修正申告の落とし穴-⑩

 これまで述べてきたように、修正申告には数多くの問題点が潜んでおり、納税者にとって一筋縄でいくものではない。

 修正申告の落とし穴に嵌(はま)らないためにはどうしたらいいのか、以下それを述べることによって本稿を締めることにする。



 まず、通常の税務調査の場合。

 従来は慣行的に行なわれていた税務手続が、国税通則法の中に「国税の調査」として組み込まれて、手続きの概要が明確化されることになった。

 法で定められたしかるべき調査手続が終了し、問題点が認められた場合には、担当調査官は調査結果の内容を納税者に対して説明しなければならないことになった。脱漏の内容・金額だけでなく、その理由をも明示することが義務付けられた。

 この場合、法文上は単に「説明」とだけあって、書面の交付まで義務付けてはいない。このことをもって、調査担当者は、調査結果の内容を読み上げるにとどめ、納税者が必要とするならば、書き写すように促すことが多い。従来も、料調の場合は、ほとんどが書き写しをさせていた。

 調査結果の内容は、少なくともA4版で数枚、場合によったら数十枚にも及ぶ量となる。書き写せと言われても、写すだけでも大変な作業だ。時間のロスである。納税者はコピーを要求し、担当調査官はそれに応じるべきである。

 実は、この点に関連して、このたびの改正で質問検査権の拡充がなされている。従来は、単に納税義務者等に対して質問し、帳簿書類などの物件(これを当該物件という)を検査する権限にとどまっていたが、法改正によって、当該物件の提示、あるいは提出までも求めることができることになり、しかも、そのコピーをとる権限まで加わったのである。

 納税者に対しては、帳簿書類、証憑類、契約書など洗いざらい提出することを義務付け、いかなる機密文書であろうともコピーさせることを受忍させているのである。

 これに対して、そのような行為の結果得られた調査結果について、納税者にそのコピーを許さないというのでは均衡を欠くというものだ。税務当局に課税権があるならば、納税者にはそれに対する防御権がある。共に憲法による要請だ。

 この点は、法改正によって、「書面により」調査結果を説明するものとする、に変更すべきだ。ただ、改正されるまでは、実務上の取扱いとして書面を交付して説明するようにすべきである。書面によって説明したからと言って税務当局にとって何ら不都合なことはないし、常日頃から、納税者の協力が不可欠であると喧伝しているだけに尚更である。

 調査結果の説明を受け、修正申告の勧奨をされたら、個別的な内容について、何が問題なのか疑問点を詳しく問い質すことだ。
 その際、推計計算の有無と不正認定の理由については特段の注意が必要だ。
 ことに不正認定については、その金額の多寡が調査担当者の勤務評価に影響するらしく、なんでもかんでも不正認定しようとする傾向がある。納税者にとっては迷惑千万な話だ。
 尚、不正認定と重加認定(仮装・隠蔽)とを調査現場では同一視しているが、この2つは明らかに違った概念である。仮装・隠蔽については個別通達が出されてはいるものの、相当以上に曖昧模糊とした部分があるので、注意が必要である。
 要は、「脱税ストーリー」の水ぶくれ部分を削り、安易な重加認定(不正認定)をさせないことに尽きる。

 次に、査察調査の場合。
 査察調査の場合には、これまで通り、調査結果の説明など法律的には義務付けられていない。ただ、「納税者へのサービスの一環として」、調査結果の説明をし、修正申告の意志確認をすることになったそうである(「脱税は犯罪ではなかった-7」参照)。脱漏金額の明細が文書の形で交付され、調査結果の説明と、修正申告の意思確認を受けた旨を認める文書に自署捺印を求めることになったという。査察官が心にもない納税者サービスなど口走るのは、まさにブラック・ジョークの世界だ。

 この場合、査察官の指示通りに、署名捺印をして、その控を受けとっておくだけでよい。
 注意すべきことは、修正申告の意思確認だ。もともと、国税当局が持ちかけてくる修正申告は更正(課税処分)を前提としたものであり、査察調査によっては更正ができないものである以上、修正申告ということ自体査察官が決して口にしてはいけないことだ。従って無視すればいいだけの話だ。
 詳しい理由は別稿に譲るが、ここはひとまず査察の言う通りに従えばよい。つまり、

「一部脱漏は認め、それに対しては法的な支払義務に応ずる用意がある。しかし、調査結果の通りの形での修正申告はできない。」

といった意思表示をすればよい。水ぶくれをした部分まで認める必要はないからだ。

 この段階で、査察官は自ら仕掛けたワナに嵌(はま)ったことになる。自ら行ってきた一連の行為が違法であることを自白したに等しいことになるからだ。犯罪を証明する立場にある査察官が、文書という物的証拠を嫌疑者に交付することによって、犯罪が成立しないことを証明することになるからだ。
 何故このように言えるのか、「脱税は犯罪ではなかった1~7」をお読みになった方には理解していただけるはずである。

(この項おわり)

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 ここで一句。

“ベートーベン?一夜でキモいおっさんに” -日立、けまたん

(毎日新聞、平成26年3月6日付、仲畑流万能川柳より)

(ホントウにキモイ?騒いでいるほとんどの大手マスメディアは一体何?一皮むけばキモイどころか、国家国民を弄(もてあそ)び、食いものにしているのでは?社会の木鐸(ぼくたく)今いずこ。)

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