ライブドア監査人の逮捕 5

 ライブドアと堀江貴文氏が上場以来、会社の決算とお金に関して監査人を交えて演じた、ドタバタ劇について、ザッと振り返ってみますと次にようになります。ここでは、ライブドアの内部関係者である二人の人物がそれぞれ出版した本の記述といくつかの客観的な事実をもとにまとめることにいたします。それぞれの本は、

+宮内亮治「虚構-堀江と私とライブドア」(講談社、2007年3月)

+田中慎一「ライブドア監査人の告白」(ダイヤモンド社、2006年5月)

の二冊です。以下、1.を“虚構”、2.を“告白”と呼ぶことにします。

二冊とも自己弁護のオン・パレードですが、しかし、内部にいた者しか語れないことがあけすけに曝(さら)け出されています。ことに税理士の資格をもっている宮内氏は、ファイナンス部門と称するインチキ工作をした中核部署の責任者でしたし、ライブドアの決算全般をまとめる中心人物でもありましたので、自己弁護部分を差引いてみますと、生々しい現場の声が響いてきます。また、前回までにしばしば取り上げてきた公認会計士の田中慎一氏は、会計士協会からこの本の出版によってライブドアの秘密を暴露したことで懲戒処分を受けているほどですから、これまた自己弁護部分を差し引いてみますと、ライブドアと監査人とがドタバタした生の姿が浮かび上がってきます。

***<ライブドアの決算とお金をめぐるドタバタ劇1>

(1) ライブドア(山根注:当時の社名はオン・ザ・エッヂです)には、上場当時、これといった核になる事業がなく、まともな事業を育て上げる人材もいませんでした。

“(上場)当時のオン・ザ・エッヂは、ウェブ制作とその管理を細々とやっていたに過ぎない。事業の幹と言えば幹ではあるが、規模が小さいし、成長スピードが遅い。(“虚構”、P.24)
“上場は果たしていたものの、まともな事業を育てることができなかったし、育てるだけの人材がいなかった。”(“虚構”、P.25)
“ライブドアに核となるような事業がないという自覚は堀江にはあり、”(“虚構”、P.25)
“プロ野球進出で名前は売れたが、ライブドアに本業と呼べるほどのものはなかった。”(“虚構”、P.26)

(2) 上場のときに手に入れた60億円の大半をファイナンス部門に投入しています。その結果、

“ライブドアはファイナンス部門の活躍で売り上げと利益の「右肩上がり」を演出することができた。”(“虚構”、P.30)
“2003年9月期をベンチャー投資の「益出し」で乗り切った堀江は、2004年9月期をさらなる「右肩上がり」の演出で株価を上げ、時価総額を大きくし飛躍させる方針だった。”(“虚構”、P.34~P.35)

(3) ライブドアは株価をつり上げるために、数々の奇策を連発します。

“2003年11月には株式の100分割を発表、…しかし、こんなトリッキーな手法が本当の企業価値の向上につながらないことは、我々だって承知している。ただ、話題性は株価を押し上げたし、一時的にせよ膨んだ株式時価総額はM&Aの役に立った。”(“虚構”、P.35)

(4) 会社が発表する決算については、上場以来毎期のように、

   1. “利益の先食い”(“虚構”、P.30、P.32)
       ― 将来見込まれる利益を早めに計上することです。

   2. “利益の付け替え”(“虚構”、P.28、P.183、P.188)
       ― グループ会社の間で利益をキャッチボールすることです。

   3. “バックデイト”(“虚構”、P.148)
       ― 契約書などの日付を勝手にさかのぼらせることです。

   4. “スルー取引”(“告白”、P.50)
       ― 商品を伝票の上で右から左に流しただけの取引のことです。

   5. “Uターン取引”(“告白”、P.50)
       ― 商品がいくつかの取引先を経由して元に戻ってくる取引のことです。

   6. “錬金術スキーム”(“告白”、P.157)
       ― いくつかの投資事業組合を立ち上げて違法な利益操作をすることです。

など、様々なインチキ手法を使って、“辻褄合わせのような決算”(“虚構”、P.151)をしていたといいます。なかでも、2.の“利益の付け替え”については”社内で恒常的に行われる“(“虚構”、P.188)ものでしたし、6.の“錬金術スキーム”については、“それまでもさんざん悪用されていた”(“告白”、P.169)もので、毎期のようにインチキを繰り返していた実態が当事者の口から明らかにされています。
 かつて、国会の場で、鈴木宗男議員を追及していた辻元清美議員が、鈴木氏を指して“疑惑の総合商社”と言い放ったことがありました。この伝でいえば、ライブドアはさしずめ“粉飾の総合商社”と言えるかもしれませんね。これが、かつて評論家の竹村健一氏が、堀江貴文氏と共著まで出版(「世界一の金持になってみろ!」)して絶賛してやまなかったライブドアという会社の実態です。(「ホリエモンの錬金術-19」)

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 ここで一句。

“豆まきの 晩からカミさん 出たまんま” -静岡、呂久。

(毎日新聞、平成20年2月22日号より)

(鬼は外。同日付でもう一句。“鬼の面 外した方が 怖い顔”-大分、ママサンバ。)

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