疑惑のフジテレビ -号外7
- 2006.04.11
- 山根治blog
次に言えることは、大鹿靖明さんが粉飾決算の違法性について曲解していることです。
もっとも違法性についてピント外れな考え方をしているのは、大鹿さんだけではありません。他のほとんどのマスコミも同じような考え方をしているようです。
決算書は企業会計のルールに従って作られる(適正)ものですが、中にはこのルールに従わずに自分勝手な決算書を作る(不適正)不心得な会社も出てきます。
粉飾決算というのは、ルールを無視した、つまり不適正な決算ということで、刑事罰の対象となる違法性の問題とは基本的に関係ありません。粉飾のやり方とか決算書に与える影響の度合いによっては、刑事罰の対象になること(違法性)はあるのですが、粉飾が直ちに犯罪につながるものではありません。
決算書が適正であるか、不適正であるかは、ルールに従っているかどうかによります。
そのルールとは何か。
少し長い言い回しになるのですが、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」といわれているものが、このルールにあたります。
これはアメリカから借りてきた言葉で、GAAP(ガープ、Generally Accepted Accounting Principles)の直訳です。現在の日本においては、企業会計原則(昭和24年7月9日制定)、あるいは連結財務諸表原則(昭和50年6月24日制定)がこのルールを具体的に表現したものとされています。
つまり、会社が決算書を作成する拠りどころを指し示したものがGAAPであり、企業会計原則という訳です。
なかでも、株式を上場し、多数の人から事業資金を集めようとする上場会社には、このGAAPを基本にすえながらも、更に決算書の作り方がこと細かく規定されており、それに従うことが求められています。内閣府令として定められている、財務諸表等規則、連結財務諸表規則がこれにあたります。
このように、上場会社は、定められた方式によって決算を組み、それを公表すること(開示、ディスクロージャー)が義務づけられています。
この義務に違反しますと、会社にペナルティーが課せられるのですが、その最大のものが、株式市場からの追放、つまり上場廃止という訳です。
この上場廃止を決定するのは、ライブドアの場合ですと、マザーズ市場を運営している東京証券取引所です。東京地検特捜部ではありません。ライブドアが上場廃止に追い込まれたのは、堀江貴文氏をはじめとする経営者達が犯罪行為をしたためではありません。ライブドアが上場基準に触れるような規則違反をした、つまり悪質な粉飾決算をしたためです。
悪質な粉飾決算。
これについても、大鹿記者は無知を露呈しています。
という趣旨のことを述べ、ライブドアの粉飾は万引のような微罪であると結論づけています。
ここには二つの誤りがあります。一つは、全ての粉飾を犯罪と考えていること、いま一つは、粉飾の悪質さを、金額の絶対額で判断していることです。
たしかにライブドアの50億円の粉飾は、カネボウの100分の1の金額ではありますが、本当は赤字決算であるのに、大幅な黒字決算に見せかけてゴマかしているのですから、カネボウよりむしろ悪質であると言えるかもしれません。
検察の追及は途中で尻切れトンボに終るようですが、私の分析では、ライブドアの場合は単なる粉飾事件ではなく、証券市場を舞台にした前代未聞の金融詐欺事件(最大の受益者は堀江貴文氏です)であることを考えますと、悪質この上ないものとも言えますし、上場廃止は遅きに失したものです。大鹿さんの言うように、決して万引程度の軽いものではないのです。
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ここで一句。
(さすがに朝日新聞は大新聞ですね。自由闊達に独自の見解を開陳できるのですから。)
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