『疑惑のダム事業4,600億円』-八ッ場ダムの費用対効果(B/C)について -3

***Ⅳ.計算プロセスにおけるインチキの実態



 Ⅱの6.の年平均被害軽減期待額(B2の便益)のゴマカシの実態は、2つの確率が操作手段として使われていることに加えて、B2の便益を計算する上で、1/57のところで勝手に線引きをして、それ以下(1/3、1/5、1/10、1/30、1/50、1/57)のB2の便益を切り捨てていることだ。

+まず、マニュアルでは2種類の確率が用いられている。一つは、流量規模にかかる「超過確率」、今一つは、区間平均被害軽減額にかかる「区間確率」である。
 マニュアルにおいてはこの2つの確率について具体的な計算式が示されていないが、開示されている実際の計算プロセスを吟味する限り、確率計算の名に値しないゴマカシである可能性が大である。ちなみに、これまで実際の計算プロセスを辿ってみたのは、八ッ場ダム建設事業と、7,000億円の斐伊川治水事業(*10 「粉飾された2兆円」)の2つであるが、共に同じような理解しがたい計算がなされている。
+次に、B2の便益の計算にあたって恣意的に計算結果の一部分が切り捨てられていることである。このような操作は、当然のことながらマニュアルには示されておらず、明らかな誤りである。水害被害想定額について水増しに水増しを重ねた結果、最終的なB/Cの値が余りにも大きくなりすぎたために、数値を抑えるために、小細工を施したものと思われる。

***Ⅴ.結論

 八ッ場ダムのB/Cの値3.4はインチキであり、マニュアル通り計算すれば基準値の1を大きく下回ることが確実であると想定される。

 その理由は次の通り。
+過大な洪水(高水-たかみず)予測と、それに基づく過大な水害被害の予測(Ⅲで詳述)。
+水害被害額の算定にあたって、積算単価が過大であること。ことに、家屋と家庭用品については、再調達価格によることとされている(マニュアル)が、被害額の時価を算定する上では経年による減耗が考慮されていないことから、不適切であり、誤りである。
+計算上の操作
++誤った確率計算(Ⅳで詳述)。
++マニュアルによらない恣意的な計算の操作(Ⅳで詳述)。

(この項つづく)

***<出典>
*10 『粉飾された2兆円』山根治blog
http://forest-consultants.com/subcatid/42

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。

“どの件で 怒ってるのか 黙る妻” -都城、西博隆。

 

(毎日新聞、平成21年10月25日付、仲畑流万能川柳より)

(対抗策-沈黙は金。うかつに喋れば薮へびだ。)

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