「悪徳税理士」の弁-⑥

 設立以来、一度も税務申告をしていない。帳票類は全て破棄している。モグリの税理士がこの会社をトンネルにして、別会社を利用して消費税の不正還付を行った形跡がある。代表者が行方をくらまして、この会社が無申告なのは、消費税の不正還付がバレないためと受けとられても仕方がない。その上に、この会社の代表者とモグリ税理士とが取り交わした“脱税作戦”と受けとられかねない文書がでてきた。法人の預金はゼロ、個人のタマリは1億数千万円。

 これだけの条件が揃えば、課税当局としては大いばりで「推計課税」ができる。それだけではない。無申告であったことについて、不正の認定をすることも十分可能である。脱漏所得が告発基準を超えるようであれば刑事告発の可能性が浮上し、告発基準以下であったとしても、仮装・隠ぺいの事実があったとして重加算税の対象となりうる。
 齋藤義典税理士は、私に送りつけた文書の中で、不正認定とか重加認定について何やらグダグダと御託を並べて悦に入っているが噴飯ものだ。この人物は、不正認定とか、重加認定について、どこかのテキストから借用したものをそのまま持ち出しているようであるが、税務当局から鼻先であしらわれるのがオチである。そのようなものは税務実務の上で何の役にも立たない。
 実務での要(かなめ)は、不正認定、重加認定そのものではない。大切なのは、それらの前提となる具体的な事実認定だ。事実認定をきっちりとしていくと、不正認定、重加認定が自ずから外れていくことが多いのである。

 不正認定にせよ、重加認定にせよ、明確で客観的な基準は存在しない。曖昧模糊としたシロモノで、サジ加減一つでどうとでもなる。これらについての判例も極めていいかげんなもので、判例など実務的にはある程度参考にできればいいほうである。
 つまり、これらの認定は国税当局の判断でどうにでもできるということだ。その判断に対して文句をつけたとしても、コンニャク問答となるのが関の山だ。どのような判断であろうとも、違法であるとすることは至難の技である。コンニャク問答から脱却するために必要なのは、前述した厳格な事実認定である。
 これらの認定が違法となるのは唯一つ。認定の根拠となった証拠が捏造された場合だ。税務の実務においては、このような証拠の捏造が日常茶飯事だ。ウソのようなホントの話である。捏造が当然のことのように行われているので、国税当局も納税者の代理人として対峙する税理士も気が付かないか、もしくは気が付かないフリをしている。感覚が麻痺しているのである。

 証拠の捏造。厚生労働省の村木厚子氏の事件でのフロッピー・ディスクの改竄、小沢一郎氏の裁判における数々の供述調書とか捜査報告書の捏造など、このところ検察官による証拠の捏造が世間的に話題となっているが、税務調査の現場では当たり前のこととして堂々と行われているのである。
 査察調査では、「質問てん末書」と「査察官調査報告書」が捏造され、料調では、納税者に書かせる「一筆」とか「質疑応答書」が捏造される。いずれも、刑事告発をちらつかせて、脅し上げ、あるいは、刑事告発をしないことをエサに利益誘導して、事実ではないことを“供述”させるのである。予め用意されている「脱税ストーリー」に沿って、重要な証拠が捏造されるということだ。

 私が最近扱った査察案件は7件である。その内訳は次の通り(平成24年7月10日現在)。
***1.告発されて刑事事件となっているもの。3件。
+東京国税局(法人税、所得税)1件
+大阪国税局(相続税)1件
+広島国税局(所得税)1件
***2.摘発(ガサ入れ)されたものの、告発が見送られたもの。1件
+東京国税局(法人税、所得税)1件
***3.摘発(ガサ入れ)され査察調査が進行中のもの。3件
+東京国税局(法人税、所得税)1件
+東京国税局(法人税)1件
+大阪国税局(法人税)1件
 上記の7件いずれも証拠が捏造されている。1.の刑事事件として進行中の裁判は3件ともマンガである。検察官も裁判官も無知・無能をさらけ出してトンチンカンな発言に終始し、冤罪を創るのに余念がない。2.の告発が見送られたのは、私に証拠の捏造を見破られた結果、告発ができなくなったものであり、3.の進行中のものも全て証拠の捏造がなされているので、早晩告発見送りとなる公算が大である。現在行われている査察が、見込み捜査のオンパレードであることから、当然の結果であるとも言えようか。これら7件の全てについて、今回の依頼者と同様の契約を結んでいることを付言する。

(この項つづく)

***<追記>
 査察調査について、1.の刑事事件に移行している3件のうち1件は、現時点(平成24年8月14日)までに上告が棄却され、有罪が確定した。広島国税局による証拠の捏造を含む、驚くべき査察の実態が明らかになったことから、無罪判決を求めて再審請求を行なう予定である。尚、この件に関しては課税処分にかかる不服申立てを別途行なっており、課税処分の取消が近くなされる見込みである。3.の進行中の3件のうち1件は、現時点で告発見送りとなり、差押物件の全てが返却された。査察調査の中止である。

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。

“審判にイエローカード出せたらな” -京田辺、茶ップリン

(毎日新聞、平成24年7月5日付、仲畑流万能川柳より)

(査察に対してレッドカード!!)

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