100年に1度のチャンス -3
- 2008.11.04
- 山根治blog
この1,000兆円、一体どうなったのでしょうか。
まず、イラク戦争の500兆円について。
この500兆円の大半は、アメリカを中心とする欧米の軍需産業に流れたことは明らかです。お金の流れはこの通りですが、「モノ」についてはどうでしょうか。戦争という破壊行為ですから、イラク戦争に投入された多くの「モノ」は、イラクのインフラを壊し、多くの人々を殺したり傷つけたりするためだけに費消されており、単なるムダ使いを通り越して、イラク国民に多大な害悪を及ぼしたことは厳然たる事実です。
軍需産業の売上高に占めるモノの費消割合を60%と仮定すれば、石油をはじめとする資源(モノ)の費消は、
-300兆円(500兆円×0.6=300兆円)
となり、残りの200兆円は、軍需産業を中心とした関係者がフトコロにしたことになります。
次に、金融危機の500兆円について。
これは単なるマネー・ゲームによるものですから、この損失に相当する額は、すでに誰かが利益として手に入れていることになります。つまり、インチキ賭博の胴元であるアメリカの会社をはじめ、一緒になってインチキ商品を売りつけた各国の金融機関、それに忘れてならないのは、サブプライム・ローンなどを借りていた多くのアメリカの国民が、この500兆円の利益をすでにフトコロに入れているということです。
つまり、偽りの金融商品を創り上げて全世界に売りまくったアメリカの金融機関とか、いい加減なランク付けを行った格付会社、あるいは、金融商品にいい加減な保証を行った信用保証会社は、一連の詐欺グループですから加害者であることははっきりしています。ところが、それらの金融商品をニセモノとは知らずに買い込んでしまった人達については、手許に残っている部分については損失が生じていますので被害者であると言えるでしょうが、しかし、すでに手許から離れ、それなりの利益を手にしている部分については不当な利益が生じていますので、単純に被害者であると言えなくなります。サブプライム・ローンなどを借りていた多くのアメリカ人についても同様です。ローン返済ができずに、せっかく手に入れた住宅を手離さざるを得なくなったり、生活が破綻したりした点では被害者ですが、しかし、そもそも収入に見合わない高額な買い物を借入金で行ったこと自体不相応な便益の先取りですし、中には、住宅価格が上昇し続けるのに対応して、評価の上がった分だけローンの積み増しをしてキャッシュを手に入れ、それをもとに車とか家電製品などの高額消費財を購入したり、旅行などの遊興費にまわしていた向きもあったというのです。これなど消費というより濫費、あるいは浪費とも言えるもので、不相応な便益の先取、つまり不当な利益を手にしていたと言えるでしょう。このような観点からすれば、これらアメリカの低所得者とされる人達も又、被害者であると同時に加害者であると言えるでしょう。
これと似たような構造を持っているのがネズミ講(無限連鎖講)です。ネズミ講の騙しのシステムを思いついて実行に移した胴元が一番のワルであることは当然ですが、子-孫-ヒ孫と枝が広がっていくにつれて、不当な利益を手にする額が減っていき、つれて損失をこうむる確率が次第に高まり、ネズミ算的な広がりが限界に達した段階で、システム自体が破綻し、末端の多くの人が損害をこうむるのです。胴元とそれに近い人達は、巨額の不当な利益を手に入れることができるのに対して、末端に行くに従って手にする利益(配当)より、払込金の方が大きくなるといった図式です。受け取る配当金と払込金が等しくなる時点のメンバーを境にして、それより末端に連なるメンバーは、配当金を受けて不当利益を確保していると同時に、受け取った配当金が払込金に達しない金額だけの損失をこうむっていますので、システムが崩壊したとたんに、その損害額は確定することになり、この時点で、その人より末端のメンバーからの配当金を受けている点では加害者ですし、損害額が生じている点では被害者であるということです。
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ここで一句。
(アメリカの、アメリカによる、アメリカのためのグローバル・スタンダード。“グローバル、 サブ・プライムで ボロを出し” 。)
【参考】 グローバル・スタンダードに関する過去の記事 「碩学の警鐘 -1」「碩学の警鐘 -2」「ホリエモンの錬金術 -20」
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