400年に一度のチャンス -18

***18.公務員人件費の削減⑤-マクロ経済に与える影響②

 前回述べたようなプロセスによって、ワーキング・プア層(貧民、ポーパー)が消滅するならば、どうなるか。1,000万人の金食い虫集団から1,700万人のワーキング・プア層へと国富の成果配分を変更することによって、日本経済全体としてはどのようになっていくのか。つまり、マクロ経済に与える影響はどうなるのかについて考える。



 まず、消費支出について。60兆円のうち34兆円の富が金食い虫集団からワーキング・プア層に移転する場合、消費支出の増減は、それぞれの消費性向の大きさに左右される。

 これまで食うや食わずの生活を送り、貯蓄する余裕のなかった人々(ワーキング・プア層)と、満ち足りた生活を満喫した上で持ち家を確保し、余剰分をせっせと貯蓄にまわしていた人々(パブリック・セクター)。後者から前者に大幅な富の移転がなされることによって、少なくともこれまで後者の貯蓄に回されていた分の一部と冗費支出の大半に相当する金額が前者の消費支出に充当されるものと考えられる。とすれば、両者合わせて2,700万人の消費性向は、後者の貯蓄が減り、前者の消費が増加した分だけアップする。

 つまり、国全体としてみるならば、消費支出は増大し、国民所得にプラスに作用する。

 日本における個人の貯蓄額は1,400兆円と、世界に類をみない水準の高さである。これは、日本人の堅実な生活志向によるところが大であるとされているが、一面で、1,700万人のワーキング・プア層の犠牲の結果でもあるといえようか。

 次に、投資支出について。60兆円の余剰金のうちワーキング・プア層に34兆円を優先的に配分しても、26兆円の余剰金が残る。年26兆円の財源の裏付けがあれば、10年国債としてその10倍の260兆円の新規発行が可能である。もっともこれは経済計算の上で可能であるにとどまることから、現実には財政に係る関連法案の改正が必要であることは言うまでもない。与野党が一体となって取り組めば実現可能である。

 260兆円の財源のうち160兆円を、このたびの大震災の復興と原発事故の後始末、更には、電力供給網の一元化、つまり50ヘルツと60ヘルツに分断されている電力供給網を、EU統合時に行われたように一つに統一することに回したり、あるいは原子力に替わるエネルギー開発に回したりすればよい。
 この160兆円は投資支出そのものであるので、仮に乗数効果を1.6とするならば、256兆円(=160兆円×1.6)の投資支出が数年のうちで実現する。これまた先の消費支出の増加と同様に国民所得にはプラスに作用する。

 残る財源は100兆円である。この財源をもとにして、医療・年金制度の抜本的な改革に取り組めばよい。これまでは、一部の利益集団(たとえば、医師会、公務員など)に振り回されて、改革という名の一時しのぎの弥縫(びほう)策でゴマカしてきた。とくに、新自由主義の立場から断行された小泉改革は、改革という名の破壊であった。これを1億3,000万人の国民の目線で抜本的に見直すのである。ゼロベースでそれぞれの制度設計を実施するということだ。100兆円の財源をバックにすれば十分に実現可能である。
 この100兆円は、国民所得には中立、もしくはプラスに作用する。

(この項つづく)

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 ここで一句。

“国営か民営なのか政党は” -神戸、芋粥

(毎日新聞、平成23年5月7日付、仲畑流万能川柳より)

(いずれにせよ、単なる営利集団。)

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