冤罪を創る人々vol.101
- 2006.02.21
- メールマガジン
2006年02月21日 第101号 発行部数:573部
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「冤罪を創る人々」-国家暴力の現場から-
http://consul.mz-style.com/catid/11
日本一の脱税事件で逮捕起訴された公認会計士の闘いの実録。
マルサと検察が行なった捏造の実態を明らかにする。
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山根治(やまね・おさむ) 昭和17年(1942年)7月 生まれ
株式会社フォレスト・コンサルタンツ 主任コンサルタント
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●「引かれ者の小唄」 ― 勾留の日々とその後
http://consul.mz-style.com/catid/41
「房内放送 -その2」より続く
http://consul.mz-style.com/item/481
8.房内放送 -その3
就寝時刻の夜9時までの3時間、房内放送のプログラムはかなり
バラエティにとんでいた。その日のニュースの他、漫才、落語、講
談、浪曲に加えて、テレビ小説と称する朗読等が流された。
講談と浪曲は、50年以上も昔の小中学生のころに、祖母と一緒
に楽しんだ想い出があるくらいで、その後ほとんど耳にすることが
なかった。
その頃我が家にあったのは、小さな真空管式のラジオだけで、
NHKの第一放送と第二放送とが辛うじて聞き取れるくらいの安物
であった。一台のラジオを囲むようにして、祖母と二人でワクワク
しながら講談を聴き、浪曲に耳を傾けた。
私にはおばあさんと呼べる人が三人あった。父方、母方のそれぞ
れと、父と母とが夫婦(めおと)養子に行った山根家の祖母である。
血の継がりはなかったが、育ての親ならぬ育ての祖母は、祖父と
共に私を無条件の愛で包んで下さった。
ここで私が、身内である祖母に対して、敢えて敬語的表現を使っ
たことをお許しいただきたい。私の素直な気持を表わすには、この
ようにするしかないのである。
新井白石の晩年の著述に「折たく柴の記」がある。白石はこの中
で、自らの父親のことを、「父にておはせし人」と呼び、母親を
「母にておはせし人」と表現し、祖父と祖母のことを、それぞれ
「祖父(おおじ)にておはせし人」、「祖母(おおば)にておはせ
し人」と呼んで最大級の敬意を表わし、懐かしんでいる。
私も、白石が「折たく柴の記」を子孫のためにひそかに書き残し
た年齢に達した。白石が、父母と祖父母について、心からなる敬意
と感謝の気持がにじみ出るような表現を用いたのを、実感として判
る年頃になったのである。
「わが育ての祖母(おおば)にておはせし人は、名をトラと申し、ほ
んそご(かわいいかわいいで育てられた甘えっ子を意味する出雲方
言)として、まことの孫さながらに我をいつくしみ育て給ひたりき。」
房内放送からゆったりした浪花節(なにわぶし)が流れてくると、
ラジオの前で祖母と顔をくっつけるようにして聴いた幼いころの想
い出が、走馬灯のように私の脳裡をかけめぐった。
週のうちに何回かきまって流されるプログラムのうち、最後まで
馴染むことができず違和感を覚えたものが二つあった。
一つは、「保護司の時間」という刑務所の自主制作番組である。
“更生とざんげの日々”のテーマで、受刑者あるいは仮釈放中の人
が、自らの思いを文章に綴り、ナレーターが朗読するものだ。
更生とかざんげと言われても、私の場合は無実の罪をマルサと検
察によってデッチ上げられて独房に放り込まれているわけであるか
ら、違和感などという生やさしいものではなかった。
「ウルサイ!」、「ヤカマシイ!」-何度心の中でつぶやいたこ
とであろうか。朗読しているナレーターに対してではなく、このよ
うな番組を強制的に聴かせる官に対する怒りからであった。
今一つは、国税庁がスポンサーになっている「税金の話」であっ
た。牟田悌三さんが若い女性を相手に、軽妙な語り口で税金の話を
する番組である。
国税庁提供というのがまず気に障った。万全ともいえる多くの証
拠物件を提示して、脱税ではないことを必死になって弁明したにも
拘らず、証拠を捏造したり改ざんしたりして真実をねじ曲げてまで
告発した国税当局である。
「コノヤロー!」、「バカヤロー!」、「フザケルナ!」-声に
出したりすれば、規則違反のかどで懲罰が待っているので、心の中
