疑惑のフジテレビ -8

フジテレビの問題に立ちかえることにいたします。



これまでのところで確認したのは、ライブドアとフジテレビが基本合意をした、昨年の4月時点でのライブドアが、どのような会社であったのか、ということでした。コンプライアンス(法令の遵守)という観点からは、はっきり違法とは言えないようなグレーゾーンの脱法行為を平然と敢行し、しかも堀江貴文社長自らその事実を堂々と公言していること、コーポレートガバナンス(企業統治)の観点からは、堀江氏の一存で会社の全てのことが決定できる体制になっていたこと、この2点は公知の事実でした。

当然のことながら、フジテレビの経営陣は、これらのことを十二分に知っていたということです。つまり、基本合意を締結し、デューデリに着手する時点で、調査対象のライブドアという会社が、一人の拝金主義に凝り固まった人物によって支配されている会社で、金儲けのためならば何をやるか分ったものではない危うい会社であることが判っていたのです。
これは、ライブドアと堀江貴文氏が、刑事罰の対象となるような違法行為をしていたかどうかとは、全く別の問題です。

このような会社に対して、デューデリ(予備調査)をかけようというのです。当然のことながら、通常一般の会社とは異なる対応が求められるでしょう。会社の現状だけでなく、過去の決算内容のチェックがデューデリの主な仕事になるのですが、このような会社のことですから、一般の常識では考えられないような細工が決算書に施されている可能性があるとみなければなりません。

デューデリは外部の専門機関である大手監査法人と法律事務所に依頼されたと言われています。
デューデリ契約の際に、ライブドアがいわば”無頼者”に類する存在であることは、交渉の場で煮え湯を飲まされているフジテレビ側から、より具体的に伝えられたことでしょうし、仮に伝えられていなくとも調査する側としては、知っていなければなりませんし、知っていたはずです。

監査法人と法律事務所のそれぞれのデューデリに関する役割についていえば、主たる調査は監査法人が行ない、その結果浮び上った問題点についての法律的評価を法律事務所が行ったのでしょう。つまり、監査法人による問題点の洗い出しが、デューデリの中心的な仕事であったということです。

大手監査法人によるデューデリの実施。

まず、調査期間ですが、基本合意が4月18日で、増資の払込期日が5月23日ですので、デューデリ契約の詳細が分らないものの、おおむね一ト月はあったことになります。
一ト月の調査期間について、ライブドアのデューデリに即して考えてみますと、法律事務所による法的評価の日数を含めて、調査には一ト月も必要ではなく、半分の15日もあれば十分であったと考えられます。

何故か。

ライブドアは、たしかに株式を上場し、単体では、資本金239億円、売上高108億円、総資産額585億円、従業員数464人ですし、連結に至っては、売上高308億円、総資産額1,002億円、従業員数1,019人です(平成16年9月末日現在)ので、外形的には立派な大企業です。
ところが、その実態はといえば、高成長のIT企業という幻想をふりまいて株価をつり上げ、株式市場から莫大な資金をかき集め、その資金で投資事業組合へ出資したり、赤字企業とおぼしき会社を次から次へと買収して膨れ上がった会社であり、企業グループであったのです。
つまり、大企業の形はしているものの、会社の実態としては単なる投資会社であり、零細企業ともいえる中小企業であったということです。
このことは、上場以来の有価証券報告書(第5期~第9期)を、ザッとのぞいてみるだけで判明します。
増資と、それによって得られた資金の運用が会社の仕事の大半を占めており、毎期、利益が出たようにはしてありますが、四苦八苦しているようですし、何よりもキャッシュフローがボロボロです。
デューデリでいいますと、予備調査の初期の段階で判明するはずで、上場以来の5期分の有報を大雑把に見るだけですから、2時間もあれば十分でしょう。

零細企業に近い中小企業であると見極めれば、ことは簡単です。
中小企業の中には、決算書さえまともに作っていないところが多いものです。それでも、企業の実態を掴むのにさほどの時間を要しません。
ところがライブドアは、一応上場企業なのですから、それなりの決算書を作成し、有価証券報告書という形で、詳しい企業情報を開示しているのです。調査をする監査法人にとって、これほど楽な仕事はないと言ってもいいでしょう。

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ここで一句。

“第三者機関に調査させぬワケ” -福岡、只乃愚痴。

 

(毎日新聞:平成18年1月5日号より)

(フジテレビがデューデリを委託した監査法人は、果して第三者機関?)

 

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