査察Gメンを犯罪人として告発!!-⑰

 判例7.(承前)



 判例7.の第一審が判示している「正規の法人税額」が何故、欺瞞に満ちた虚構の概念であるか。何故、租税法の規定に反するフィクションであるのか。

 その答えは以下の通りである。

 まず、判例7.の犯則事件があったのは、昭和31年3月期と昭和32年3月期の2事業年度だ。法人税に申告納税制度が導入されたのは昭和22年のことであるから、すでに10年ほど経過しているときである。
 戦前から続いていた賦課課税方式から、直接税に関しては、自主的な申告納税方式へと租税制度が百八十度変ったにもかかわらず、法人税法の規定の中に賦課課税方式時代の規定とおぼしきものが残っていた。いわば、賦課課税方式の残滓(ざんし)である。あるいは法人税法における不整合といってもいい。
 それが前回述べた、法人税法第48条第3項の規定である。

法人税法第48条
+詐偽その他不正の行為により、(略)の規定により申告をなすべき法人税を免れ、又は(略)の規定による金額の還付を受けた場合においては、法人の代表者、代理人その他の従業者でその違反行為をなした者は、これを三年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
+(略)
+第一項の場合においては、政府は、直ちに、その免れた法人税額または還付を受けた金額(略)に相当する税額の法人税を徴収する(下線は筆者)。

 つまり、逋脱行為があった場合には、
  (1)政府は、
  (2)直ちに
  (3)その免れた法人税を徴収する
と規定されているものだ。
 この第48条第3項の規定は、申告納税制度の本旨である、納税者による申告行為が全く無視されており、まさに賦課課税方式そのものを前提とした規定となっている。

 当時はいまだ国税通則法が存在せず、その場しのぎの法律として国税徴収法があるだけであった。ところがこの国税徴収法自体、賦課課税制度のワクから完全には抜け出してはいないシロモノであった。
 その事実は、法令名称である国税徴収法自体が端的に示している。昭和37年に全部改正された国税徴収法は、それまでの国税徴収法と法令名称は同一ではあるが、肝腎の「国税徴収」の意味合いが全く異ったものになっているからだ。

 基本判例とされている判例1.が、物品税を扱った判決であるにもかかわらず、2つの所得税法の判例、つまり、
-昭和24年(れ)第八九三号同年七月九日小法廷判決
-昭和33年(あ)第一五六九号同三八年二月一二日小法廷判決
を引用して、それらを是認している背景には、賦課課税制度を色濃く残している国税徴収法の規定と、先に述べた法人税法の罰則規定と同様の規定が、所得税法にもあったからである。以下の所得税法第69条3項がそれである。

所得税法第69条
+詐偽その他不正の行為により、(略)の規定により申告をなすべき所得税を免れ、又は(略)の規定による金額の還付を受けた場合においては、法人の代表者、代理人その他の従業者でその違反行為をなした者は、これを三年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
+(略)
+第一項の場合においては、政府は、直ちに、その免れた所得税額または還付を受けた金額(略)に相当する税額の所得税を徴収する(下線は筆者)。
(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――
 ここで一句。

 

”顔ほどに手入れはしない妻の部屋” -久喜、高橋春雄

 

(毎日新聞、平成28年4月1日付、仲畑流万能川柳より)

(“犯人に告ぐ、ムダな抵抗はやめよ!”、“道路工事はほどほどに。”-言わないでぐっと堪(こら)える男の美学。)

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