ゲームとしての犯罪 -号外4
- 2006.07.18
- 山根治blog
このところ、コメント欄において、ライブドアが行なった株式100分割に関連して、貸し株とか空売りとかいった具体的な指摘がなされ、インチキだ、いやインチキではないといった議論がなされているようです。
この点について私は、『ホリエモンの錬金術-3』において、“株式分割自体は違法ではないから仕方がないと考えている向きもあるようですが、トンデモありません。
これらの株式分割は、きまって公募増資の前後になされており、なかでも平成16年4月24日の公募増資の2ヶ月前に行なわれた100分割とそのわずか4ヶ月後に行なわれた10分割は、余りにも見えすいたヒドイものでした。この期間のライブドア株の売買手口を克明に洗ってみると、あるいは、株価操作とかインサイダー取引といった問題が出てくるかもしれません。“と指摘し、株価が短期間のうちに極端な乱高下を繰り返した背景には、必ずや関係者による人為的な操作があったに違いないと考えていました。ただ、昨年の時点では、常軌を逸した株式分割は“錬金術”の3つのトリックの一つという位置づけでしたので、それ以上の分析はしないでいたのです。
今年の3月、「ライブドアとの闘いの日々」(Nikaidou.com編、文苑堂刊)が刊行されました。この本の中で、100分割の発表後株価が最も高騰したあたりで、堀江貴文氏が気脈を通じた投資事業組合とかファンドに「貸し株」をして、巨額の利益を得たことが詳しく述べられています(P.198~P.204)。
編者は、これを「株式分割と貸し株を悪用した錬金術」と呼び、「株不足の中で貸し株制度を使い、利益を得る悪質なマネーゲーム」であると断じています。
ただ、この本の中に、
と目をむくような数字が示してありましたので、私は念の為に、当時のライブドアの株価の動向と出来高を調べてチェックしてみました。
***《100分割権利落ち後の株価と出来高の推移》 ( http://finance.livedoor.com/のデータより作成)
^^t
^cc”^日付
^cc”^始値
^cc”^終値
^cc”^高値
^cc”^安値
^cc”^出来高(株)
^cc”^備考
^^
^H15.12.22
^rr”^218,000
^rr”^207,000
^rr”^219,000
^rr”^204,000
^rr”^19,505
^
^^
^H15.12.24
^rr”^215,000
^rr”^222,000
^rr”^234,000
^rr”^209,000
^rr”^33,829
^
^^
^H15.12.26
^rr”^3,020
^rr”^3,020
^rr”^3,020
^rr”^3,020
^rr”^119
^100分割権利落ち日
ストップ高
^^
^H15.12.29
^rr”^3,520
^rr”^3,520
^rr”^3,520
^rr”^3,520
^rr”^107
^ストップ高
^^
^H15.12.30
^rr”^4,020
^rr”^4,020
^rr”^4,020
^rr”^4,020
^rr”^18,117
^ストップ高
^^
^H16.01.05
^rr”^4,520
^rr”^4,520
^rr”^4,520
^rr”^4,520
^rr”^600
^ストップ高
^^
^H16.01.06
^rr”^5,020
^rr”^5,020
^rr”^5,020
^rr”^5,020
^rr”^1,387
^ストップ高
^^
^H16.01.08
^rr”^7,020
^rr”^7,020
^rr”^7,020
^rr”^7,020
^rr”^830
^ストップ高
^^
^H16.01.09
^rr”^8,020
^rr”^8,020
^rr”^8,020
^rr”^8,020
^rr”^423
^ストップ高
^^
^H16.01.13
^rr”^9,020
^rr”^9,020
^rr”^9,020
^rr”^9,020
^rr”^251
^ストップ高
^^
^H16.01.14
^rr”^10,020
^rr”^10,020
^rr”^10,020
^rr”^10,020
^rr”^916
^ストップ高
^^
^H16.01.15
^rr”^12,020
^rr”^12,020
^rr”^12,020
^rr”^12,020
^rr”^1,979
^ストップ高
^^
^H16.01.16
^rr”^14,020
^rr”^14,020
^rr”^14,020
^rr”^14,020
^rr”^8,426
^ストップ高
^^
^H16.01.19
^rr”^16,020
^rr”^16,020
^rr”^16,020
^rr”^16,020
^rr”^6,304
^ストップ高
^^
