原発とは何か?-⑰

 怪しげな東京電力の救済スキーム、虚偽記載の有価証券報告書、虚偽の監査証明、-これらの中核にあるのが50年前に成立した原賠法であり、スキーム全体がまやかしであることを私に確信せしめたのが東京電力に関する経営・財務調査委員会(下川辺和彦委員長。以下、下川辺委員会という)による呆(あき)れはてた委員会報告(以下、委員会報告という)であった。



 この委員会報告、本文で167ページ、別紙として54ページという分厚いものだ。もっともらしい体裁をとってはいるが、噴飯物だ。

 何故か。

 基準日(平成23年3月末日)現在の財務状況に、恣意的としか言いようのない修正を施して、「実態貸借対照表」なるものを作成し、それを委員会報告のベースに置いているからだ。

委員会報告は、

平成23年3月末連結純資産1兆6,025億円に対し、前記の評価対象範囲及び評価基準に基づいて調整を実施した3月末の実態連結純資産は1兆2,922億円と試算された」(84ページ)

として、
+実態純資産調整表(84ページ)
+実態貸借対照表(87ページ)
を示している。

 ところが1.の調整表の後に驚くべきようなことが記されている。それは「留意事項」として記されているもので、

「TF(タクスフォース)事務局は、実態純資産を把握するにあたって、以下を前提とした」

として、4つの前提事項が掲げられている(85ページ)。4つともに怪しげなものではあるが、とりわけ怪しげな前提は最初に掲げられている次のものだ。

「支援機構法成立後、東電が実施する損害賠償債務の支払に充てるための資金は、支援機構法第41条第1項第1号の支援機構が東電に対して資金交付により援助を行うことで、同額の収益認識が行われるとの前提を置いた上で、調整後連結純資産には、既に発生した原子力損害賠償費(第1四半期3,977億円)の他今後計上すべき原子力損害賠償引当金についても反映をさせない前提で作成している。」(85ページ)

 つまり、福島第1原発事故による損害賠償金については、基準日(平成23年3月末日)においては全く計上しないというのである。
 その理由としては、基準日より後に成立(平成23年8月3日)した支援機構法によって、いくら原子力損害賠償金が発生しようとも、全て支援機構が援助してくれるから、としている。

 平成23年3月期有価証券報告書では、原子力損害賠償金を計上しない理由として、
+偶発債務であるからとか
+後発事象であるから
として事実に反する偽りの理由を掲げていた。
 それをこのたびの委員会報告は、基準日より4ヶ月も後に成立した支援機構法の遡及規定(同法附則第3条)があることを奇貨として、子供騙しに等しい屁理屈を繰り出している。何をかいわんやである。
 さすがに気が咎めたであろうか、

「上記実態連結純資産の試算は、支援機構が資金交付により損害賠償債務の支払原資を供給することが前提になっているため、このような前提を置いて実態連結純資産の試算を行うべきかどうかについては議論がありうるところであり、その結論も踏まえた検討も必要である。」(109ページ)

などと言い訳めいた言辞を弄している始末である。

(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。

“首かしげネコが見ている猫まんま” -白石、よねづ徹夜

(毎日新聞、平成23年10月28日付、仲畑流万能川柳より)

(マックがおふくろの味と思っている子供の如し。)

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