で繰り返した。老練な役者である牟田悌三さんに対するものではな
い。理不尽な犯罪的仕打ちを平然と敢行したスポンサーである国税
庁に対するものであり、名状しがたい憤りによるものであった。牟
田さんと女性とのかけ合いが軽妙であればあるほど腹をたてていた
のである。
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●山根治blog (※山根治が日々考えること)
http://consul.mz-style.com/catid/21
「疑惑のフジテレビ -4」より続く
http://consul.mz-style.com/item/482
・ 疑惑のフジテレビ -5
フジテレビがライブドアと基本合意をした、昨年の4月時点に立っ
て考えてみましょう。
ライブドアという会社は一体どういう会社であると見られていた
のでしょうか。認知会計の手法に従って、いわばライブドアの世間
的評価等についての棚卸し(インベストリー)をしてみます。
まず、コンプライアンス(法令遵守)という観点に絞ってみます
と、次の3つの事実が明らかになっていました。
1.最近の一年以内に、矢継ぎ早に3回にわたって都合1万分割もの
株式分割を敢行し、その前後にライブドア株が乱高下していること。
2.特殊な転換社債(MSCB-2010満期ユーロ円建転換社債型
新株予約権付社債)を発行することによって、リーマンブラザーズ
から800億円もの資金調達を行ったこと。
3.2.の資金をもとに、ニッポン放送株を時間外取引で大量に取得
したこと。
これら3つの事実について、ライブドアは、直接的に禁止する法
の規定がないから適法であると言いつのり、監督官庁である金融庁
とか証券取引等監視委員会も違法ではないとして黙認していました。
大方の法律学者とか弁護士が違法ではないと大合唱する中で、明
解に違法であると断言していたのは、私の知るところでは、早稲田
大学の上村達男教授ただ一人でした。教授は、
「証取法の包括規定を適用すれば、直ちに違法である」
と、証取法に通暁している法律学者の立場から警鐘を鳴らしていま
した。
このように、ごく一部の有識者によってライブドアの違法性が指
摘されてはいたものの、ライブドアの行った数々のいかかがわしい
行為は、企業倫理には悖(もと)るものではあっても、違法とまで
は言えないとするのが、当時の大方の見方でした。
つまり、ライブドアという会社は、法にさえ触れなければ利益を
得るためには何でもやる会社であり、法の抜け穴を捜し出しては金
儲けのチャンスにするような会社である、更には、法に触れること
であってもバレなければいいと考えている会社であると考えられて
いたのです。法の立法趣旨などおかまいなしに、抜け道を見つけ出
しては次から次へと実行していくわけですから、まさに法を僣脱す
るものであり、脱法行為そのものです。ウラ社会の住人が人に隠れ
てひそかに行うような脱法行為を、あろうことか、上場会社の社長
が堂々と公言し、実行しているのです。まさに前代未聞のことと言っ
ていいでしょう。
フジテレビが440億円を出資することに合意し、一ト月ほどの
調査期間をとってデユーデリに着手した時には、すでにライブドア
という存在が普通の上場会社ではなく、何をしでかすか分らない極
めて危うい会社であることは、紛争の当事者であったフジテレビが
承知していただけでなく、衆知の事実であったのです。
次に、コーポレート・ガバナンス(企業統治)に関連して、詳し
い調査をするまでもなく判明していたことは、次の2つの事実です。
1.ライブドアは堀江貴文氏の事実上のオーナー会社であったこと。
2.事業資金の調達は、自己資金(増資)によって賄われており、外
部金融機関に頼る必要がなかったこと。
1.について。平成16年9月30日現在、堀江氏の持株比率は
36.4%ですが、他の株主の大半は15万人余りの個人株主に分
散されていますので、堀江氏の持株状況は群を抜いたものです。
筆頭株主である堀江氏を含めた上位10位までの大株主の持株比
率を見ても、第2位は1.8%の日本証券金融(株)となっていま
すが、これは信用取引にかかる一時的な所有と考えられますので考
慮外におきますと、第3位の杏林製薬(株)の0.6%をはじめ全
て1%を切っています。
つまり、平成16年9月30日時点では、堀江貴文氏の一存で会
社の全てのことが決定できる、事実上のオーナー会社であったとい
うことです。
(続きはWebサイトにて)
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