原発とは何か?-⑲
- 2011.11.29
- 山根治blog
このテーマで、あと10回位書く予定であったが、中断することにした。現在、東京電力に関して余りにも理不尽で怪しげなことが進行中であり、取り急ぎその問題点を明らかにする必要があると考えたからだ。
東京電力に関する理不尽なこととは何か。怪しげなこととは何か。それは、何がなんでも東京電力を救済するスキームが実行に移されようとしていることだ。
東京電力救済スキームが、偽りの決算書(平成23年3月期)を前提にして作成され、閣議決定を経て、今年の8月3日に、法律(原子力損害賠償支援機構法-以下、支援機構法という)が成立した。一ト月ほどの茶番劇のような国会審議の末に出来上がった法律だ。ゴマカシである。
このような法律を適用して、東京電力を救済しようというのである。支援機構というトンネル組織を通じて、国は税金で、国民は電力料を負担することによって、ゾンビのような死に体の東京電力(自ら、継続企業の前提に重大な疑義ありと表明!!)に際限なく金を注入しようとする工作だ。しかもこの会社、トンデモない放射能汚染を惹き起し、日本だけでなく全世界に対して多大な迷惑をかけた“加害企業”であることを忘れてはいけない。
このまま放っておくと、今後30年以上の長きにわたって、50兆円はゆうに超える国民の金が、放射能をまき散らした倒産状態の一民間企業に理不尽に注ぎ込まれることになる。
では、この救済スキームが強行されようとしていることについては、何が問題であるか?理不尽なこととは一体何か?
3つある。
一つは、支援機構法を東京電力に適用することは違法の疑いが極めて強いことである。「原発とは何か?-16」で述べた通りだ。
二つは、このままであれば、東京電力の3.11原発事故の救済が一つの前例となり、今後、全ての原発事故に適用されかねないことだ。原発事故が野放し状態になるのである。
三つは、東京電力をはじめ全国全ての電力会社が、原発を運営するにあたって全くの無責任状態に置かれることだ。これまでも、経営者のモラル・ハザード(職業倫理の欠如)によって無責任経営が続いてきたが、今後は法律上、無責任経営がいわば制度化されることになるからだ。
現在の原子力損害賠償に関する法律(原賠法)においては、原発事故の賠償金について、国が全てをカバーできるようには規定されていない。一定のワクが設定されており、そのワクを超えないように、電力会社は常に緊張感を抱いて原発の運営にあたることが求められている。
そのワクがなくなってしまうのである。
あとは野となれ、たとえどのような重大な事故(シビア・アクシデント)が起ろうとも、誰も責任をとらなくても構わなくなるのである。
昨日(平成23年11月28日)、原発についての勉強会で、
と題して話をした。私が、この5ヶ月余り追ってきた原発問題についての一応の結論をとりまとめたものである。ただ昨日は、“その心余りて、言葉足らず”(古今和歌集、仮名序。紀貫之)、十分に意を尽すことができなかった。
近く、テープ起しをした上で、大幅に加筆訂正してネット上で公開する予定である。
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ここで一句。
(そうです。”法律ムラ“の、”法律ムラ“による、”法律ムラ“のためのゲームです。)
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