ゲームとしての犯罪 -7

<表4><表5>をもとに、具体的なケースとして、ライブドアからストック・オプションを付与され、それを行使して売却し、「一億円ぐらい」の利益を手にしたと、公言している人物を取り上げることにします。

堀江貴文氏の著書『堀江貴文のカンタン!儲かる会社のつくり方』の中で、“会社の命運を握っているというやりがいで激務をこなすストックオプションで1億円は正当な仕事の対価”なる見出しをつけて誇らしそうに書いている人物です(P.154~P.166)。

ライブドアファイナンス取締役Nさん(36歳)と仮名にはなっているのですが、記事の内容から先般堀江氏と共に逮捕・起訴された中村長也氏であることが分かります。
中村長也氏はまた、6年前にライブドア(当時は、オン・ザ・エッヂ)が上場する際に、堀江貴文氏に指示されて有馬純一郎氏名義の株式960株(上場時の評価額で、57億6千万円、600万円×960株)を管理し、上場直後から慌しく売却した痕跡のある報告書(株式大量保有の変更報告書)を作成した人物でもあります。「ホリエモンの錬金術-12」と「ホリエモンの錬金術-13」において詳しく記述したところです。

中村氏は次のように述べています。

“ストックオプションで優遇税制を受けるためには、2年間据え置かなければならないので、2002年に行使しました。行使価格は83円(ライブドア株はその後株式分割されているため、現在の株では8円相当になる)。これを売却したのは2003年後半になってからで、このときの株価は2500円前後でした。1株2400円余りの利益を得ることができたということになります。それで得た現金は、1億円ぐらいでした。”(同書、P.160~P.161)
“ライブドア株はけっこう変動が大きく、2004年には時価総額は9000億円ぐらいまで上がりましたが、最も下落した2003年3月ごろには時価総額は50億円程度まで下がっていました。そのころには売るに売れません。そんなこんなでタイミングを計り続け、ようやく売却できたのが、2003年秋のことだったのです。”(同書、P.161)

それにしても中村氏は、わずか1年の間に、時価総額が50億円から9,000億円へと、ナント180倍も膨らんだことに違和感を持たなかったのでしょうか。
彼は違和感とか罪悪感を持つどころか、時価総額を180倍にもつり上げた自分達の行為を正当なものであると信じていたフシがあります。
それは、

“ストックオプションを宝くじに当たったように思っている人もいるようですが、私は自分の仕事に対する正当な対価の一つだと受けとめています。単純に言ってしまえば、自分がこの会社のためにどれだけの利益を上げているのか?ということですね。もし1億円の利益を上げているのであれば、その10%ぐらいを歩合のようなかたちで欲しいと思うのは、間違いではないと思うのです。”(同書、P.163)

と、堂々と述べていることから察せられます。「正当な対価」と言い放ち、自分が貢献した会社の利益の10%ぐらいはもらっても当然だと言っているのです。

ライブドアは、上場以来一度も利益をあげたことはありません。上場廃止直前の決算期である平成17年9月期の貸借対照表を見れば分かるように、公表上は27億円の利益剰余金(稼いだ利益の累積額です)があるようにはなっているのですが、実際のところは怪しげな資産のオン・パレードで、利益剰余金は200億円を超える赤字であると考えられるからです。このことは、増資などによって払い込まれた株主資本が食いつぶされていることを意味します。
堀江貴文氏も、宮内亮治氏も、キャッシュ・フロー経営ということをよく口にしていたようですが、彼らが言っているキャッシュ・フローとは営業によるものだけでなく、会社に入ってくる全てのキャッシュを意味していたようです。株価をつり上げて増資をしたり、怪しげなMSCBなどを発行して、なりふり構わず多額のキャッシュを会社に取り込むことが会社の営業活動だと思いこんでいたのでしょうか。

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ここで一句。

“黒を白言いくるめるかへんな庁” -札幌、氷山一角。

 

(毎日新聞:平成18年6月12日号より)

(社保庁、村上ファンド、ライブドア-何か共通するものがあるようで。)

 

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