原発とは何か?-⑱
- 2011.11.22
- 山根治blog
下川辺委員会が発足した前後とそれ以降の経緯を辿ってみると次のようになっている。
+平成23年5月10日、東京電力からの支援要請。
+同日、海江田万里経済被害担当大臣(当時)、大臣書簡によって1.確認。
+平成23年5月13日、上記1.及び2.を受けて、政府は東京電力に対する支援を行うことを関係閣僚会合で決定。
+平成23年5月24日、上記3.の決定と同様の東京電力救済スキームを閣議決定。
+同日、下川辺委員会の設置を閣議決定。
+平成23年6月10日、下川辺委員会のタスクフォース(TF)及び同事務局(TF事務局)設置。
+平成23年6月16日、第1回下川辺委員会開催。
+平成23年6月24日、第2回下川辺委員会開催。
+平成23年7月28日、第3回下川辺委員会開催。
+平成23年8月18日、第4回下川辺委員会開催。
+平成23年8月24日、第5回下川辺委員会開催。
+平成23年9月6日、第6回下川辺委員会開催。
+平成23年9月12日、第7回下川辺委員会開催。
+平成23年9月20日、第8回下川辺委員会開催。
+平成23年10月3日、下川辺委員会報告書提出(最終報告書)。
以上の時系列を吟味してみると、ポイントが4つあることが判る。
第一のポイントは、東京電力救済スキームを政府が閣議決定したと同時に、下川辺委員会が設置されていることだ。このことは、東京電力救済スキームを忠実に実行することを前提として同委員会が設置されたことを示唆する。5.の「東京電力に関する経営・財務調査委員会の開催について」と題する閣議決定の同委員会開催の趣旨説明(委員会報告別紙11ページ)から判明することだ。
つまり、この救済スキームの骨子である、
ことを前提とした調査をすることが、下川辺委員会に課せられていたのではないかということだ。
そうであるとすれば、何のことはない。東京電力はいかなる時点でも債務超過にはなりえないことが初めから定められていたことになる。
委員会報告は、わざわざ基準日(平成23年3月末日)を設定した上で、資産・負債の洗い直しを行なっているのであるが、基準日における財務状況は絶対に債務超過になってはいけなかったのである。財務状況の洗い直しをする前から、一定の結論(つまり、債務超過ではないこと)が決まっていたということだ。私が前回(「原発とは何か?-⑰」)財務状況の評価が恣意的な評価であり、ヤラセ報告であると述べたのは以上のことを念頭に置いていたからだ。
財務関係のデュー・デリ(デュー・デリジェンス。委員会報告(10ページ)によれば、”本格的“かつ”厳正な“資産評価だそうである。)を担当したのは、有限責任監査法人トーマツだ(14ページ)。トーマツもとんだピエロ役を演じさせられたものである。
監査法人トーマツが行った業務は、公認会計士法の2項業務(同法2条第2項)といわれるもので、1項業務(同法2条第1項)とは異なり、会計士の独占業務ではない。会計士の資格がなくても誰でも自由にできるものだ。
従って、この業務を行う上で遵守しなければならない規則などは存在しない。依頼者の意向に応じて調査をし、報告をすればよい。
しかし、一般人ならばともかく、いやしくも公認会計士あるいは監査法人の名のもとで業務を行なうのであれば、依頼者の言うがままに調査をしていい訳がない。法律とか規則に縛られなくとも、会計人としての職業倫理があるはずだ。職業会計人のプライドと言ってもいいかもしれない。
ちなみに、デュー・デリなるもの、企業買収(M&A)の際に必ずといっていいほど登場する。多くの場合、法律事務所と会計事務所とがタッグ・マッチを組んで行っているが、ほとんどの場合、初めに結論ありき、つまり買収価格が決ってから後にもっともらしい屁理屈をつけている。ヤラセである。
3年程前、第一三共製薬が、インドの製薬大手のランバクシー社を5,000億円前後で買収したところ、一年も経たないうちにランバクシー社の株価が暴落し、第一三共製薬は3,600億円前後の損失をこうむったことがある。
私は、ランバクシー社のアニュアル・レポート(日本の有価証券報告書に相当するもの)をネットから引っ張り出して分析してみた。その結果、5,000億円という買収価格が大幅な水増しであることが判明した。つまり、第一三共製薬は、財務内容が虫食い状態の会社(ランバクシー社)を高いお金を出して買い取っていたのである。買収価格を算定したデュー・デリがいいかげんなものであったということだ。
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ここで一句。
(何を?)