ゲームとしての犯罪 -19
- 2006.09.12
- 山根治blog
このところ、ライブドア事件の関心はもっぱら刑事裁判の成り行きに限定され、薄らいできた感があります。堀江貴文という異形(いぎょう)の人物が、株式上場のカラクリを悪用して行った巨額詐欺事件の本質が片隅に追いやられ、検察当局が立件したごく一部の犯罪事実のみがクローズアップされているのです。
その結果、「ゲームとしての犯罪」でテーマとして取り上げてきた被害者の視点が、このところのマスコミの論調からスッポリと欠落するに至っています。20万人ほどの人達が、2,000億円~3,000億円の損害を被ったこと、しかもその損害は、堀江貴文氏を中核としたライブドアが、上場以来数多くのゴマカシを駆使した結果もたらされたものであること、この厳然たる事実が忘れ去られようとしているのです。
一部の法律関係者とかジャーナリストが、堀江貴文氏は本当に有罪なのか、いや無罪となるのではないかといった、議論をしているようです。しかし、このようなことは、実はさほど大きな問題ではありません。堀江氏が仮に無罪になったとしても、多くの人達を騙した彼の行為とその結果が正当化される訳ではありませんし、また有罪になったとしても、被害者の損失の補填に資するものでない限り、意味がありません。
このように、ライブドア事件を、立件された事件に限定しようとする動きは、事件そのものをなんとか小さく見せかけようとすることを意味します。つまり、事件の矮小化です。
極めて大きなお金が絡んでいますので、自分達の立場をなんとかしてもっともらしく正当化したいと思う人達がいるのは当然でしょう。
私のブログには様々な立場の人から、数多くのコメントが寄せられています。中には、ライブドアとか堀江貴文氏に対して批判的なことを言うこと自体がケシカランといった論調の人も少なからず見受けられます。
このような人達は少なくとも私のブログに眼を通し、その上で相当の時間をかけてコメント欄に投稿しているのですから、単なるヒマつぶしに私の悪口を言っているのではないはずです。金銭的あるいはそれ以外の理由からなんらかの利害関係を持っている人達ではないかと思われます。
この1年半ほどの間、ライブドアを調べる過程で気付いたことがあります。それは、IPO(新規公開)ブームに乗じて、未成熟な会社を無理矢理上場させたのではないかと思われるケースがかなりあるようだ、ということでした。つまり、ライブドア以外にも、様々なインチキをほどこして株式上場を果した会社があるのではないかということです。ざっと見たところ、その数は一つや二つではなく、2桁に達するようなのです。
更に、これらの背後には指南役のような人物がいて、黒子としてゴマカシの絵図(えず)を描いているのではないか、私の疑念は膨らむばかりでした。影の仕掛人がいるとすれば、このような人物こそ、ライブドア事件を矮小化し、一日も早く風化させてしまいたいと願っていることでしょう。
ライブドアについてインチキ上場を仕掛けた人物がいることは、察してはいましたが、具体的な人物名までは分かりませんでした。ところが、最近になってその名前が明らかにされました。あるいは以前から知られていたかもしれませんが、私には分からなかったのです。やっぱりいたのか、というのが私の偽らざる感想です。
ライブドア証券の初主幹事案件としても話題を集めたが、初値が公募価格を37%割り込むなどバイオ株失速の引き金を引いた。株価はいまも初値の四分の一以下だ。
エフェクターは上場前に会計処理を巡って監査法人と意見が対立。結局、主幹事と監査法人を代えて上場にこぎつけたが、経験豊富な沼田の助言なしでは上場できなかった可能性がある。「会社のために制度のスキをつくのが我々の仕事」と沼田は説明するが、それが投資家の利益を損ねた面はなかったかどうか。“
(「試練の新興株市場-IPOブームの裏側1」、日本経済新聞、平成18年8月29日付)
“名うての公開請負人”とされた沼田功氏、ライブドアだけでなく、なんとエフェクター細胞研究所まで手掛けていたというのです。
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ここで一句。
(かなりの才覚を求められた、江戸時代の大店(おおだな)の番頭さん、果してあの人に勤められるかな?)
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