クレーマー・橋下徹氏の本性-⑦

 これまで私は、橋下徹氏の所論について、2つの疑問点を指摘した。

 三つ目の疑問点は以下の橋下氏の発言についてである。



 問題とされた週刊朝日が発売されたのが、平成24年10月16日(火)。その2日後の18日(木)に、橋下氏は午後の定例会見で次のような発言をしている。

+人格を否定する証拠として先祖や縁戚を徹底的に暴いていく、その考え方自体を問題にしている。

+どこどこ地域が被差別かどうかを明らかにするのは、日本社会においては認められていない。

 上記の2点は共に明らかに誤っている。

 まず第一点について。
 これについてはすでに述べた通り(「クレーマー・橋下徹氏の本性-号外 」参照)、「橋下氏の出自を根拠にその人格を否定するという誤った考え」(「人権委見解」参照)など、佐野氏の第一回目の記事のどこからも導き出されてはこない。橋下氏の一方的な思い込みにすぎないものだ。
 人権委見解は、

「出自が人格と何らかの関連を有することがあり得るとしても、それは人格を形成する非常に多くの要因の一つにすぎないのであって、決定的要因とはなり得ないものである。出自と人格を強く関連付ける考えは、人間の主体的な尊厳性を見失っており、人間理解として誤っているばかりか、危険な考えでもある」

と述べているが、あるいはこのような考え方が橋下氏の発言の前提となっているのかもしれない。
 たしかに、言われてみればその通りである。そのこと自体何ら間違ってはいない。しかし、敢えて繰り返すが、佐野氏の記事からそのような「危険な考え」を導き出すことはできないのである。

 次に第二点について。
 橋下氏のこの発言は明らかに誤っている。この人物、本当に弁護士の資格を持っているのか疑わしくなってくるほどだ。しかも、任期の途中で辞職したとはいえ、4年近くも大阪府知事をつとめ、その後大阪市長に転じて現在まで1年ほど市長の要職にある。大阪の実情、ことに同和問題について知らないはずはない
 それどころではない。府知事に当選した年の8月に、部落解放同盟大阪府連との会合(「橋下徹 – Wikipedia」参照)の席上、

「同和問題の解決へ、残り任期の3年半、真正面から取り組みたい。いわゆる同和地区で育ってきた。都道府県の知事のなかで同和問題について一番知り尽くしていると自負している。」

と述べたとされており、同和問題については全国の知事のなかでも誰よりもよく知っていると豪語しているのである。
 ならば橋下氏に問いかけたい。あなたは本当に、被差別地域を公表することが認められていないなどと思っているのか。
 かつて33年間にわたって、国の施策として同和対策事業が推進され、累計で15兆円もの国費が投入されてきた。このような特別措置が実施されるためには、対象地域が明確に指定されなければならない。国費を投入する以上当然のことだ。過疎地対策とか離島対策なども同様で、対象地域が指定され、公示される。
 大阪市の同和対策事業については、社団法人大阪市人権協会(旧大阪市同和事業促進協議会)がその任にあたり、大阪市の同和地区の一覧表の提示と特定の場所又は地域が同和地区であることの教示をしている。

 大阪市とか大阪府の同和地区の一覧表は、「50年のあゆみ」(大阪市人権協会、平成15年)と「大阪の同和事業と解放運動」(解放出版社、昭和52年)の中に掲載されており、現在誰でも図書館で閲覧したり、複写したりできるという(「大阪府の同和地区一覧 – Google マップ」)。
 筆者は、上記2冊について確認してはいないが、当り前といえば当り前のことだ。かつて15兆円もの血税が投入された事業が秘密のベールに閉ざされていい訳がないからだ。
 そもそも、同和対策事業そのものが、特定地域の人々の人権侵害一般を救済するためのものではなかったのではないか。
 劣悪な居住環境、ことに社会的インフラの未整備を是正することを主な目的になされた特別措置ではなかったのか。敢えて人権を取り上げるとすれば、日本国憲法第25条の国民の生存権、国の生存権保障義務、つまり、
+すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
+国は、すべての生活部面において、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
とする規定にかかるものであり、それ以上のものではなかったのではないか。
 被差別部落問題がタブー視される余り、この国民の生存権と国の生存権保障義務が拡大解釈され、人権侵害一般へとエスカレートしていったのではないか。
 同和利権で成り上がった特別な人達がいたり、あるいは、エセ同和行為が跋扈したのは、このような人権問題の巧みなスリ換えによるものではなかったか。
 いずれにせよ、橋下徹氏が、

「どこどこ地域が被差別かどうかを明らかにするのは、日本社会においては認められていない。」

というのは嘘っぱちである。芸能タレントして口から出まかせを言って視聴率稼ぎに協力するのは勝手であるが、弁護士、ましてや政治に携わる公人の発言としてはいただけない。

(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。

“世界史の捏造現場目撃中” -東京、権助爺

 

(毎日新聞、平成24年11月17日付、仲畑流万能川柳より)

(世界史でも日本史でも。)

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