「佐川君こそ官僚の鑑?」―⑴

 週刊ポスト(平成30年2月19日発売)が、佐川宣寿・国税庁長官を槍玉(やりだま)に挙げている。一方で、政権側からは絶賛する声が挙がっていることを伝えている。記事の大見出しで、“「佐川君こそ官僚の鑑」安倍首相傲岸不遜の大号令、国民の怒り爆発”と徹底的に政権批判をしていると思いきや、記事の中味がそぐわない。



 記事の中で、“自民党細田派の安倍側近議員が語る。
「佐川長官はいわば総理の身代わりとなって批判を浴びながら、何一つ弁解しない。汚れ役になることを厭わず、自分の体面より政権を守ることを第一に考えている。総理も“佐川君こそ官僚の鑑”と高く買っており、官邸から自民党国対に『絶対に守れ』との指示が伝えられている」”

 あるいは、
“霞が関の役人たちの間にも“佐川を見習え”という空気が広がっている。
「おそらく佐川さんは後に問題になることは覚悟の上で、たとえ記録が残っていても、あえて『捨てたー』と言い張った。あんな答弁は、よほどの覚悟と胆力がなければできない」(経産官僚)”

といった内部情報がいかにももっともらしく紹介されている。細田派の安倍側近議員が語ったことも経産官僚が語ったことも事実であろうが、記事の意図が見え透いている。“誉め殺し”ならぬ、その反対の“けなし誉め”といったところか。

 もともと、森友学園に国有地が格安で売却された問題は、総理が指示したこととか、総理の意向を忖度(そんたく。他人の心中をおしはかること。-広辞苑)したことなど関係のないことだ。国有地を管理・処分する権限を持っている役人が不正な価額で売却しただけのことである。主として役人の不正行為を罰する、適化法(注1)、あるいは官製談合防止法(注2)が適用され、職務権限を有する役人が裁かれるべきものだ。
 この点から考えれば、平成29年7月31日に詐欺罪の嫌疑で逮捕され、今なお拘置所に閉じ込められている籠池夫妻はトンデモない濡れ衣(ぬれぎぬ。[濡れた衣服の意]実際には犯していない罪。-新明解国語辞典)を着せられていることになる。犯罪の適用条文が故意にスリ替えられ、いわば別件逮捕されているからだ。
 適化法違反、もしくは官製談合罪で罰せられるべきものを、大阪地検は、役人に累が及ばないように忖度して、敢えて詐欺罪にスリ替えている。籠池夫妻が取り調べに対して黙秘を貫けば詐欺罪が成立しないことを大阪地検はよく知った上で犯罪をスリ替えているだけに悪質だ。冤罪である脱税事件(「冤罪を証明する定理(山根定理)」「暴かれたカラクリ①~③」)で逮捕・勾留するのと同じである。
 籠池夫妻が200日以上も接見禁止の状態で閉じ込められているのは尋常なことではない。逮捕した大阪地検特捜部と籠池夫妻の弁護人との間で怪しげな裏の取引(「ヤケクソの検察官-②」)ができているようであるが、具体的な弁護士名を含めた詳細は別稿に譲る。

「佐川宣寿、国税庁長官が、総理の身代わりとなっていわば批判を浴びながら何一つ弁解しない。汚れ役になることを厭わず、自分の体面より政権を守ることを第一に考えている」とし、「総理も“佐川君こそ官僚の鑑”と高く評価している。」という。
 また、「あんな答弁(山根注。記録が残っているにもかかわらず、速やかに廃棄したと見え透いた嘘を言い張ったこと)は、よほどの覚悟と胆力がなければできない」という。

 いいかげんにしてほしい。安倍側近とか、経産官僚が何を喋ろうとも、かまわない。また安倍総理が“佐川君こそ官僚の鑑”と言っていようが勝手である。
 しかし、佐川宣寿・国税庁長官は、そんな男ではない。「自分の体面よりも政権を守ることを第一に考えて」などいるはずがない。「覚悟」もなければ、「胆力」などこれっぽちも存在しない。国会答弁のときの、眼が宙に浮き、オドオドした挙動は、コソドロが警察にしょっぴかれるときの挙動そのものだ。こんな木っ端(こっぱ)役人が、“官僚の鑑(かがみ)”であるはずがない。
 政権側が週刊誌記者を使って書かせたヤラセ記事、即ち、犯罪のスリ替え(適化法違反もしくは官製談合罪から詐欺罪へのスリ替え)を隠蔽するためのヤラセ記事である。

(この項つづく)

-(注1)適化法(「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律。昭和三十年法律第百七十九号。」)
-(注2)官製談合防止法(「入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の更正を害すべき行為の処罰に関する法律。平成十四年法律第百一号」)

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