査察Gメンを犯罪人として告発!!-⑱

 判例7.(承前)



 国税徴収法(昭和37年に全部改正される前のもの)第四二条には、「国税を徴収しようとする時は、税務署長は、納税者に対し、政令で定めるところにより、その納付すべき金額、納期限及び納付場所を指定して納税の告知をしなければならない。(下線は筆者)」(六法全書昭和36年版、有斐閣、P.371)とする「納税の告知」の規定があり、更に、「納税の告知の手続」として、国税通則法施行令第一五条第一項には、「法第四十二条(納税の告知)の規定による納税の告知は、次の事項を記載した納税告知書でしなければならない。
一 納付すべき国税の年度及び税目
二 納付すべき金額
三 納期限
四 納付場所(下線は筆者)」(六法全書昭和36年版、有斐閣、P.386)とする「納税告知書」の規定があった。

 ここで注意しなければならないことが三つある。
 一つは、この国税徴収法第四二条の規定は、申告納税制度がいまだ施行されていない賦課課税制度を前提として規定されていた、以下に掲げる同法第六条に相当することだ。

旧第六条
「国税ヲ徴収セムトスルトキハ収税官吏ハ納税人ニ対シ其ノ納金額、納期日及納付場所ヲ指定シ之ヲ告知スヘシ」

 二つは、この国税通則法第六条が昭和37年に全部改正される前に、大幅に変更されていることだ。
 この第六条については本稿-⑫で詳しく述べたところである。そこでは、筆者は、

「この国税徴収法第六条は、昭和37年の全部改正で削除されており、新しくできた国税通則法第36条(納税の告知)に移された」

旨述べているが、実は、国税通則法に移される前に国税徴収法の中で大幅な変更が加えられていた。昭和34年4月20日に公布された国税徴収法(法律第147号)である。 
 同法第六条が削除され、同法第四二条が新設されていたということだ。署名した内閣総理大臣は岸信介、安倍晋三総理の祖父である。昭和37年の全部改正でこの第四二条が削除され、新法である国税通則法第36条に移されているのである。
 この時の大蔵大臣は池田勇人、翌昭和35(1960)年、自民党は国会の内外を未曾有の混乱に陥れて新安保条約を単独可決した。世にいう60年安保騒動だ。
 新安保条約の自然成立を待って岸内閣が総辞職、池田勇人へとバトンタッチされた。
 池田内閣は、昭和35(1960)年7月から同39(1964)年11月まで4年余り続いたのであるが、まさにこの間に、国税犯則取締法における法的欠陥が明確に確認され、大蔵省あげての隠蔽工作がなされたのである。岸信介と池田勇人による隠蔽工作の詳細については別稿に譲る。

 当初の国税通則法第六条が昭和37年に全部改正される前に、大幅な変更が加えられているのは次の三点である。
+国税を徴収する官職名が、「収税官吏」から「税務署長」に変更されていること。
+税務署長が国税を徴収しようとする時は、「納税の告知」をすることが義務付けられたこと。
+「納税の告知」は、次の4つの事項を記載した「納税告知書」ですることが義務付けられたこと。
一、納付すべき国税の年度及び税目
二、納付すべき金額
三、納期限
四、納付場所
 上記3.の二、の「納付すべき国税」とは、「既に納税義務の確定した国税」、即ち、「納付すべき税額の確定した国税」の意味であることが法文の上で明示されたことだ。   
 ここに、「既に納税義務の確定した国税」とは、

(1)納税の告知をした国税
(2)申告または更正若しくは決定の通知に係る所得税、法人税、相続税、贈与税及再評価税
(3)製造場から移出された内国消費税の課される物品又は販売された物品に対する内国消費税
(4)入場税に規定する興行場等への入場につき領収した入場料金に対する入場税
(昭和34年4月20日公布の国税徴収法第四三条2項)

とされており、同様の規定は昭和37年制定の国税通則法第34条以下において、「国税の納付」と「国税の徴収」とが明確に区別された上で、同法38条第1項において、「納付すべき税額の確定した国税」という文言にさりげなく変えられている。
 「既に納税義務の確定した国税」から「納付すべき税額の確定した国税」への変更。一見同じ意味合いではないかと勘違いしそうになるが、全く異ったものだ。前者は、いくつか解釈の余地を残した曖昧(あいまい)な概念であるのに対して、後者は、解釈の余地が全くない厳密な概念だからだ。
 つまり、これまでたびたび言及してきた「納付すべき金額」がこの手品のような変更によって、「納付すべき税額の確定した国税」を意味するものと明示されたのである。

(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――
 ここで一句。

 

”母になる前から妻は強かった” -湖西、宮司孝男

 

(毎日新聞、平成28年4月4日付、仲畑流万能川柳より)

(ハムレットの独白、Frailty,thy name is woman(弱き者、汝の名は女なり)は、男の夢想的願望か。)

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