ゲームとしての犯罪 -13
- 2006.07.25
- 山根治blog
そこで、ライブドア本体(単体)の貸借対照表(有報、P.96~P.97)を見てみますと、
純資産額は、1,794億円、
総資産額は、1,831億円、
となっています。
この純資産額1,794億円が、実際にはどの位に評価できるのか、これを見極めるのが査定という作業です。
純資産(1,794億円)=資産(1,831億円)-負債(37億円)
ですから、純資産を査定することは、とりもなおさず、資産と負債とを検討することを意味します。
そこでまず、資産1,831億円について見てみます。
この1,831億円を、現金として回収できるかどうか、という基準で分類してみますと次のようになります。
***<表9>ライブドアの資産の分類
****1.現金及び現金等価勘定
^^t
^cc”^項目
^cc”^金額
^cc”^備考
^^
^1)現金及び預金
^rr”^45,621百万円
^
^^
^2)売掛金
^rr”^1,688百万円
^関係会社に関するもの378百万円を除く。
^^
^3)未収金
^rr”^12,604百万円
^(株)フジテレビに対するもの12,604百万円
^^
^cc”^計
^rr”^59,912百万円
^
^^/
****2.キズもの資産
^^t
^cc”^項目
^cc”^金額
^^
^1)短期貸付金
^rr”^27,706百万円
^^
^2)無形固定資産
^rr”^1,090百万円
^^
^3)関係会社株式
^rr”^50,067百万円
^^
^4)関係会社長期貸付金
^rr”^37,307百万円
^^
^5)その他
^rr”^5,751百万円
^^
^cc”^計
^rr”^121,921百万円
^^/
****3.ポンコツ資産
^^t
^cc”^項目
^cc”^金額
^^
^1)前払費用
^rr”^886百万円
^^
^2)繰延資産
^rr”^386百万円
^^
^cc”^計
^rr”^1,272百万円
^^/
-1.+2.+3.=183,105百万円(総資産)
1.の「現金及び現金等価勘定」は、100%評価とし、3.の「ポンコツ資産」は0%評価とします。
問題なのは、1,219億円もある2.の「キズもの資産」です。これについて私は、20%減の80%評価、つまり、1,219億円×0.2=243億円だけ評価を落とし、976億円の評価額としました。
20%の評価減についての根拠は次の通りです。
連結貸借対照表を見てみますと、無形固定資産が253億円となっています。
***<表10>無形固定資産(連結貸借対照表)
^^t
^cc”^項目
^cc”^金額
^^
^1.営業権
^rr”^818百万円
^^
^2.ソフトウェア
^rr”^4,148百万円
^^
^3.連結調整勘定
^rr”^19,926百万円
^^
^4.その他
^rr”^412百万円
^^
^cc”^計
^rr”^25,305百万円
^^/
ライブドア単体の無形固定資産が10億円でしたから、その差額の243億円は44社の子会社と5社の関連会社を連結することによって生じたものです。
2.の「キズもの資産」のうちで、1.3.4.(合計で、1,150億円)は、ライブドア本体でかき集めたお金を、グループ各社にバラまいたものです。それらのお金がどのようになっているのかを示しているのが、連結貸借対照表ですので、その資産項目を一つずつ吟味していきますと、この無形固定資産という怪しげな勘定科目群が目にとまります。
中でも、199億円も計上されている連結調整勘定が一番のクセモノです。76ページの「キャッシュ・フロー計算書関係」の脚注※2を見ますと、連結子会社の資産と負債との差額であることが分かります。
この脚注※2では、第10期において新たに連結子会社となった、
-ジャック・ホールディングス株式会社
-弥生株式会社
-株式会社ライブドア不動産 他24社
計27社の取得価額が開示されています。
***<表11>新規連結子会社の取得価額
^^t
^cc”^項目
^cc”^金額
^^
^1)流動資産
^rr”^72,396百万円
^^
^2)固定資産
^rr”^11,677百万円
^^
^3)連結調整勘定
^rr”^21,651百万円
^^
^4)流動負債
^rr”^△24,916百万円
^^
^5)固定負債
^rr”^△ 6,699百万円
^^
^6)少数株主持分
^rr”^△11,307百万円
^^
^新規連結子会社の取得価額
^rr”^62,802百万円
^^/
ここで示されている連結調整勘定の21,651百万円に、77ページの脚注※3で示されている2,719百万円(これは、株式の売却等により連結子会社でなくなった会社にかかる連結調整勘定です)を差し引き、前期末の勘定残高2,408百万円を加え、更に、当10期の連結調整勘定償却額を差し引いたものが、<表10>の19,926百万円なのでしょう。
次から次へと会社を買収する際に、買収する会社の査定がかなりいいかげんになされた形跡があります。一部は現金で買収してはいるものの、多くは株式の交換によって買収しているのですから、株式という紙切れを発行するだけで、ツケは全て一般投資家にふり向けられ、ライブドアの懐が傷むことがないからでしょう。
<表10>の2.ソフトウェアの4,148百万円のうち、連結によって増加した3,809百万円(単体分の339百万円を控除)と、3.連結調整勘定19,926百万円の、合わせて23,735百万円は、買収した会社のいわば“水増し分”と考えてもいいものです。これらは、キャッシュ・ベースで見る限り資産性はありませんので、差し引きしますと、これだけでも先に述べた「キズもの資産」1,219億円の概ね20%に相当することが分かります。
―― ―― ―― ―― ――
ここで一句。
(渋谷あたりには、タヌキも目をむくようなギャルがいたりして。“こんなのと一緒じゃいやだとタヌキ言い”)
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