飛んで火にいる夏の虫-①

 このところ、財務省の不正問題について連日のように情報が飛び込んでくる。国税庁の不正(注)に関しても森友問題と密接に関連しているので、私は、一体の情報として捉えている。

 情報といっても普通のものではない。不正を行った側が自分達を正当化しようとする情報、あるいは、自分達が創り上げたシナリオに沿って世論を誘導しようとする情報である。世論操作のためのインチキ情報だ。

 森友問題に関してマスメディアで現在流されている情報のほとんどはインチキ情報である。全て問題の本質からズレているからだ。

 このインチキ情報を流しているのは誰か?ズバリ、大阪地検特捜部と大手メディア、中でも朝日新聞だ。

 ここでは、長年国税庁の不正(注)を追及してきた私個人の立場から、気がついたインチキ情報を取り上げる。世論操作、あるいは世論を誘導しようとするもので、一見して情報の背景が透けて見えるオソマツな情報である。本音が透けて見えることから、情報の発信者が、自ら墓穴を掘っている。「飛んで火にいる夏の虫」(自ら進んで禍に身を投ずること-広辞苑)である。

 「飛んで火にいる夏の虫」の第一号は、朝日新聞の読者投稿欄(“声voice”)の、

「公務への信頼を傷つけられた」
  -税理士 井藤正敏(東京都55)

とする記事(平成30年3月17日付)である。朝日新聞によるヤラセ記事そのものだ。何故か?

 まず、投稿者である井藤正敏なる人物がいかなる存在であるか、そのプロフィールを記す。全て井藤正敏本人がホームページ上で公開しているものだ。
+東京経済大学卒。
+平成2年、東京国税局採用(国税専門官試験)、55歳。
+平成29年、税理士事務所開設。国税ОB税理士。
+庁、局における職歴を詳細に公表して、移転価格税制が得意であると自賛。

 投稿、記事の内容に踏み込む前に、投稿された文章について一言。
 朝日新聞は一般大衆向けの新聞である。専門紙ではない。この記事は、決められたワク組の中に起承転結がはっきりした分かりやすい文章に仕上げられている。新聞記事特有の文章である。記事作成の現場でたたき込まれなければ書くことのできない“特有のニオイ”がある。新聞記者の書く文章は現場経験がないと書けない文章、“ブン屋の文章”である。
 投稿文は、490字ほどの短い文章の中に、キャッチフレーズや諺(ことわざ)の類(たぐい)が6つも入っているし、「体言止め」も2つ用いられている。その上論旨がしっかりしており、スッと読むことができる。典型的な“ブン屋”という職人による定型文だ。
 このような文章は、私を含めてシロウトの書けるものではない。ましてや、投稿者名義となっている人物は、国税ОB税理士だ。税務職員としてこのような“定型文”を書く訓練を受けていない。あるいは、国税局職員として、逆にこのように分かり易い文章を外部に向って発信してはいけないと教え込まれてきたのではないか。

 文章の長さも注目に値する。この投稿文、わずか490字ほどだ。
 私はこれまで公表しているだけで3,000万字位、公表していないものはそれ以上の字数の文章を紡(つむ)いできた。全て、愛用している赤のパーカー・デュオフォールドで一字一字書いたものだ。私の仕事は、500字以内というワク内で文章を書く仕事ではない。まれに求められて書くことがあるが、ワクを決められると四苦八苦である。短い文章をモノにする難しさは誰よりも知っている。
 私は、安部譲二さんとか浅田次郎さんのような作家ではない。この2人の作家は、文章によって私の心を震えさせる。この二人にしか書くことのできない“名文”だからだ。
 私には、ブン屋の文章や作家の名文を書くことはできない。私が書くことのできる文章は、税務会計の職人としての文章だけだ。
 この点、国税ОBの井藤正敏税理士も私同様、税務会計の職人であるにすぎない。作家の名文はおろか、ブン屋の文章など書けるはずがない。

 内容については言わずもがなである。

「国税職員になり最初に教わることは、綱紀の厳正です。国民の大切な税を扱う以上、国税組織への信頼は必要不可欠だからです。
 信頼は一朝一夕には成らず、崩壊は一夜で起きる。だからこそ、非行はおろか「李下に冠を正さず」と習うのです。」

など、よく言えたものだ。
 国税職員に上記のようなことが教えられているのは事実である。私はこれまで延べで数千人の税務職員と接しているが、教わったこと(タテマエ)をキチンと実行している人物に出会ったことがない。タテマエとホンネが異なっている。タテマエだけでは“絶対に”仕事ができないのは、30年近くも国税の職員として働いてきた井藤正敏税理士本人が一番よく知っているはずだ。

 私は、この投稿文が単なる名義貸しとまでは言わない。しかし、朝日新聞のデスクの意向が濃厚に反映されているのは確実である。
 それは、起承転結の“結”の部分、

「これでも本当に、政治家に任命責任がないのでしょうか。」

が如実に示している。佐川宣寿・国税庁長官は悪くない。悪いのは政治家であると言っているからだ。
 朝日新聞が大阪地検特捜部のリークを受けて、世論操作をしている何よりの証拠である。森友問題の犯人の一角に、大阪地検特捜部と朝日新聞がいるということだ。

(この項つづく)

(注)国税庁の不正。昭和37年以来、55年間にわたって、国税庁は偽りの手段を用いて、国民を騙したり、脅したりして税金を強奪し、その上、脱税は犯罪とはなり得ない冤罪であるにもかかわらず、証拠を捏造して犯罪に仕立て上げていた事実。国税庁は、組織として不正行為を実行するために、法の規定に反する公文書を秘密裡に作成していた。

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