疑惑のフジテレビ -号外6

まず、粉飾とは何かについて考えてみます。



もともと粉飾という言葉は、身支度、装飾、仕上げ、手入れというような意味を持っているドレッシング(dressing)を、会計用語として借用したものです。会計監査の実務で用いられているもので、法律用語ではありません。

つまり、粉飾とは決算の数字に細工を施して決算書の見栄えをよくすることをいいます。お化粧と言ってもいいでしょう。通常は、利益の水増しを意味するものですが、反対に、利益を少なく見せかけることを逆粉飾ということもあります。この逆粉飾は、脱税と同じ意味で用いられることが多いようです。

つまり、平たく言いますと、決算書が正しいものではなく間違っている、その中でも、実際には利益が出ていないのに儲かっているようにゴマかすことを粉飾といい、粉飾してゴマかしの決算書を作ることを粉飾決算というのです。

ところで、現在の証券市場は、一定の条件(上場基準)を満たした会社が、広く一般大衆から事業資金を集めることのできるマーケットです。銀行から資金を借りる(間接金融)のではなく、一般の人から直接当事者(株主)として資金を出してもらう(直接金融)のです。
従来の日本では、銀行が非常に大切な役割を持っており、一般から預金として金を集め、集めたお金を銀行の責任と判断に基づいて、事業会社に貸付金という形をとって資金の配分をしていました。
近年、このシステムが次第に崩れていき、銀行を通さずに、一般大衆の資金の相当部分が証券市場を通して直接、事業会社に流れていくようになりました。

このような証券市場に投資家が安心して参加するためのルールを定めたものが、証券取引法です。そして、このルールの基本にあるのが情報の開示といわれるものです。

情報の開示。

株式を公開する会社が、一定のルールに従って、正しい企業情報を公表することを「情報の開示」(ディスクロージャー)といいます。証券市場の信頼性のために欠くことのできないものが、正しい企業情報の開示なのです。
このディスクロージャーは主に、有価証券報告書によってすることになっており、その中心的なものが決算書です。
従って、公表された決算書が正しいものであるか、正しくない(つまり粉飾)ものであるかは極めて重大なことであり、かりそめにも粉飾した決算書を公表した会社が一社でも存在すれば、それだけでも証券市場全体の信頼性を大きく傷つけかねない重大なことなのです。粉飾に手を染めた企業が、証券市場から締め出されるのは当然のことです。

大鹿靖明氏の記事には、ゴマかしのディスクロージャーをすることによって、証券市場の根幹を揺るがすほどの多大な迷惑をかけるという視点が明らかに欠けています。

この項つづく

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ここで一句。

“偽証罪とがめる人の厚化粧” -福島、式野美子。

 

(毎日新聞:平成18年4月1日号より)

(厚化粧美人はライブドアだけではないようです。)

 

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