国税マフィアの闇-号外

“小僧じゃだめだ、黒幕を呼べ”



 かねてから安倍政権を痛烈に批判してきた夕刊紙「日刊ゲンダイ」(平成27年8月4日号)の一面に躍った大見出しである。

 ここで使いパシリの小僧と切り捨てられたのは、礒崎陽輔総理補佐官のことだ。

 この人物、公衆の面前で

「考えないといけないのは、この国を守るために必要な措置かどうかだ。法的安定性なんて関係ない。」

と言い放ったことから火がつき、マスメディアだけでなく、国会の場でも大きく取り上げられることになった。法治国家そのものを否定しかねない言辞であるだけに当然のことだ。

「きょう(3日)午後、参院の安保法制特別委員会で、「法的安定性を軽んじる妄言を吐いた礒崎陽輔首相補佐官(57)が参考人として招致されたが、民主党以下の野党が勝ち取った質疑時間はたった15分のみ。
 こんな短時間の追及で安倍自民党は“みそぎ”を済ませたというポーズを取り、野党もあす以降の集中審議をあっさり了承。安保関連法案の成立に向け、「また一歩、前進」なのだから、バカみたいな話だ。

 

  ………………

(礒崎の)発言を素直に解釈すれば、「国を守ることは、憲法に勝る」ということを意味する。
 それでは、礒崎が現行憲法以上に「守りたい国」とは何なのか。そこにこそ、安倍首相たちがもくろむ「国家改造計画」の薄暗い魂胆が潜んでいる。野党がその真相に切り込まなければ、礒崎の参考人招致など茶番も茶番、単なる“ガス抜き”に利用されただけだ。」

(前掲「日刊ゲンダイ」より)

 「日刊ゲンダイ」は、安倍晋三総理が麻生太郎副総理とコンビを組んで押し進めている現在の安倍内閣のデタラメなやり方に対し、真正面から批判しつづけている数少ないマスメディアの一つである。有力マスコミの中では唯一の存在と言っていい。
 さきに長々と引用した記事は、私を含めた多くの国民が抱いている憂慮を、分かり易く代弁したものとして評価できるが、2つだけ現状認識において誤っていることがある。

 一つは、礒崎総理補佐官を、単なる“使いパシリの小僧”としていることだ。
 確かにこの人物、57歳と年齢は若いが、決して使いパシリなどではない。経歴から明らかなように、私が「国税マフィア」と指弾した古谷一之内閣官房副長官補と同じ東京大学法学部出身のキャリア官僚であり、平成18年7月に退官するまで、各種法案の作成に関与してきた人物だ。
 古谷一之内閣官房副長官補を「国税マフィア」とするならば、礒崎陽輔総理補佐官は、さしずめ「安保マフィア」といったところであろう。小僧どころか、この人物こそ黒幕そのものだ。

 二つは、「日刊ゲンダイ」が黒幕と考えている「日本会議」についてである。
 この日本会議、会長はあの平沼赳夫衆議院議員だ。養父は平沼騏一郎A級戦犯。戦前の天皇制を隠れ蓑にした軍国主義を下支えしたのが、「思想検察」と称される暴力装置だ。この「思想検察」のトップに君臨したのが平沼騏一郎、暴力装置のドンである。
 日本会議の会長である平沼赳夫氏は、その怪しげな言動をみていると養父平沼騏一郎の生まれかわりと言っていい。昭和天皇が人間宣言において明確に否定された現人神(あらひとがみ)を今なお信じ続け、「国体の護持」を叫びつづけているからだ。
 この日本会議のメンバーは、政界だけでも280人の国会議員が名を連ねている。よく見ると、自民党だけではない。野党、特に民主党の幹部がかなり加わっている。
 「日刊ゲンダイ」が

「野党がその真相(山根注。日本会議の実態のこと)に切り込まなければ、礒崎の参考人招致など茶番も茶番、単なる“ガス抜き”に利用されただけだ。」

と言っているが、最大野党である民主党の複数の幹部が日本会議のメンバーであることから、そもそも野党が

“その真相に切り込む”

ことなどできるハズがない。民主党は、国民の手前、ハンタイ、ハンタイと叫んではいても、かつての55年体制下の社会党と同様に、裏で自民党としっかり手を組んでいるのではないか。
 民主党最後の内閣である野田佳彦内閣が、官僚組織の手の平に乗せられて、自民党とベッタリであったことの延長である。

(この項終り)

 ―― ―― ―― ―― ――
 ここで一句。

”門限のある猫なのか急いでる” -東京、白川裕子

 

(毎日新聞、平成27年8月10日付、仲畑流万能川柳より)

(そりゃ門限があるのでしょう。決してハラが減ったからではない。)

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