「佐川君こそ官僚の鑑?」-補足2
- 2018.03.02
- 山根治blog
「共謀罪」法案審議のドサクサに紛れて、前代未聞の荒技が強行採決されたことについて。
前代未聞の荒技とは何か。脱税罪の全く新しい犯罪類型が、税法の中ではなく、ナント、共謀罪法案の中にコッソリと組み込まれていたことだ。
現在最もポピュラーな脱税犯罪は、過少申告ほ脱犯と呼ばれているものだ。所得税法では第238条第一項、第三項、あるいは第239条第一項の罪、法人税法では、第159条第一項、第三項の罪とされている、「偽りその他不正の行為により税を免れること」を、犯罪構成要件とする罪のことである。
私自身も、法人税法違反(第159条違反)の嫌疑で逮捕され、刑事法廷に引っ張り出されている(「冤罪を創る人々」)。その後、全国から、所得税、法人税、相続税、消費税の各税法違反で摘発(インチキ部門であるリョウチョウの摘発を含む)された人々から相談を受け、税務代理人を引き受けてきたのも、この「過少申告ほ脱犯」の弁護のためであった。
私が到達した結論は、この「過少申告ほ脱犯」は、現在の法体系のもとでは犯罪としては存在しえない犯罪、即ち冤罪(無実の罪)であることであった。当ブログの「冤罪を証明する定理(山根定理)」で明らかにしたところである。
ところが、この「過少申告ほ脱犯」とは一見すると同じようではあるが、実際には全く別個の「過少申告ほ脱犯」が新設された。
全く別類型の「過少申告ほ脱犯」は、所得税法などの各種税法の中の罰則規定として追加されてはいない。昨年の通常国会で自公政権が強行採決した「共謀罪」法案の中に密かに組み込まれていたのである。
即ち、「共謀罪」法案の中の、別表第三(第六条の二関係)の中に、その52号として所得税法の罪が、その53号として法人税法の罪が“新設”(転記ではない)されていた。
改正案と現行を対比した中で、“新設”とされている改正案は次の通り。
五十三 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第百五十九条第一項又は第三項(偽りにより法人税を免れる行為等)の罪」
この新設として改正案に示されているのは、
五十三では、「偽りにより法人税を免れる行為」
を罪とする脱税類型だ。
「佐川君こそ官僚の鑑?-⑵」で触れたように、去年の10月の時点では、所得税と法人税の罰則規定の書き方が本法とは異なっていることには気がついていた。しかし、その時点では本法に規定されている罪の転記がいいかげんになされているものと勘違いしていた。
ところが、このたび籠池事件についての佐川宣寿・国税庁長官のデタラメぶりを眼の当りにして、改めてこの人物がかかわった「共謀罪」法案を読み直してみたところ、五十二号と五十三号の全ての字句に縦線が施されており、かつ「新設」と明記されていることが分かった。所得税と法人税の本法からのズサンな転記誤りではなく、本法に規定された、
とは、全く異なる犯罪類型が新設されていたのである。
と
とは、何がどのように違っているか?犯罪構成要件の点から検討してみるとその違いが明瞭になる。
従来の「過少申告ほ脱犯」は、次の2つの構成要件からなる犯罪である。
+偽りその他不正の行為
+税を免れること、の2つである。
これに対して、新設された「過少申告ほ脱犯」は、
+偽り
+税を免れる行為
となっている。
まず、1.の「偽り」が「行為」なのか「事実」なのかはっきりしない。従来の「偽りその他不正の行為」と同じなのか、あるいは違うとすれば何がどのように違うのか国会の場で説明がされていない。
さらに大きな問題点は、2.の「税を免れる行為」である。従来の「税を免れること」が「税を免れる行為」に変えられている。
「税を免れること」ことは事実であるのに対して、「税を免れる行為」は“事実”ではなく“行為”である。
私が発見した「冤罪を証明する定理(山根定理)」は、「税を免れること」が“事実”であることに着目して成立している。それが“行為”となれば、この定理は成立しなくなる。
つまり、新設された「過少申告ほ脱犯」は、私の「冤罪を証明する定理」を無力化するものだ。50年以上にわたって国税当局は、「税を免れること」という事実要件をネジ曲げて解釈してきたのであるが、それを正当化しようというのであろうか。
このことは、これまで50年以上にわたって行われてきた「国家ぐるみの税金収奪と冤罪捏造」のインチキには頬被(ほおかぶり。(自分の都合の悪いことについて)知らない顔をすること。-新明解国語辞典)してやりすごし、今後は、新設された「過少申告ほ脱罪」を適用して、冤罪のそしりを受けないようにしようということなのだろうか。
いずれにせよ、国家財政の基本にかかわることである。国会の場で白黒はっきりするようにキチンと審議してもらいたい。
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