^H16.01.20
^rr”^18,020
^rr”^18,020
^rr”^18,020
^rr”^18,020
^rr”^98,676
^連続ストップ高13日目
^^
^H16.01.21
^rr”^18,220
^rr”^16,020
^rr”^18,220
^rr”^16,020
^rr”^118,319
^天井に達し、ストップ安に
^^
^H16.01.22
^rr”^14,020
^rr”^14,020
^rr”^14,020
^rr”^14,020
^rr”^1,047
^ストップ安
^^
^H16.01.23
^rr”^12,020
^rr”^12,020
^rr”^12,020
^rr”^12,020
^rr”^1,112
^ストップ安
^^
^H16.01.26
^rr”^10,020
^rr”^10,020
^rr”^10,490
^rr”^10,020
^rr”^107,847
^踊り場、買い戻し
^^
^H16.01.27
^rr”^9,720
^rr”^10,290
^rr”^10,690
^rr”^9,500
^rr”^97,882
^買い戻し
^^
^H16.01.28
^rr”^10,290
^rr”^9,200
^rr”^10,290
^rr”^9,200
^rr”^36,471
^
^^
^H16.01.29
^rr”^8,600
^rr”^8,230
^rr”^9,100
^rr”^8,200
^rr”^72,864
^
^^/
上記の一連の数字は、興味深いいくつかの事実を教えてくれます。
まず、100分割の権利落ち日である平成15年12月26日の株価は、前日12月25日の終り値ベースで考えますと、理屈の上では2,220円(終り値222,000円の100分の1)なのですが、一気に800円も高い水準で取引が始まり、ストップ高。
この12月26日を手始めに、このあと、ストップ高が、連続して13営業日続きます。
平成16年1月20日には、18,020円のストップ高で、出来高が98,676株と一気に膨らんでいます。翌1月21日には、寄り付きこそ18,220円のスッ高値を記録するのですが、その日のうちに一転してストップ安に。前日比、2,000円安。出来高はナント118,319株!
それ以降、1月22日、1月23日、1月26日と連日それぞれ2,000円安のストップ安。1月26日には107,847株、1月27日には97,882株の出来高となっています。
これら一連の事実は一体何を意味するのでしょうか。
仮に、Nikaidou.comとか、素人氏とdktnk氏(共に山根治blogコメント欄)が指摘しておられるように、堀江貴文氏が貸し株をしていたことが事実であるならば、およそ次のようなストーリーが考えられるでしょう。
このストーリーが事実であるかどうかは、先に掲げた平成15年12月26日から同16年1月27日までのライブドア株の売買の手口(誰が買い、誰が売ったのか、その明細)を調べてみれば分かることです。とくに、
+平成16年1月20日の 98,676株
+平成16年1月21日の118,319株
+平成16年1月26日の107,847株
+平成16年1月27日の 97,882株
の4日分の売買手口だけでもいいでしょう。証券取引法によって、金融庁とか証券取引等監視委員会には強大な調査権限が与えられているのですから、その気になれば簡単に分かるはずです。
仮に、私が想定したストーリーが事実であるとすれば、堀江貴文氏(関係ファンド、あるいは投資事業組合)のもとには、16億円ほどのお金が一般投資家から移転したことになります。
その計算は次の通り。20万株の貸し株を行ない、平均18,000円で売り、10,000円で買い戻したと仮定。差益8,000円(18,000円-10,000円)×20万株=16億円。
尚、株価が不自然に乱高下したこの期間は、100分割の権利は確定していても、99株分の発行はなされていません(発行日は、平成16年2月20日)ので、ライブドアの発行済総数は、585,987株(平成16年2月19日現在)です。従って、貸主である堀江氏は、この時点で5%を超える大株主ですので、1%以上の貸株がなされているとすれば、堀江貴文氏には、証取法第27条の25第一項による変更報告書の提出義務があることになります。
(※変更報告書の提出義務に関する記述については誤りがありましたので訂正いたしました。指摘して下さった素人さん、ありがとうございました。 2006-07-22)
―― ―― ―― ―― ――
ここで一句。
(元役人、見よう見まねでプロ気取り。プロであるお金の番人、ド素人?)
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