174 続・いじめの構図 -18

****その18)

 東京税理士会が、「税理士法違反の非違行為は濃厚」と認定した根拠は何か。人を犯罪人扱いにして、当然の権利である税理士登録を阻止しようとするからには、明確な根拠が必要なことは言うまでもない。

 しかし、明確な根拠など、そもそもあり得ない。存在するはずがないのである。この3年間、違反になるような税理士業務を全くやっていないからだ。私は当事者であるから、私自身が一番よく知っている。税務代理はもちろんのこと、税務書類の作成あるいは作成の指示を一切していないし、税務以外の用件がある場合でもこの三年間は極力顧客との接触を避けていたのである。

かつて、広島国税局のマルサが、国家権力を背景にして、組織を挙げて私を日本一の脱税犯に仕立て上げたのであるが、所詮デッチ上げであるから、根拠など用意できるはずがなかったのと同断である。
 とはいえ、国税当局の意を受けた東京税理士会がどのようなゴマカシをしているのか興味があった。インチキの具体的内容を把握しておきたかったのである。万一の場合にそなえて、つまり、M氏の見込みが外れて、1月20日過ぎまでに登録が完了せず、審査請求に移行した場合にそなえて予め把握しておく必要性があったのだ。

 私の問いかけに対して、M委員長は次のように答えた。

『その根拠は、関係者から聴取した調書だ。関係者とは、税理士法人の代表であるK会計士と、その後の税理士業務を引き継いだY会計士の二人である。』

 K会計士とY会計士に対してどのような事業聴取がなされたのか、細部については承知していないものの、二人の会計士それぞれから事前に概略の報告は受けていた。この件に関しては、単なる税理士登録の可否にとどまらず、国税当局と税理士会がタッグマッチを組んで、なんとしてでも私を税理士法違反の廉(かど)で告発しようと躍起になっていただけに無関心ではおれなかったのである。
 私がこの二人の会計士に特にお願いしたことはただ一つ、ありのままの事実だけを話すことであった。理詰めの誘導尋問など一切無視して、仮に多少理屈に合わないことがあったとしても、そのようなことは気にすることなく、過去の事実をそのままの形で喋って欲しいと念を押したのである。
 これは、私が11年前に逮捕され拘置所に閉じ込められた状態のもとで、40日に及ぶ検事からの執拗な誘導尋問を受けながらも、創り上げられたインチキ・ストーリーに迎合することなく、断固としてありのままの事実を押し通したことが無罪の判決に結びついた経験からくる知恵である。
 税理士法人の主宰者であるK会計士は、私の件で相当以上に東京国税局から脅され、結果、当局の意を受ける形で法人の松江事務所を閉鎖せざるを得なくなったことは事実である。しかし、私はK会計士の人となりをよく知っているつもりであり、私を貶(おとし)めようとする国税当局のインチキ・ストーリーに易々と乗るはずがない。私の要請を無視して、過去の事実以外の偽りのストーリーを話しているはずがないのである。Y会計士も同様だ。
 M委員長は、東京税理士会が、この二人の話にどのような細工をして私の税理士法違反に結びつけたのかまでは明らかにしなかった。思うに、かつての私の冤罪事件における、検察の論告求刑と同じようなものであろう。論理矛盾・自家撞着のオンパレードで中学生の綴り方以下のシロモノであった、検事の作文の域を出るものではないだろう。(“冤罪を創る人々”「第四章 権力としての検察-暴力装置の実態」「三. 公判の現場から」「(1) 第一審」P.120~P.132を参照のこと)。

 東京税理士会が、税理士法人の主宰者であるK会計士と税理士法人の後を引き受けて税理士業務を行ったY会計士の二名に対して事情聴取を行ない、報告書には、それぞれからの聴取書(ききとりしょ)が添付されていた。
 私は更にM委員長に、この2人以外の人物の事情聴取の有無について尋ねた。
 M氏は報告書をめくって確認した上で、この二人以外に事情聴取のなされた形跡がないことを私に申し向けた。報告書には、二人以外の聴取書が添付されていないというのである。
 私は今更ながら驚きを禁じえなかった。肝腎要(かんじんかなめ)の人物が抜けていたからだ。初めに結論ありき、国税当局とその意を受けた連中のインチキ工作の実態がいよいよ明白になってきたのである。

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