160 続・いじめの構図 -4
- 2007.03.06
- 引かれ者の小唄
****その4)
坂本昭雄氏と小川正義氏の二人が、私を摘発するためのインチキ捜査の現場責任者であった。それぞれ、広島国税局税理士監理官、広島東税務署税理士専門官という肩書きを持っている。税理士監理官と税理士専門官は、各国税局管内に置かれている税理士のお目付け役とも言えるポストであり、同時にニセ税理士を告発する役割をも担っている。
税理士の登録が抹消されてからは、一切の税理士業務は税理士法人に移譲し、違法行為は全くやっていないと弁明する私に対して、この二人は耳を疑うようなトンデモない言いがかりを繰(く)り出してきた。
決算書、つまり貸借対照表とか損益計算書などのことである。通常、財務書類とか財務諸表と言っている。
確かに、私が代表者となっていた株式会社山根総合事務所は、会社の業務として記帳代行をし、決算書の作成(正確には財務書類の作成代行、あるいは調整)をしている。しかしこれらは税理士の独占業務でもなんでもない。誰がやっても構わないものだ。それを税理士法違反であると決めつけてきた。
当初、二人がジョークを言っているのではないかと思っていた。しかし、ジョークではなかった。何やら書類をチラつかせながら真顔で迫ってくるのである。完全な恫しである。私の前にいたのは、公務員の肩書を持つ二人のヤクザであった。
しぶしぶながら二人は、手に持っていた数枚綴りの書類を私に提示した。私は目を疑った。それはなんとも驚くべきもので、にわかには信じ難いものであった。このように珍妙なシロモノを眼の前にして、好奇心の塊である私が放っておく訳がない。しぶる二人を強引に説き伏せて、この書類をコピーした。私のコレクションに加えるためだ。30年来集めている、国税当局の作成になる、数多くのインチキ資料の中でも、超一級品である。これまた、さきのインチキ聴取書と同様に、刑法第258条に規定する「公務所の用に供する文書」、つまり公用文書ではないのか。まさに、インチキ文書のオンパレードである。
私に呈示されたのは、“税理士法第2条第1項第2号に規定されている「法令の規定に基づき」作成される書類の法的根拠一覧”と題する書類であった。なんだかゴチャゴチャとして分かりづらいが、要するに、税理士以外の者が作成してはならない書類、いわば税理士の独占書類のことである。「ニセ税理士」という犯罪を構成する重要な要件となるものだ。
確かにその3番目に種別として決算報告書と記されており、書類名として
+貸借対照表
+損益計算書
+製造原価報告書
+完成工事原価報告書
+販売費及び一般管理費明細書
+利益処分(損失処理)計算書
の6つが明記されている。
4番目には種別として勘定科目内訳明細書と記されており、書類名として
+預貯金等の内訳書
+受取手形の内訳書
+売掛金(未収入金)の内訳書
+仮払金(前渡金)、貸付金及び受取利息の内訳書
+棚卸資産の内訳書
+有価証券の内訳書
+固定資産の内訳書
+支払手形の内訳書
+買掛金(未払金、未払費用)の内訳書
+仮受金(前受金、預り金)、源泉所得税預り金の内訳書
+借入金及び支払手形の内訳書
+役員報酬手当等及び人件費の内訳書
+地代家賃等、工業所有権等の内訳書
+雑益、雑損失等の内訳書
の14の書類が明記されている。これを根拠に私を恫していることが判った。
それらは共に、法人税法第74条、法人税法施行規則第35条を根拠規定としている旨、記されていた。更には何を血迷ったのか、証券取引法に関する省令である「財務諸表規則」まで根拠規定として持ってきている。衆知のように、財務省令(現在は内閣府令)である財務諸表規則は、上場企業のようなごく一部の大会社にのみ適用されるもので、会計事務所の主なクライアントである一般の中小企業には関係ないものだ。しかも、上場会社等に適用されるといっても、税務とは関係がない。何でもいいから、もっともらしい法令をかき集めてきた、といったところであろうか。牽強付会(けんきょうふかい)である。
ちなみに、法人税法第74条は、その第1項で、決算期末の2月以内に確定申告書を提出すべきことを規定し、その第2項で、申告書には「貸借対照表、損益計算書その他の財務省令で定める書類」(つまり、財務書類)を添付すべしと規定している。しかし、貸借対照表などの財務書類は、税務申告書に添付するものであり、税理士法で規定する税務書類ではない。それは、税理士に独占権が与えられている税務書類に添付する別個のもので、本来の税理士業務とは全く関係ないのである。これは会計実務の常識と言っていい。実務の世界では常識とされていることでも、あるいは、企業会計と税務に疎(うと)い検察官とか裁判官をだますことはできるとでも考えたのであろうか。税理士の独占業務とは関係ないものを、敢えて関係あるとして偽り、もっともらしい書式に仕立て上げ、それを錦の御旗にかざしているのである。
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