疑惑のフジテレビ -13

フジテレビが自ら、多額の損害を被ったことは事実です。ただ、その損害の回復がどの位までできるかどうか、また、ライブドアに出資する際に経営者として当然払うべき注意をしていたかどうか、更には、ライブドアが危険な会社であることを事実上知りながら、敢えて出資に踏み切ったかどうか、これらの事情によっては、フジテレビの経営者は会社に対して責任が生じてくるおそれがあります。民事上の責任、つまり損害賠償責任だけでなく、刑事上の責任も問われかねません。

先に述べたデューデリ契約がどのようなものであるのか、デューデリの報告書がどのようなものであるのかが現時点では外部に明らかにされていませんので、断言することは差し控えますが、後日これらの内容が明らかにされ、総合的に考えて、ライブドアが上場廃止に至る可能性がある瑕疵(かし。キズのことです)を持っていることを、経営者が知りうる立場にあったと判定されるような場合には、民事上だけでなく刑事上の責任も浮上してくるでしょう。経営者が自らの保身(利益)を図るために、会社に多額の損害を与えることを予知しながら契約を実行し、実際に損害が発生した、とでも認定されるならば、特別背任罪に問われるかもしれません。

しかし、これらのことはフジテレビ内における株主と経営者との間の問題であり、いわば内部の問題です。私が問題にしているのは、このような内輪のことではありません。外部、つまりライブドアの一般株主に対する責任についてなのです。

フジテレビが、ライブドアの一般株主に深く関係してくるのは、去年の5月23日、440億円の増資に応じて、ライブドアの第2位の大株主になってから後のことです。
ここで、フジテレビがライブドアの大株主になったことの意味合いを、一般投資家の視点に立って考えてみますと、次のようにまとめることができるでしょう。
+フジテレビは東証一部上場の公益企業であり、財務内容、収益性ともに立派な会社である。
+フジテレビは、単なる業務提携にとどまらず、440億円という多額の投資をライブドアに対して行った。
+フジテレビは公益企業の性格は持ってはいるものの、営利の追求が求められており、440億円の投資についても元本の安全性についてクリアーしているだけでなく、投資に見合う収益が得られると判断したからこそ、ライブドアの増資に応じた。
+ライブドアは上場以来、同一の監査法人が「適正」とする監査報告書を出しており、普通に考えれば、決算書がインチキであるとは思えない。
+フジテレビは、別の監査法人に依頼して過去の決算書の見直し(デューデリ)をして、問題がないことを確認した。
+4.によってライブドアの決算書が適正であるとされているのに加えて、一流企業であるフジテレビが5.のデューデリを行ったことによって、ライブドアの決算書はいよいよ問題のないものであることが保証された。
+フジテレビが増資に応じたライブドア株式の発行価格は329円。元本割れなどフジテレビは想定していないであろうから、この値段を株価の当面の底値と考えてもよいだろう。
+フジテレビはライブドアの大株主となった上に業務提携をし、役員までも送り込んだ。ライブドアは、フジテレビの信用力と情報力とを活用して、今後飛躍的に発展する可能性を秘めている。
一般投資家が以上のように考えたものとすれば、ライブドア株は絶好の投資対象であったと言えるでしょう。ライブドアは成長性の見込める優良企業であり、投資リスクの少ない安全な会社であると一般投資家が思い込んだとしても決して不自然ではありません。それまで株式投資には関心のなかった人達、しかも相当堅実な考えを持っていた人達までも、フジテレビに引きつけられて、ライブドアの株式の購入に向ったことは容易に想定されるところです。

しかも、フジテレビは、自社の番組に堀江氏を度々出演させたり、怪しげな占い師までも使ってライブドアの株価が5倍になるとまで言わせています。更には、フジテレビの看板番組の一つである“報道2001”において、堀江貴文氏を絶賛した竹村健一氏をメイン・コメンテーターとして据え付け、ライブドアの事実上の宣伝をさせています。
竹村健一氏は、堀江貴文氏とライブドアを誉め上げて、多くの投資家を騙すのに一役買った人物の一人です。この人は、堀江氏と共著(「世界一の金持ちになってみろ!」)まで出しているのです。「ホリエモンの錬金術-19」で指摘したところです。
私は、事件発覚後、「報道2001」を注意して見ていたのですが、竹村健一氏は、一度だけ「過ぎたるは及ばざるが如し」という、まるで他人事のようなコメントをボソボソと発しただけで、堀江氏と二人で本まで出して結果的に一般投資家に多大な迷惑をかけたことについての謝罪は一言も発していません。この点は、フジテレビの日枝会長と全く同じですね。

フジテレビが、ライブドアの一般株主に対して、法的責任があるかないかは別として、少なくとも重大な道義的かつ社会的責任があることは否定できないでしょう。
ライブドアとの契約をタテにして、別格だとばかりに、多額の損害をこうむった多くの一般投資家に優先して損失の補填を受けるものとすれば、何とも割り切れない感じが残ってしまいます。一般投資家を騙したのは堀江氏でありライブドアですが、フジテレビも一緒になって投資家を騙したと言えるのですから。

(この項、おわり)

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ここで一句。

“偽証罪とがめる人の厚化粧” -福島、式野美子。

 

(毎日新聞:平成18年4月1日号より)

(フジも他のマスコミも、総理までも、ツラの皮が厚くなるまで化粧しないとやっていけない? ここで蛇足の一句、“ドーランをコテコテ塗って晴舞台”)

 

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