マルサ(査察)は、今-①-東京国税局査察部、証拠捏造と恐喝・詐欺の現場から

***1.はじめに

 暴力集団としてのマルサ(査察)の襲撃を受けたのが平成5年9月、今から19年前のことである。その後私は巨額脱税事件(「冤罪を創る人々」参照)の主犯として松江地検に逮捕され、刑事被告人として刑事法廷の場に引きずり出された。手錠、腰縄姿を公衆の面前にさらされた屈辱は、今なお鮮明な記憶として残っており、脳裡を去ることはない。

 延々と続いた法廷闘争の末、マルサ事件で無罪をかち取った私は、職業会計人として奇跡的に復活した。有資格者が一人だけという会計事務所で、マルサの洗礼を受けながら崩壊することなく生き残ったのは、他にはないはずだ。運が良かったとしか言いようがない。

 TKCの創設者、飯塚毅氏は国税の陰湿なイジメに逢い、私と同様に会計事務所崩壊の危機に直面した一人である。その後見事に立ち直り、TKCという巨大な職業会計人集団を創り上げたのは衆知である。

 しかし、いわゆる「飯塚事件」は税理士法違反事件であり、マルサ事件ではない。しかも、逮捕されたのは事務所の職員であって、飯塚氏本人ではない。有資格者で事務所の代表である飯塚氏は逮捕もされていなければ、刑事被告人になることもなかった。この点、私のケースと一見似ているものの、全く異なるものだ。

 暴力集団のマルサから、暴力集団の上部組織である検察に引き継がれ、刑事被告人の烙印を押されるに至ったいきさつについては、すでに『冤罪を創る人々』で詳述した。
 職業会計人として復活した私のもとには、全国から多くの声が寄せられた。中でも、同じような事件に遭遇し、悩んでいる人達の声は切実であった。
 マルサ、あるいはマルサもどきの犯罪捜査を強行する資料調査課の調査(俗にリョウチョウという)、これら徴税権力によって傍若無人に蹂躙(じゅうりん)された人達の声は悲鳴に近いものであった。
 とりわけ、この半年ほどの間は、マルサと料調に関する相談件数が著増している。そのほとんどが、脱税でもないのに脱税と決めつけられて脅されていたり、一部脱税の事実はあるものの、その何倍もの金額をふっかけられていた。国家権力による恐喝である。
 相談者の多くは百戦錬磨の企業経営者である。少々のことで動揺するような人達ではない。このような人達が心配のあまり、夜も眠れない状況に陥っているのである。
 何故か? 暴力集団に逮捕をチラつかされて恐喝されているからだ。マルサも料調も、脱税の摘発を目的としている。つまり、恐喝されている人達は、脱税の嫌疑者であり、犯罪捜査の対象になっているからだ。ことに、マルサの場合には、強制調査の初日に犯則嫌疑者である旨を告知し、マルサの仕事は検察に告発することであると明言するのが通例である。
 私の場合(「冤罪を創る人々-強制調査初日-平成5年9月28日(火)」参照)、直接の担当者であった藤原孝行査察官(現、広島北税務署、法人課税第二部門、統括調査官)が、開口一番、腕まくりをして、すごむように私に宣言したものである。国家公認のヤクザがタンカを切ったのである。

「さあ、料調の調査(リョウチョウ)は本日をもっておわり、これから国税犯則法による強制調査に移る。
 山根とは最低三ヶ月、長ければ半年以上つきあうことになる。自分が直接の担当者として、ことにあたる。自分の仕事は検察に告発することだ。今日は夜遅くなると思うので、じっくりつきあってもらおうか。」

 これまで相談を受けたマルサ事件は、私のケースと同様に、理不尽で無理筋なものが多かった。そのほとんどが、敢えて刑事事件にまで持っていくほどのものではなかった。なんとか直接査察部門と交渉して告発を見送り、通常の税務調査に切り換えてもらうべく努力したが全て徒労であった。話し合いを求めても、直接の担当者が出てくることはなかった。査察部門の上司が出てきて、

「話だけは一応聞きおく」

といった御座なりな対応であり、それ以上の展開はなかったのである。

 ところがこの度、はからずもマルサ担当者と直接面談するチャンスが訪れた。嫌疑者に対して、告発を見送る見返りとして、修正申告の要請(修正申告の慫慂(しょうよう))がなされ、私が嫌疑者の税務代理人を引き受けたからだ。
 修正申告の慫慂といっても、マルサが提示した修正内容に対して交渉する余地はない。単に言われた通りに修正申告書に記入して提出すればよいというものだ。自白の強要である。更には、素直に修正に応じなければ告発するといった脅しがついていた。恐喝である。
 嫌疑者は予め通告された修正金額と修正の理由、処分について納得していない。大幅な水増しがなされているからだ。私の推計では4倍以上の水増しだ。仮にこのまま言われるがままに修正申告に応じたとしても、本当に告発が見送りになる保証はない。不正所得が告発基準を超えているからだ。
 いずれにせよ、具体的な修正内容が判らないことには話が始まらない。私は修正内容の交渉をするためではなく、取り敢えずマルサが提示する具体的な修正内容(慫慂)の詳細を把握するために、担当査察官に会うことになった。

 私に向けられた徴税権力による犯罪行為は19年前のことであった。ところが今なお、手をかえ品をかえて同様の犯罪行為が、法治国家日本において繰り返されている。
 ここに東京国税局査察部の犯罪行為を抉摘(けってき)する。公務として犯罪行為に手を染めた人物については、これまでと同様に敢えて実名を開示する。『マルサ(査察)は、今』と題した所以(ゆえん)である。

(この項つづく)

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 ここで一句。

“ご自宅のママから電話ですと秘書” -勝浦、ナメロー

(毎日新聞、平成24年4月13日付、仲畑流万能川柳より)

(別宅のママは? もしやこの秘書、会社のママ?)

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