100年に1度のチャンス -17
- 2009.02.10
- 山根治blog
前回述べましたように、現在用いられているGDPそのものが極めていいかげんなシロモノで、一国の経済実態を必ずしも正確には反映していない、それどころか誤ったメッセージを発する困ったシロモノなのですが、一歩譲って、経済指標として信頼に足るものと仮定して話を進めます。
実体経済を論ずるとき必ずと言っていいほど持ち出されるのがGDP(国内総生産)であり、その伸び率である経済成長率です。つまり、GDPがプラスになるのかマイナスになるのか。プラスであれば何%のプラス、マイナスであれば何%のマイナス、といったもっともらしい議論が大まじめになされています。その際、成長率がプラス、しかもより大きなプラスであることが望ましく、マイナスになることは望ましくない、といったことが当然の前提とされているようです。しかも、マイナスの成長率が0.1%とか0.5%でも大変なことなのに、マイナスの2%とか、5%、あるいは10%ともなると日本の経済は壊滅的な打撃を受け、日本は沈没してしまうといった騒ぎ方です。
本当にそうでしょうか。経済の成長が止ったり、マイナスに転じたりすることは本当に悪いことなのでしょうか。私は必ずしもそうは思いません。何故、成長が止ったのか、あるいは何故成長がマイナスに転じたのか、その原因によっては、プラスにならなかったこと自体がかえって望ましい場合もあるのではないかということです。
たしかに、事業計画を予算に頼っている行政当局は、成長率がマイナスになると税収が減って予算規模が減少し、計画していた事業が予定通りできなくなります。また、多くの企業にとっても売上が減り、利益も減るということになれば、生き残っていくためには、なりふり構わずに対策に走り回ることになります。ともにそれぞれの立場からすれば困ったことであり、深刻なことかもしれません。中には、万策尽きて倒産とか破産に至る企業とか個人も出てくるでしょう。
しかし、日本全体で見た場合はどうでしょうか。あるいは、1億3千万人の日本国民の立場からはどうなのでしょうか。
まず、日本国の純資産は2,716兆円であり、個人の資産の中でも金融資産が1,467兆円もあることを思い起して下さい。収入(GDP)にしても現在の水準は、全ての国民が「健康で文化的な最低限度の生活」(日本国憲法、第25条)を維持するレベルをはるかに超えています。従って収入(GDP)に関して、1%とか2%、あるいは10%位減少しても何も大騒ぎして慌てることはないのです。全体として見れば成長がマイナスになったからといって、ほとんど問題はなく、日本の国も国民も直ちに路頭に迷うことなどないからです。
ただ、個別に見れば生活に困る人達が多くなることは避けられないでしょう。職を失う人、母子家庭、高齢者、あるいは病気を患っていて働くことができない人、これらのいわば社会的弱者については当然のことながら直ちに応分の手当てをしなければなりません。富の不均衡を是正しその再配分を適切に行なう必要があり、それこそ政治の重要な役割です。2兆円もバラまくお金があるのであれば、それこそこのような社会的弱者に優先的に配分すべきでしょう。
ちなみに、現在メディアで毎日のように大騒ぎしている派遣労働者の失業とか、福祉あるいは医療に関するトラブルの表面化は、歴代の自民党政権の失政(しっせい。政治上の失敗)、なかでも小泉「改革」の失政の結果です。決して今回の金融危機のせいではありません。改革という錦の御旗のもとに、郵政民営化を強引におしすすめたり、公共工事だけでなく福祉・医療の予算を無定見にバッサリ切り捨てたツケがまわってきているだけのことです。明確な羅針盤を用意しないで制度をいじくり回した結果であって、当然予測されたことです。小泉「改革」が正しい指針を欠いたインチキ施策であることについては、すでに三年余り前に、「郵政民営化 -2つのゴマカシ」において具体的に指摘しました。失業など、失政の結果として発生した富の不均衡を是正するのは、為政者(いせいしゃ。政治の要路にあって、一国の政治を思うがままに動かすことの出来る人-新明解国語辞典)として直ちになすべき責務です。この責務を等閑(なおざり)にして、政権与党の選挙目当てとしか考えようのない2兆円のバラマキなど、以(もっ)ての外です。
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ここで一句。
(選挙対策であることが見え見えの2兆円のバラマキを強行したり、金融サミットでIMFへの10兆円の拠出を気前よく約束してきたりと、経済と外交を売りにして得意顔の日本国のボス。サル山ではボスどころか、子分ザルとしても生き残ることさえできなかったりして。)
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