『疑惑のダム事業4,600億円』-八ッ場ダムの費用対効果(B/C)について -号外1

 コメントNo.1745について。



 引用文の筆者は長尚氏。

 1934年生まれ。長野市在住。工学博士。九州大学卒業後、1958年旧国鉄に入社、主に東海道新幹線建設に従事。1965年旧国鉄退社後、助教授として信州大学工学部へ。1971年同大学教授。1999年信州大学工学部を定年退職。専門は土木工学で構造設計学を主とする。社会・経済・政治問題についても現職時代から提言をしてきた。八ッ場ダムについて特に詳しいわけではないが、マスコミ報道やインターネット情報をもとに論述した。

-以上は長氏がホームページで自ら明らかにしていることである。

 長氏の記事「八ッ場ダム建設中止問題について」に目を通した感想は次の通り。

1.長氏の論述の最大の欠陥は、検討すべき情報の選び方が間違っていることである。長氏が検討の対象にしている情報は、
+民主党のマニュフェストと前原国交大臣の一連の発言。
+保坂展人前衆議院議員のブログ記事。
+まさのあつ子氏(ジャーナリスト)のブログ記事。
+週刊朝日(10月15日)の保坂展人氏の記事。
+信濃毎日新聞(10月27日付)の厚田大祐氏(渓流防災研究所代表)の記事。
+裁判所の判決文(6月26日)。
の6つである。
 長氏が引用している1.~6.の言い分を読む限り、それらが必ずしも間違っているとは思われない。しかし、間違っていると極めつけることができないと同時に、長氏が言うように「科学的な根拠」が具体的に示されている訳でもない。この点に関しては長氏の指摘の通りである。なかでも長氏が鬼の首でも取ったかのように得意そうに持ち出している6.の裁判所の判決文は、従来から国交省が主張している単なる役人の屁理屈を追認しただけのもので、一つの意見であり主張であるにすぎない。これこそ、長氏の言葉を借りれば為にする議論の典型だ。
 つまり、長氏の論述を含めて、八ッ場ダムの是非については立場を変えれば、どのようにでも言えるのである。
 何故か。それぞれの論点の的が外れているからだ。長氏の批判的な論述自体もピントがズレており、的外れであるということである。

2.では八ッ場ダム問題の本質とは何か。
 それは土木工学に関することでもなければ環境に関することでもない。治水・利水の是非に関することでもない。ましてや、一部地元の人々が騒いでいるような個別的な利害得失に関することでもない。
 ズバリ言えば国の財政問題だ。具体的には財政支出の優先順位の問題である。

 日本には1億3,000万人の国民がおり、それぞれが全国各地で極めて多様な生き方をしており、国の施策に対する要望も様々である。国民の意見・要望を幅広くくみ上げて国政に反映する役割を持っているのが時の政権だ。政権が打ち出す政策の具体的表現が国の歳入歳出予算である。
 自民党の政権、なかんずく小泉純一郎氏が主導した政権の時代に、日本の借金はうなぎのぼりに膨れ上がり、今や1,000兆円を超えるまでになった。政官業の癒着を背景にしたバラマキ行政のツケである。ごく一部の利権集団が自民党の長期政権と一緒になって日本国の富を占奪した結果である。
 弱者を容赦なく切り捨てていった小泉政権をターニングポイントとして、かつては一億総中流とまで言われた日本が大きく変化した。年収が200万円以下のワーキング・プア層が年々増大するに至り、貧富の格差が顕著になった。
 このたびの政権交代は以上の反省に立って、国民が従来の自民党的手法にノーを突きつけた結果であると言ってよい。自民党よ、いいかげんにしないか、といったところであろう。

(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。

“議員さん 前・元職名 好きらしい” -木更津、潮ひかり。

(毎日新聞、平成21年12月6日付、仲畑流万能川柳より)

(サルは木から落ちてもサル。議員は落ちたら何もできない。せめて肩書きだけでも…。)

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