査察Gメンを犯罪人として告発!!-③
- 2016.03.01
- 山根治blog
査察官を含めた、国税庁職員が拠(よ)り所としている金子宏著・「租税法」は、著者が行った東大法学部における講義ノートをベースにしたものという(同書、初版の序より)。法律学講座双書として、弘文堂から刊行されている中の一冊で、昭和51(1976)年に初版が発行されて以来版を重ね、現在に至っている。私の手許にあるのは、平成25(2013)年4月15日発行の第18版第1刷である。1000ページを超える分厚い本だ。
このたび本稿を書き進めていくために、改めて該当個所を読み直してみた。同書、第5編租税処罰法(P.921~P.941)である。
まず、租税犯の類型について次のような分類がなされている。
(a) 逋脱犯(狭義の脱税犯)
(b) 申告書不提出犯
(c) 間接脱税犯
(d) 不納付犯
(e) 滞納処分免税犯
(2) 租税危害犯
(a) 虚偽申告犯
(b) 単純無申告犯
(c) 不徴収犯
(d) 検査拒否犯
(e) その他
上記のうち、現在の査察Gメンが目を光らせているのは、もっぱら(1)脱税犯のうちの(a)逋脱犯(狭義の脱税犯。10年以下の懲役)である。
平成23年6月の法改正によって新たに租税犯として追加された、
もまた、査察Gメンのテリトリーに入るであろうが、この新しい犯罪類型は、納税申告書を提出していないことを犯罪構成要件としているので、申告さえしていれば全く関係のない犯罪である。
つまりこの申告書不提出犯は、逋脱犯(狭義の脱税犯)とは異なり、故意に確定申告書を法定期限までに提出しないことによって成立するもので、犯罪構成要件がいたってシンプルである。「偽りその他不正の行為」とか「税を免れたこと」といった複雑な構成要件とは無縁だからだ。税務弁護人として税理士が介入する余地がほとんどないといっていい。
従って、ここでは狭義の脱税犯とされている逋脱犯(上記の(1)の(a))についてのみ検討を加えることとする。該当するのは、同書のP.922~P.924のわずか3ページである。
まず逋脱犯の定義である。
これは、所得税法、法人税法、相続税法、消費税法それぞれの罰則の条文の枝葉を切り落した骨格であり、逋脱犯の定義として間違ってはいない。
問題が生ずるのはこれからだ。引用されている判例が全てデタラメなものだからである。
犯罪構成要件の一つである、
の意義について、著者はいきなり判例を持ち出してくる。最高裁大法廷の判例である。
次に著書が引用するのは次の判例だ。
更に、積極的な偽計工作を伴わない過少申告であっても、「偽りその他不正の行為」にあたるとした判例が引用されている。いわゆる“ことさら判決”と言われている有名な判例で、脱税事件の判決文にしばしば登場するものだ。
私自身の脱税裁判においても、本件である査察事件は無罪とされたものの、別件である引当金の戻し益の益金不算入と貸倒損失の当否とが、この“ことさら判決”を根拠として有罪にされたいわくつきのものである。
この点については、日本の税法学を学問として確立・展開された故北野弘久教授に第一審判決で有罪とされた部分が誤っていることについての鑑定意見書を作成していただいた(「冤罪を創る人々」(3)上告審)上に、北野先生の主著・「税法学原論」(第六版)-青林書院で取り上げていただいている(同書、第六版に寄せて-P.ⅲ、P.525~P.526)。
ここで北野先生から、
と断定していただいたことが、このたび私自身の手で全く別の観点から追認することができる幸せをかみしめている。私の有罪判決が誤っていたこと、即ち冤罪であったことが、動かし難い客観的な根拠(後述)をもって証明できたからである。
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ここで一句。
(“保守本流 カネ・カネ・カネのゲ集団”-ゲ集団(ゲンパツ利権集団のこと。「美味しんぼ」の原作者雁屋哲氏の造語)
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