ホリエモンの弁解術 -10

 自称為替ディーラーのX氏が持ち込んできた、怪しげなビジネスモデルと、ホリエモン流のインチキ商法とはいくつかの点でよく似ています。



 まず第一に、双方ともまともな収益の源泉が欠けていることです。どのような仕事であれ、キチンとした収益の源泉があるものでなければホンモノとは言えません。ともかくお金が自分と仲間内に入ってくればよいというのでは、どのようにもっともらしく理屈づけされていたとしても、空しいものであり、ホンモノの域に入ることはできないでしょう。適当な屁理屈をつけて、カネを右から左へと転がしているだけのことで、社会にプラスを与えることがないからです。

 堀江さんが、実現する可能性がほとんどない事業計画をデッチ上げて上場時の株式の評価額をフーセンのように膨らませたこと、上場後に赤字会社を次から次へと買収して、連結ベースの事業規模を見せかけだけ膨らませたこと、100分割という破天荒な株式分割をして株価を吊り上げたこと、創り上げられた架空ともいえる時価をもとに時価発行増資を敢行したこと、これらは全て、まともな収益を生み出すものとは言えません。堀江さんの一連の“事業”が、ネズミ講に擬せられる所以(ゆえん)です。

 自称為替ディーラー氏が持ち出してきたビジネスモデルも同様です。事業計画の実現可能性をはじめから不問に付して、投資しようというのですから、まともな形での収益の源泉がないことになります。つまり、お金を投下することによって、新しく生み出される利益は仮にあったとしても、真っ当な事業利益ではないことになり、社会に貢献するところに欠けているのです。

 第二に、双方とも白日のもとにさらされたら困るような、うしろめたいところがあることです。つまり、ホンネをバラされたら困るということです。
 堀江さんについて言えば、宮内亮治氏以下の3人(ホリエモンの弁解術-8)に加えて、上場請負人と称する怪しげな人物とか節操に欠ける証券会社などがグルになって、できもしないインチキ事業計画をデッチ上げ、証券市場を騙したことを手始めにして、上場直後から決算書にあれこれと細工をしては会社の実態にお化粧をほどこし(つまり、粉飾ということです)、株式分割を悪用しては株価を操作しているのですが、これらは全て、そのプロセスの詳細があからさまになった場合には、単に道義的に批難されるにとどまらず、犯罪となるおそれがあるのです。
 為替ディーラーX氏のケースでも、さしずめ2つの点においてうしろめたいところがあります。
 一つは、ファンドの資金の出し手に対する説明に偽りがあるおそれがあることです。ファンドの資金運用にあたって、よもや、運用先の会社の経営者の経歴とか人物像が不明であるとか、あるいは事業見込みは紙の上の計算数字に過ぎないとか言わないでしょう。あからさまにホンネを漏らしたら、それこそ資金を出す人などいなくなるからです。ベンチャー企業に対する投資ですから、リスキーなものであるという抽象的な説明はなされるのでしょうが、それはあくまで後日の責任逃れのための形だけのものでしょう。
 二つは、リスクヘッジのために組み込まれている保険について、保険契約時において偽りがなされるおそれがあることです。つまり、契約に際して上に記したようなホンネの説明がなされるとすれば、まともな保険会社であれば、保険の引受をしないと考えられるからです。

 以上のように、
+まともな収益の源泉が存在しないこと、
+他人を欺こうとするゴマカシがあること、
このようなニセモノのビジネスを持ち歩いているのは、何もこの2人に限ったものではありません。

“石川や浜の真砂(まさご)は尽きぬとも、世に盗人(ぬすびと)の種は尽きまじ”

ではありませんが、手をかえ品をかえて様々な盗人が出てくるものですね。前回紹介した週刊ダイヤモンドの記事は、さしずめ株式市場をわがもの顔にして跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する盗人(ぬすびと)特集といったところでしょうか。堀江さんがかつて、外人記者クラブで、

“気をつけないと悪い人に騙されちゃいますよ、ハ、ハ、ハ”

と言い放ったのは、余り出来栄えのよくないブラックジョークでした。
(この項終り)

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 ここで一句。

“真夜中のテレビで騒ぐキリ芸人” -豊中、テレビっ子。

 

(毎日新聞、平成19年4月30日号より)

(このごろ巷(ちまた)で騒ぐもの、にわか成金、キリ芸人。)

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