ゲームとしての犯罪 -25
- 2006.10.24
- 山根治blog
「ゲームとしての犯罪」の連載を始めたのが4月25日ですから、同じテーマで6ヶ月も書き続けたことになります。当初は昨年の「ホリエモンの錬金術」がそうであったように、軽く読み流していただくつもりでしたので、1ト月、つまり5回位の連載で終る予定でした。ところが書き始めたところ、昨年と同じ様に、私に対する悪口雑言がコメント欄に数多く寄せられてきました。生まれつきヘソが少しばかり曲っている私ですから、それでは、と気合いを入れ直して書き続け今日に至ったという訳です。
今に始まったことではありませんが、株式市場自体、投資の場であると同時に、投機の場でもあります。このような観点からしますと、株式市場は賭場(とば。バクチ場あるいは鉄火場)であり、株の取引は一つのゲームであるとも言えるでしょう。
売り手と買い手が株式の発行会社をはさんで、それぞれの思惑を秘めながらシノギを削る訳です。株式が値上りすると考える人(強気筋、Bull(ブル)といいます)は、買いに向かうでしょうし、逆に株式が値下りすると考える人(弱気筋、Bear(ベア)といいます)は、売りにまわるでしょう。つまり、ブルとベアとがそれぞれの利益を求めて展開していくゲームであることは否定できません。
このように、株式市場が多分に投機性を持っており、この意味から一種の賭場でもあることは、市場に多くの人と多額の資金を導入し、市場の活性化に資する上で必要なことかもしれません。
ただ、賭場には厳しいおきてが存在します。それは、イカサマをしてはいけない、ということです。万一、イカサマを行ってバレた場合は、賭場から追放されるだけでなく、指をつめさせられたり、袋叩きにされた上にスマキにして川に放り投げられることさえ覚悟しなければなりません。
株式市場も同様です。株式を発行する会社は、決められたルールに従って正しい情報を公開しなければなりません。これを適正な情報の開示(ディスクロージャー)と言います。
ところが中には、平気でインチキ情報を公開し、多くの売り手と買い手(つまり、投資家)を騙す、不心得な会社が存在します。イカサマをやる訳です。
詫び証文(つまり、訂正報告書)を差し入れて、罪一等を減じられ、市場からの追放(つまり、上場廃止)を免れるケースが多いのですが、ライブドアのようにタチの悪い会社ですと市場から追放されてしまうのです。市場のルールに従わずに、イカサマを行ない、多くの人々に多大な損害を与えたのですから当然のことでしょう。
イカサマの中でも最もタチの悪いのは、証券取引法によって作成と提出が義務付けられている有価証券報告書をごまかすこと(虚偽記載)です。その中の中核部分である財務諸表(決算書のことです)にイカサマを施すことを俗に“粉飾”(お化粧のことで、ドレッシングといいます)といい、証券市場において、あってはならないこととされています。市場の信頼性を著しく損うからです。
一部のジャーナリストとか学者までが、
と言いつのり、私のブログのコメント欄には、私にまで八つ当りしている人が出没しています。
これらの議論は、証券取引法とか証券市場を曲解したもので、これまで私は折にふれてその誤りを指摘してきました。ここでは一点だけ改めて指摘するにとどめます。
その一点とは何か。
それは、ライブドアが上場廃止になったこと(これを死刑宣告と言っているようです)と、堀江貴文氏が刑事罰に問われていることとは、基本的には関係がないということです。
上場廃止は、粉飾という事実をふまえて、東京証券取引所が上場廃止規準に触れたと判断して処置したものでしょう。ちなみに、ライブドアの粉飾については、堀江貴文氏以外の4人の被告人全員がカラクリの事実を認めていると伝えられていますし、監査人であった複数の会計士も認めていますので、それらをふまえて上場廃止に踏み切ったものと思われます。担当していた複数の会計士が粉飾の事実を認めていることは極めて大きな意味合いを持っているものです。粉飾の判断は財務諸表の適正性にかかるもので、公認会計士の専権事項とされており、弁護士のような法律家が出る幕ではありません。
堀江貴文氏とその弁護人は、投資事業組合を隠れ蓑にしたカラクリの事実は認めながらも、敢えて粉飾ではないと強弁しているとも伝えられていますが、はてさて。
堀江貴文氏が刑事罰に問われていることは、前述の通り、ライブドアの上場廃止とは直接の関係はありません。通常の刑事裁判のように、犯罪の構成要件に該当するとして立件されたものでしょう。国策捜査など、ピント外れもいいところです。堀江氏が有罪になろうと、あるいは無罪になろうと私には関心がありません。上場時点から数々のイカサマを繰り返し、多くの人々に2,000億円もの損害を与え、堀江氏が自ら巨額の不当な利益をふところにした事実は消えることがないからです。
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ここで一句。
(小梅大夫、厚化粧して狂い咲き。)
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