筆者とA社との契約の概要は次の通りである。

    「本件査察調査が冤罪をデッチ上げようとしていることを前提に、その阻止(告発をさせないこと)を目的として、成功報酬を、

    1. 告発がされなかった場合に2千万円。
    2. 査察側が提示した脱漏税額4億7千万円(実際の提示額5億円超を減額)とA社が納得した修正申告等の税額との差額の20%。

    とする。」

    上記の成功報酬の2.については、告発がなされなかったことが前提となるもので、査察調査を中止し、告発を断念した査察との妥協の話し合いの余地を残すものだ。
    実際に、告発を断念するだけでなく、マスコミへのリーク(情報の漏洩)をもしないことを条件として、査察(もしくはリョウチョウ)の提示税額を10分の1以下に減額したケースは、これまでに全国の各国税局でいくつも存在する。もちろんその場合の査察官(もしくはリョウチョウ職員)の氏名については、ブログ上での公表はしていない。

(この項つづく)

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