原発とは何か?-⑭

 東京電力は、原発事故の原因について、事故直後しばらくの間、「異常に巨大な天災地変」(原賠法第3条ただし書)、具体的には想定外の津波によるものであると主張していた。東京電力に事故責任がなく、損害賠償義務が存在しないことを言いたかったのであろう。東京電力が本気でそのように思っていたのか、あるいは、ただし書の適用などありえないことを承知の上で敢えてそれを言い募っていたのか定かではない。

 私は、原賠法第3条ただし書に該当しないことを初めから承知した上で、ひたすら東京電力を守るために、つまり、できるだけ東京電力に有利にことが運ぶように敢えて言い張っていたものと考えている。

 いずれにせよ、現時点で明らかになっていることは、平成23年3月30日の時点で、東京電力自身がそのような主張を事実上撤回していることだ。勝俣恒久会長が、3.11事故のあと、はじめて記者会見に応じ、『福島第一原発の1号機から4号機については客観的に見ると廃炉にせざるを得ない』ことを明らかにすると共に、『放射性物質の拡散によるさまざまな損害に対して、国の原子力損害賠償制度に基づいて、補償に向けた準備を進める』ことを言明しているからだ(「東電会長が会見で陳謝、1~4号機廃炉を明言-読売新聞」「東電会長 1~4号機は廃炉へ-NHKニュース」参照)。
 更に、3.11の原発事故から一ヶ月後の平成23年4月11日に「原子力損害賠償紛争審査会」(以下、審査会という)が設置されている。この審査会は、原賠法第18条の規定にもとづいて、文部科学省に置かれたもので、原賠法第3条の本則を前提とするものである。つまり、この時点で、原賠法の所轄官庁である文部科学省は、3.11の原発事故による原子力損害は原賠法第3条ただし書の「異常に巨大な天災地変」によって生じたものではないと認定していることになる。
 加えて、2ヶ月後の平成23年5月10日には東京電力自らが「異常に巨大な天災地変」、つまり免責の主張を撤回し、損害賠償について無過失、無限責任を文書によって認めている。
 この文書、東京電力の清水正孝社長が、「原子力損害賠償に係る国の支援のお願い」として海江田万里・原子力経済被害担当大臣宛に提出したものだ。
 この支援要請文書は、
+東京電力を『原子力損害の原因者である』と位置付けた上で、
+『原賠法に基づく補償を実施することとし、そのための準備を進めてきております』とし、
+賠償金支払い以外の『資金面で早晩立ちゆかなくなり、被害を受けられた皆さまへの公正かつ迅速な補償に影響を与えるおそれがあるばかりでなく、電気の安定供給に支障をきたすおそれもあります』として、
+政府に対して、『原賠法第16条に基づく国の援助の枠組みを策定』すること
を要請している。

 このうち、1.、2.及び4.は、このたびの原発事故が、「異常に巨大な天災地変」によるものではなく、通常想定されうる地震、津波、もしくは安全対策の不備あるいは作業ミスによるものであったことを東京電力自らが正式な文書で認めたことを示すものだ。
 尚、3.の賠償金支払い以外の資金の面で早晩立ちゆかなくなる、というのは偽りだ。前回(「原発とは何か?-⑬」参照)述べたところである。

 以上を踏まえて、平成23年3月末の2兆円超の現金預金と、その原資の大半である1兆9,650億円が期末日の緊急融資によるものであったことの意味合いを考えてみよう。
 結論を言えば、期末日に1兆9,650億円もの緊急融資を受けて、同日の現金預金の残高を2兆円超に積み上げなければならない積極的な理由が何ら見いだせないということだ。融資を受ける目的だけでなく、緊急性も見出し難いのである。
 するとどうなるか。2兆円超の現金預金は単なる「見せ金」であったことになるのではないか。決算期末といえば東京電力の株価が事故前の5分の1の水準にまで暴落し、企業破綻が現実味を帯びていた時だ。そのような時に、日本を代表する大手銀行8行が揃って1兆9,650億円もの融資を無担保かつ無保証で応じてくれた。東京電力が絶対に経営破綻に陥ることはない何よりの証である。-
 このことを具体的に示すために、2兆円近くの金を株式の相互持ち合い(東京電力が各銀行の大株主であると同時に、各銀行が東京電力の大株主であること)と商取引上の優越的な立場を背景にして、それぞれの銀行から強引にかき集め、そっくりそのまま期末の現金預金として積み上げたものではなかったか。財務状態が毀損していないことを演出するための、いわばデモンストレーションである。

(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。

“注文に応じて答えだす学者” -さいたま、影無。

 

(毎日新聞、平成23年9月9日付、仲畑流万能川柳より)

(原発学者、他に政府の審議会に加わっているほとんど全ての学者。曲学阿世の御用学者。)

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